第88話
「ヒナリ。さくらの『おあそび』にイチイチ目くじらをたてるな」
「ですが・・・」
「さくらはただ『楽しんでおる』だけじゃ。礼儀作法なら『乙女たち』より出来ておる」
「ジタンが初めてさくらに会ったときに『礼儀正しい挨拶』を受けている。あの『堅苦しいジタン』がさくらを大切にするくらいだ。どれだけ『完璧』だったかヒナリなら分かるだろう?」
ジタンとは『次期国王』と『次期族長』という関係から『堅苦しい公式の場』で何度も会った事がある。
ジタンの『礼儀作法』は子供の頃から完璧で、周囲からの『評価』と『期待』は高かった。
そんなジタンが初めて会ったさくらに『好感を持った』のだ。
さくらがどれだけ『礼儀正しく好印象な挨拶』をしたのかよく分かった。
「なあ。ヒナリ。本当にさくらが『ダメな事』をしようとしたら、ハンドくんたちが全力で止めるだろ?」
さくらが無理に声を出そうとしたのに真っ先に気付いて口を塞ぎ、烈火の如く怒ったのはハンドくんたちだ。
逆に『さくらのため』なら、イヤがるさくらを押さえつけてクチを
「だからさ。ハンドくんたちが止めない限りは『さくらの自由』にさせても構わないんだよ」
『でもヨルクには
『さくらの
『
「何でオレは『怒っていい』んだよ」
「悪ふざけし過ぎるからだろ」
「『親』なら『
『ハリセンで
ハンドくんの『正直』な回答に落ち込み気味だったヒナリも笑顔を見せた。
「『呼吸』を思い出してごらん。さくらはストローで息を吐いて、息を吸うようにジュースを吸い込んでおったんじゃよ」
ドリトスに言われてヒナリはさくらの様子を思い出す。
チューとジュースを吸い、プクプク~と息を吐く。
そしてまたチューとジュースを吸う。
確かに『呼吸』と同じだ。
これなら無理せずに飲むことが出来る。
だから誰もさくらを注意しなかったのだ。
「ヨルクも知ってたなら教えてくれれば・・・」
ヒナリが恨めしそうにヨルクを睨む。
ヨルクもさくらのマネをしていて気付いたのだ。
直後に怒られてハリセンも食らった。
「え?さくら『が』マネをしたんじゃなくて、さくら『の』マネをしたの?じゃあなんで『ハリセン攻撃』されたの?」
『『バカにした
『さくらがマネをする』
事実を知って驚くヒナリ。
ちなみにセルヴァンは隣で『さくらのマネ』をしているヨルクを注意させるつもりだけだった。
さくらが深く息を吐いて目を覚ました。
直後に息を詰めてしまい咳を繰り返す。
セルヴァンが背中を
ハンドくんがピンク色の液体を入れたガラスの
4人は苦しそうに涙を浮かべて咳を繰り返すさくらを、ただ心配し見守る事しか出来なかった。
『さくらをベッドで
「さくらは?さくらは大丈夫なの?」
「ヒナリ。今は『神』に任せよう」
『ただの病気』なら神が治してくれる。
心配するヒナリをヨルクが落ち着かせている間に、セルヴァンは寝室へ向かいさくらをベッドに寝かせる。
まだ咳は出ているが、先ほどまでと違うのは薬が効いてきたからだろうか。
「少し離れるが大丈夫か?」
頭を撫でると少し笑顔になって頷く。
繰り返す咳が落ち着くまで背中を擦ってからセルヴァンは寝室を出た。
扉を閉めると寝室が金色に輝いて『神の結界』が張られた。
コンコンと繰り返される咳にアリスティアラが背中を擦る。
「『喘息』だな」
呼吸器系がけっこう弱ってるよね。
ちょっとしたことですぐに息が詰まるもん。
咳が落ち着いて仰向きになった私の胸の上に
左手を握ってくれているアリスティアラからも優しい『流れ』が身体の中に入ってくる。
呼吸が少しずつ楽になって咳も落ち着いてきた。
それと同時に『胸の痛み』も弱まってきた。
冷たい空気が身体の中を巡る。
創造神たちがいるのと反対側に目をやると、風の女神と水の女神が立っていた。
『気持ちいー』
そう口を動かすと心配そうだった表情が笑顔に変わる。
『ア・・・ア・・・』
呼吸が苦しくなり身体がガクガクと震え出す。
口を大きく開けて、少しでも多く空気を吸い込もうとする。
アリスティアラが強く手を握ってくれる。
反対の手を水の女神が握りしめて風の女神が手を添えてくれる。
創造神が『喘息』を治すだけでなく、弱りすぎた呼吸器系の細胞を『強化』してくれている。
それが分かっているから、ノドが痛いのも胸が苦しいのもガマン出来る。
今ガマンすれば、この後は呼吸がラクになるのだから。
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