第24話
《・・・助ケテ 》
え?誰?
不意に聞こえた小さくかすかな声に周りを見回す。
でもここには
「どうした?」
私の様子にセルヴァンが心配そうに声をかけてきた。
ドリトスも硬い表情で周りを見回している。
《・・・助ケテ・・・・・・ボクタチヲ・・・助ケテ》
また聞こえた。
『どうしました?』
アリスティアラが私を心配している声がする。
今は、またここに飛び出さないように、他の神々と共にいる。
さっきの声よりさらに小さくかすかな声がいくつも聞こえる。
そのどれもが助けを求めてる・・・
「声が・・・助けを求める声が・・・」
どこから?
外?外から?
ねぇ。君たちはダレ?
ドコにいるの?
私でも助けられる?
ポンッと現れたハンドくんたちが10対。
白手袋のハンドくんたちに連れられて、大きな窓の前へ進む。
他のハンドくんたちが窓を全開にする。
柔らかな風が私の身体を包む。
『大丈夫?』
風を司る女神が風を使って私を抱きしめる。
それはなんとなく気配で分かった。
・・・でも。
ずっと感じてる。かすかな気配が近付いてくる空を見上げる。
ふわっと白く丸い『わたぼうし』が目の前に落ちてきた。
「魔物!」
「離れて!」
後ろからセルヴァンの緊張した声が聞こえた。
でも私の意識は目の前の『わたぼうし』に集中している。
両手を差し出すと『わたぼうし』は手のひらにフワリと着地した。
「もしかして・・・『ケセラン・パサラン』?」
私の世界では『
この世界から私の世界に迷い込んだのが『ケセラン・パサラン』じゃないのだろうか?
「ねえ。さっきの声はキミたち?どうしたの?」
《ボクタチヲ、助ケテ》
《モウ、疲レタンダ》
「どうしたらいいの?」
《ボクタチヲ『魔石』ニ戻シテ》
「・・・魔石に戻したらどうなるの?」
もしかして死んじゃうの?
『いや。この魔物たちは元々『鉱石』だ。それに瘴気が蓄積したものが『魔石』。魔石がさらに瘴気を溜め込んで『魔物』となる』
『魔石が力を無くして鉱石に戻っても、またゆっくりと瘴気を溜め込んで魔石となり魔物になっていく』
《ボクタチハ、大丈夫》
《コノ世界ヲ、アチコチ見テ回ッタヨ》
「もう・・・いいの?」
《ウン》
《ボクタチヲ、助ケテクレル?》
『彼らはこのまま疲れを蓄積したら、自我を無くして人を襲う『魔物』となってしまいます』
《ボクタチハ、コノ世界ノ『綺麗ナモノ』ヲ一杯見タンダ》
《コノ綺麗ナ世界ヲ、ボクタチノ手デ壊シタクナイ》
彼らの言葉とともに、私の頭の中には『きれいな夕日』や『雨上がりの虹』『色とりどりの花が咲いた花畑』『森の中の木洩れ日』など彼らが見たであろう綺麗な風景が映し出された。
「本当に綺麗だね」
・・・・・・どうしたらこの子たちの『願い』を叶えてあげられる?
『手に光を意識して。それが『浄化』だよ』
窓の外では沢山の気配を感じる。
床にアグラをかいて手のひらに乗っているケセラン・パサランに「いいの?」と確認する。
《ウン。オ願イ》
手のひらに意識を向けると気が流れて光が集中する。
それと同時にケセラン・パサランが少しずつ光の粒子となって『青紫色』の魔石が手のひらに残される。
それもすぐにアイテムボックスに自動で収納される。
メニューには『魔石を貴重品ボックスに収納しました』と表示された。
次の子が手のひらにストンと入ってきた。
「楽しかった?」と聞いたら頷くように全身を上下に揺らし《ミンナト一緒ダッタカラ》と楽しそうに返事をした。
手のひらに光を集めると《アリガトウ。マタ会オウネ》とお礼を言って魔石に戻っていった。
どのくらい続けていただろう。
窓の外は夕日も沈み星空が見えている。
私の背中にはいつからかセルヴァンが背もたれのように私の身体を支えてくれている。
ドリトスも横に立って私を見守っている。
《今マデアリガトウ。ボクガ最後ダヨ》
手のひらに乗ったケセラン・パサランが私にお礼を言って自分が最後だと教えてくれた。
《ボクタチヲ使ッテネ。ソウシタラ、マタ魔石ニナッテ、魔物ニ生マレタラ、ミンナデ『マダ見テイナイ綺麗ナモノ』ヲ一杯見ルンダ》
「うん。分かった。その時は、また綺麗な景色を私にも見せてくれる?」
《イイヨ。見セテアゲル》
「ありがとう」
最後の子が魔石に戻ったところで私は意識を手放した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。