第30話
強い光で真っ白だった部屋の中が、光が弱ってきたのか少しずつ物と人の輪郭が見えだして、色も取り戻し始めた。
『感知』魔法で周囲の状況を確認する。
ジタンは耳を塞いで目を強く閉ざしてしゃがみ込んでいる。
ドリトスは目を閉じて俯いているが、変わらず立っている。
『ドワーフはすべてにおいて強靭な身体を持っている』
だから驚きはしたが普通に立っていられたんだ。
セルヴァンは私を抱きしめて目を強く瞑っている。
彼は犬種の獣人だ。
と言うことは聴覚と嗅覚が鋭いと言うことだろうか。
それなのに、耳より私を守ることを優先してくれたのだ。
『『忠犬の鑑』だな』
『犬種だから』
アレ?『種』によって色々違うの?
『そうですね。あなたの世界の動物と近いかもしれませんね』
今までのセルヴァンの行動を思い浮かべて、思わず納得した。
確かに『犬』に似てるわ。
ドリトス・セルヴァン・ジタンに『
突然の状態回復に3人は目を瞬かせて、息を合わせたように私を見た。
「さ・す・が創造神様ねぇ。私はすぐに回復してくれたけど・・・怒らせたら怖いわ~」
『全然怖がってるようには見えないけど』というツッコミを貰ったけど、それは創造神がブチ切れる直前に私の目と耳を塞いで被害を軽減してくれた神様たちと、咄嗟に身体を張って守ってくれた『忠犬セルヴァン』のおかげです。
それでも目はチカチカ。
耳は高音でキーンと鳴って、頭痛もあって辛かったけど。
え?1人忘れてないかって?
別に忘れていないよ。
アレはアストラムに向けた『天罰』だから。
天罰は神様が許さないとね~。
下手に手を出して怒られたくないもん。
3人は『巻き込まれただけ』だから回復させたのよ。
国内外の民?
アリステイド大陸全体が同じ状態になったみたいだけど、それを回復させなきゃいけないのは私ではない。
原因はアストラムにあるんだから、アストラム自身か『エルフ族』がすべき事。
私の言葉はいまだ『天罰の恩恵』で耳や頭痛が回復していないアストラムには聞こえていない。
虚ろに開いた目も、当分は見えないだろう。
「さくら様。退室の許可を頂けますでしょうか」
「どうぞ。ご随意に」と答えるとジタンはお礼を口にしてすぐに退室した。
よく動けるなー。
周りはまだ光が強くて位置の把握も難しいのに。
「ジタンの奴、何を慌てているんだ?」
「そりゃあ国民たちの回復でしょ?」
私が回復させたのはここの3人だけだもん。
まず向かうのは治療院にいる治療師たちの所でしょ。
ところで、この大陸での他国との連絡方法は?
「『乙女の魔石』を媒介にした水晶で、遠隔地とは連絡を取り合えるんじゃよ」
ただし1回使うと、魔石はチカラをなくしてしまうらしい。
普通に魔物を倒して手に入る魔石を使うと、最低でも500個は必要となる上、3分も保たないらしい。
・・・ウルトラマンは怪獣と決着つかないし、カップ麺も作れませんが?
でもそれを使わないと大陸中に現状を伝えられないよね?
馬車のお
ニワトリさんがショックでタマゴを生まなくなるとか。
野生の動物さんたちがパニック起こして村に突撃するとか・・・
「目が見えない。耳も聞こえない。そんな状態で動物さんたちが暴走しても逃げられないですよね?」
そして『どうしてこうなった』のか知らなければ、どうなりますか?
創造神の怒りを受けたのは分かっても『理由』が分からなければ、人はパニックを起こしますよ?
1人が2人に。
村単位のパニックが町単位に。
そんなときに「この世の終わりだ」なんて誰かが言ったらどうなります?
それは『暴動』という波を引き起こしますよ?
「すぐに対策を取らなくてもいいのですか?」
私の話でドリトスとセルヴァンは初めて危機感を持ったようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。