第40話




そして私はいま、セルヴァンに抱かれた状態で自室へ向かってる。

自分の周囲1cm以上の空間の浄化をしていないから『おり』が溜まりにくいのと、神々が部屋を清浄化してくれるからマンションに戻らないでいられたけど。

さすがにこちらに来てから『色々』と起き続けて熱が出てしまったようだ。


真っ先に気付いたのは『安全ベルト』で私のお腹に腕を回していたセルヴァン。

密偵たちが連行されて4人だけになったら、すぐに指摘されたよ。

『ひざまくら』の時から「いつもより少し熱がある」って感じてたらしい。

・・・自覚なかったんだけどなー。


そして指摘されて熱を自覚してしまい、身体がダルくなってしまった。

あー。体温計、ウチの部屋だわー。って思ったら『ハンドくんが持ってきてます』だって。

さすがハンドくんだー。






「さくら?」


セルヴァンはさくらの部屋に向かってた足を止め、腕の中の少女を見る。

熱が上がって息が苦しいのか、短い呼吸を繰り返す。

「だいじょーぶ」と返してきた声も小さく弱々しい。


「セルヴァン。まずはさくらを部屋に。あとは神々に任せるしかない」


ドリトスに促されて止めていた足を動かす。

少しでも早く、揺らさないように注意して。





部屋に着いた時には、自分の部屋に置いていた解熱剤と水が用意されていた。

環境にあわせるために細胞の変化はしたけど、基本の細胞は変わってないため、これらの薬は今まで通りに効くらしい。

セルヴァンがベッドに寝かしてくれた後、『清浄クリーン』魔法をかけてくれた。

おかげで汗が消えて全身がサッパリした~。

ありがとセルヴァン!

ハンドくんに体温計を脇の下に挟まれたら『40度を越えてまっせ~』。



・・・見たら余計に熱が高くなった気がする。




セルヴァンに身体を支えられて薬を飲んでからは何処どこぞかの国の政治家みたいに「全く記憶に御座いません」状態。

意識朦朧の中でも、朧気に体内の浄化をしてもらってた事と、セルヴァンとドリトスが見舞いに来てた事は感じてる。

意識を持って目を覚ました時は、部屋の中には『風の女神』と『水の女神』がいた。

私に涼しい風を送りつつ湿度の調整をして、私の身体が脱水症状にならないよう注意してくれていたらしい。


「具合はいかがですか?」


「ダルおも~」


そう話しながら、ハンドくんたちに体温計を挟まれたり、汗を拭かれたり、一人では動けない位に体力の落ちた身体を世話してもらってた。

体温は『まだ39度に近いぞ。こんちくしょう』だった。

ハンドくんが『冷えたレモン水』を持ってきてくれた。

それなのに飲ませてくれない。

・・・どんな放置プレイですか?

わたしの首は待ってても伸びませんよー。


そうグズってたら、部屋の扉が開いてセルヴァンが姿を見せた。

私が目を開けているのを見てそのままフリーズ。


「セ、ル~?」


微妙にかすれた声でセルヴァンの名を呼ぶ。

「さくら!」と私の名を呼んで駆け寄ってきたセルヴァンは「もう大丈夫か?」「苦しくないか?」と聞きながら私の頭を何度も撫でる。

そうしたらハンドくんがやっとレモン水を持ってきてくれた。

のどカラカラだよー。


私の目線に気付いたセルヴァンが身体を起こしてくれて背もたれになってくれた。

手をなんとか上げる事は出来たけど、ダルくて重くてグラスは持てない。

ハンドくんがちゃんと加減をわかって飲ませてくれるから両手は下ろした。

『吸うチカラ』もないからストローも使えない・・・

ひと口飲むと冷たい水分が身体を巡る気がして、レモン水は結局『おかわり』もして2杯飲んだ。

セルヴァンが静かなのがちょっと心配だったけど、私が飲み終わると寝かせてくれた。


「おお。目を覚ましたか」と声がしたけど、セルヴァンで姿が見えない。


「ドリぃ・・・?」


近寄ってきたドリトスの姿がセルヴァンの背後から見えるとホッと安心した。


「具合はどうじゃ?」


「もう大丈夫」


「さくらの『大丈夫』は信用出来ない」


「えー」


セルヴァンの言葉にドリトスも頷く。

小さい頃から微熱は『いつも』だし、高熱を出して寝込むことも割と多くあったから、今回だって私には『大したことではない』し『よくあること』なんだけど・・・

そう言ったら2人が心配そうに見てきた。


・・・熱ぐらい、本当に『大したことではない』と思うんだけどなー?

大人しく寝てれば、そのうち下がるもん。



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