第103話
テレビで出されていく『問題』にさくらは夢中になって答えていく。
当たれば喜び、分からなかったり間違えれば悔しがる。
歌の問題では思わず答えを
『それくらいなら大丈夫ですよ』
ハンドくんの言葉に安心したさくらは、塞いでいた両手を下ろす。
そしてまた歌いだしたさくらのクチをハンドくんが塞いで『調子に乗りすぎです』と注意した。
以前ハンドくんが歌は『さくらの
その言葉通りにさくらはテレビを観ながら時々短い言葉に
気になったヒナリが「それも歌?」と尋ねたら「うん」と返事をしてから歌ってくれた。
確かにさっきさくらが歌ってた部分が途中で出てきた。
『歌を歌っている『悪い子』は何処のどなたでしょう?』
「ここの『さくら』ちゃん♪」
さくらはハンドくんの言葉にニッコリ笑顔で答える。
『・・・。では言う事のきけない『悪い子のさくらちゃん』はバツとして『おあずけ』にしましょうか』
そう言って皿に乗せた『なにか』をさくらに見せる。
『・・・。』ってホワイトボードに書かれると更に恐怖が増すことを知った。
しかし、さくらは『なにか』に目がくぎ付けになっていた。
「あー!さっきの『コンビニスイーツ』!」
『『悪い子』にはありません』
「『良い子』だからちょーだい!」
必死に手を伸ばすさくら。
ハンドくんはさくらの手が微妙に届かない位置に皿を置いている。
『今日はもう歌わないって約束は?』
「まもる!ちゃんと守るから〜」
ウ〜ッと必死に皿に手を伸ばすさくらの可愛さに、見守る4人からは笑みがこぼれる。
「セルぅ。
しかしハンドくんはひょいっと皿を動かして遠ざけてしまう。
「ウ〜ッ!ワンッ!」
セルヴァンの腕を借りるのを諦めたさくらが、座卓の
「ウ〜!」と手を伸ばし、届かなくて再び縁にしがみついて「アン!」と吠えてまたカリカリと手を伸ばす。
この世界にはさくらの世界にいた『犬』がいないためセルヴァンたちには分からなかったが、仕草が可愛くてさくらの様子に目尻を下げていた。
ハンドくんがケーキを一掬いするとさくらはクチを開いて待っている。
「おいしー」
『皆さんもどうぞ』と4人の前にもスイーツが出される。
ヒナリはさくらと同じミルクレープ。
ヨルクはベイクドチーズケーキ。
セルヴァンはチョコレートケーキ。
ドリトスはあんみつだった。
ドリトスは以前から色々とお菓子を出してもらっていたが甘さが控えめの和菓子を一番気に入っていた。
セルヴァンは逆に『甘いもの』なら飲食どちらも好みのようだ。
「ヨルク。ひと口ちょうだい」
そう言ってヒナリがヨルクのケーキ皿を奪う。
「自分のケーキ食えよー」と文句を言われるがヒナリはひと口掬うと「はい。さくら。アーン」とさくらの前に手を伸ばす。
それに気付いたさくらがクチを開いて待っていて、クチの中に入れてもらうと「おいしー」と笑顔を見せる。
「ヨルクのチーズケーキも美味しいね〜」と言われてヨルクも悪い気はしない。
それでも再度さくらにケーキを食べさせようとするヒナリからケーキ皿を奪い返した。
さくらは自分のケーキをハンドくんに食べさせてもらっていた。
セルヴァンのヒザの上にいるため、さくらが手を動かせばセルヴァンが自分のケーキを食べられないからだ。
それでもさくらはセルヴァンのヒザから下りようとしないし、セルヴァンも下ろす気はないようだった。
「さくら」と言われてセルヴァンを見上げるとケーキを差し出されてパクンとクチに入れる。
とたんに笑顔になって嬉しそうに身体を左右に揺らす。
「
セルヴァンたちは気付かなかったが『セルヴァンのひと口』と『さくらのひと口』は大きさが違ったのだ。
そのためクチの中がいっぱいで声を出せなかったさくらは全身で『喜びを表現していた』のだった。
しかしその様子が可愛くて、誰も『大きさ』に気付かなかった。
さくらも口いっぱいにケーキを貰えて純粋に喜んでいた。
そのため気付いていたのはハンドくんだけだった。
そのハンドくんもさくらが楽しそうだから黙っているつもりのようだ。
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