第32話



神々からは「どこの国で何が起きた」とか「どの国に連絡がいってどんな対応がされた」とか話してくれたり、私のタブレットに王宮内の動きやドリトスたちが各国へ連絡を取っている様子を映してくれてみることが出来た。


これはテレビでみることも出来そうだね。


「この世界に持ってくることは出来ないけどな」


延長コードを、こっちまで繋いで伸ばして引っ張ってくるのは?

そう聞いたらピタッと動きが止まったけど「いやいや。それはダメだ」と却下された。

仕方がないから、マンションの部屋にいながらテレビでみられないか試してみよう。

別に覗きのためではない。

部屋の内外を確認する『防犯カメラ』みたいなものだ。




食欲が満たされたら、次は眠くなるもの。


「ほら。ここで寝ると風邪を引くでしょ」


「やー。まだここにいる~」


「もう彼らは大丈夫だから」


私は眠い目をこすりながら、ドリトスたちの様子を見ている。

ドリトスとセルヴァンは、ジタンと手分けをして各所へ指示を出していた。

王宮内でも治療院が正常に機能しているのか、回復した人たちが増えていた。


「少し寝てきなさい。何かあったら起こしてあげるから」


創造神に促されたのと、ハンドくんに自室で愛用している動物の抱き枕を持たされて、そのままその場で横になる。

畳の藺草いぐさの香りがする。

この世界にも藺草はあるのかなぁ。


「だからここで寝るんじゃない」とか「風邪を引くから」とか「シー」という会話を聞いた気がするが、すぐに身体に暖かいものを掛けられてヌクヌクしつつ、誰かに頭を撫でられていたら微睡まどろみの誘惑に負けた。



目を覚ましたのはベッドの中だった。

ベッドの横にはセルヴァンがイスに座って私を心配そうに見てた。


「ん・・・セルヴァン?」


みんなはどうなったの?

国の人たちは大丈夫だった?

そう言いながら身体を起こすと、苦しくない強さで抱きしめられた。

え?誰か何かあった?と聞いたら「・・・何でもない」と言われた。


ねぇ。何かあったの?とアリスティアラたちに聞いたら『床で寝てたから』と返事がきた。

どうやら畳の上で寝ていた私を『倒れている』と勘違いしたセルヴァンが慌てたらしい。


この世界には『和室』も『畳』もないんだっけ?

『乙女の館』は純日本風の建物だって話だから和室だろうし、和室なら畳もあるよね?


先日倒れたばかりだから、あの時のことを思い出したのかも知れない。


「セルヴァン。心配してくれたんだね」


ありがとう。大丈夫。眠くなってちょっと横になっただけだよ、と話すと「横に?」と聞き返された。

『私の国では、畳の上に直接座ったり寝転んだりする』と知ったセルヴァンは目を丸くした。

座布団を二つ折りにして枕にして寝るなんて、いつもやってたから気にしなかった。



メニュー内の時計を確認すると現在時刻は14時。

あれ?私が寝たのって何時?


『12時過ぎよ』


じゃあ寝てたのは2時間弱?

それにしてはセルヴァンの様子が・・・

もしかして、1日2日過ぎてるとか言わない?


『言わない』


『本当に寝てたのは2時間弱よ』



じゃあセルヴァンは?



『本当に心配だったのよ』



畳の上でゴロゴロしながら、藺草の香りを嗅ぐと癒されるから好きなんだけどな~。



『別にダメじゃないでしょ?』


『和室の過ごし方を教えれば良いのよ』



それもそうだよね。

って・・・あれ?

私の靴は?


ベッドから出ようとしたら私の靴がない。



『隣だわ』


『掘りごたつに座る時に脱いでいたわね』



うん。脱いだね。

と言うことで・・・


「セ~ル~。抱っこ」


セルヴァンに両腕を伸ばして甘えると、一瞬目を丸くしたけど嬉しそうに抱き上げてくれた。


「隣の部屋にね、靴が置きっぱなしなの」


だから連れてって、と言ったらシッポが嬉しそうに左右に振られた。




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