第44話
「なあ。そういえば名前」
「ゴメンね。ヨルクが質問責めにしてたから言えなかったでしょ」
ヒナリに「オレのせいかよ」と言うが「そうよ」と即答されてヨルクは黙る。
自分でも質問責めにしたのは自覚してるようだ。
クスクス笑ってると「名前」ってヨルクから再度促された。
「私は『さくら』だよ。よろしくね」
ところで『ウワサの』って言ってたけど・・・ウワサってなあに?
「ああ。それはアレだ」
「厳しいことで有名な獣人族の族長様が『可愛がってる』ってウワサになってるのよ」
「オレたちは獣人族の『マヌイトア』に住んでるんだ。だからウワサを聞いて見に来たんだ」
『マヌイトア』って集落とかコロニーのことだっけ。
それにしてもセルヴァンが私を可愛がってるだけで獣人族ではウワサになるんだ。
「そっか・・・私、セルヴァンや獣人族の人たちに迷惑掛けてるのかな?」
「「全然!」」
ヨルクとヒナリが声をそろえて否定する。
・・・なんで?
「セルヴァンなんか『鬼』と呼ばれるくらい『情け容赦ない』族長なんだぜ。それを『目に入れても痛くないくらい可愛がっている』なんて『
「・・・わたし、『見世物』?」
「さくらじゃないわ。セルヴァン様よ」
・・・セルヴァンが『鬼』なんて、私にはイメージ出来ないよ。
「2人は何か『楽しそう』だね」
私が不思議そうに2人を見ると2人はお互いに顔を見合わせて笑った。
・・・私、おかしなこと言ったかな?
「今まではね、私たちって『乙女』から怖がられるから近付けなかったのよ」
「それをこうやって抱き上げて空がとべるなんて思いもしなかった」
「私たちって獣人族やドワーフ族以外とはあまり仲が良くないの」
だから嬉しくって、とヒナリが笑う。
召喚される乙女が西洋人だったら『天使』と間違えられて涙を流して喜ばれただろうね。
「『ヒナ』はオレたちが怖いか?」
『怖いか?』の質問に首を横に振ってから「ヒナ?」と聞き返す。
「さくらのことよ」
「オレたちは『守る相手』をヒナと呼ぶ」
ああ。『
「私は2人の『雛』?」
「イヤか」
「ううん。ありがとう」
お礼を言ったら2人は嬉しそうに笑ってくれた。
「あー。下にジタンがいる」
発着場に近くなると、出迎えに出てたジタンを見つけた。
「ジタンとは子供の頃からの付き合いなのよ」
「一緒に空をとんでたんだぜ」
ジタンも私たちに気付いて驚いていたが、私が手を振ると笑顔で手を振り返してくれた。
「ほら。近くでみるとスゴいだろ」
「うん。ホントにスゴく大きいね~。2人共、連れてきてくれてありがとう!」
2人にそうお礼を言っていたら「危ない!」って声と共にヒナリが飛びついてきた。
その場から大きく離れた私たちだったけど、さっきまでいた場所を光が通り過ぎた。
「魔法か!」
ヨルクが声をあげたのと、下から「さくら様!!!」とジタンの叫び声が聞こえた。
飛空船から『火の玉』がスゴいスピードでコチラヘ飛んでくるのを目にして「いやぁぁぁ!」と叫んだのと、ヨルクが私を庇うように火の玉に背を向けて、ヒナリが前から私とヨルクを抱きしめたのが同時だった。
「さくら様!」
飛空船から放たれた光だったが、ヒナリのおかげでヨルクとさくら様にケガはなかった。
「ジタン様。失礼ですが翼族が抱えている女性は?」
共にいる者から声をかけられて、一瞬彼に目を向ける。
「『
「なんと!」
「コーティリーン国は何を考えている!」
すぐにヨルクたちに降りるよう声を掛けようとして上を見たジタンは、飛空船から火球が発射されるのをみてしまった。
「さくら様!!!」
「いやぁぁぁ!」
さくら様の悲鳴が響く。
そんなさくら様を守るようにヨルクたちが抱きしめあう。
あれは翼族が生命をかけて『雛』を守る姿。
火球が3人に接近し飲み込もうとした。
しかし火球は3人に届くことなく、まるで弾かれるように飛空船に戻っていく。
それも火球は何倍、いや何十倍にも大きく膨れあがって。
地上からでは白い光に包まれて身動きひとつしない3人を助けることも出来ず、ただ見てるだけしか出来なかった。
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