第16話




「開けるぞ」と中の連中に言って開けられた扉。

「待たせて済まんかったな」と私に言ったけど、まだ床で寝てる兵士を見てドリトスは苦笑した。

兵士の状態は『気絶』だから私は気にしていない。

詳細に『鼻骨骨折』とか『顔面強打』などあるけどHPは半分残ってるし、自業自得なんだから同情する気もない。


ドリトスも同様なようで「中に入ってもらいたいんじゃが」と言われた。

その言葉を聞いたハンドくんたちが、邪魔な兵士を掴んでポイッと退けてくれた。

まるでホコリをはたくように数度手を叩いたハンドくんたちが私の所へ戻ってきてハイタッチ。

「賢い者たちじゃな」とドリトスに言われてグッドサインを見せたハンドくんたちは、また私にバイバイして魔法世界へ戻っていった。




扉を潜ると、左側にセルヴァンが立っていた。

2メートルはあるのかな?

やっぱり高いなー。と目を向けたら、胸のモフモフが目に入った。

毛皮にジャケットを直接着てるから、モフモフの毛が気持ちよさそうだ。


「わー!モフモフ~!」と言いながら飛びついたら、セルヴァンの身体が硬直したのを感じた。

私はちょうど顔の位置にモフモフの毛皮を感じて嬉しいのに。

「モフモフ~。気持ちいい~」とはしゃいでいたら、この場に出て来られない女神様から『モフモフは後からにして下さい』とチャットがきた。


えー?もっとモフりたい!

『あとでお願いすれば良いでしょう。『獣化じゅうか』してもらうことも可能ですよ』と言われて、渋々セルヴァンを解放する。



「・・・オレが怖くないのか?」


セルヴァンに聞かれて「何で?」と首を傾げる。


『獣人族は今まで乙女たちから怖がられていましたから』


ああ。そう言えばさっきもそんな事言ってたっけ。


「私に何かした?」と聞いたら大慌てで首を横に振る。

「私に何かしようと思ってる?」と聞いたらさらに横に首を振った。


「じゃあ。何で私に危害を加えていない貴方を私が怖がるの?」

「まさか見た目?そんなのナンセンス!バカバカしい!」

「見た目が良くても腹黒いヤツは沢山いる。本当に心が優しいのは『見た目だけで中身空っぽ』のヤツじゃない。差別を受けて苦しんだ事がある人だよ」


セルヴァンは私の言葉に目を丸くしていた。

そんなに驚かれることか?と思ったら満面の笑みを見せて私を抱き上げた。

途端にまた私のモフモフ熱が再燃。

「わーい。モフモフ~」と首に手を回して大喜びしていたら、セルヴァンの尻尾が嬉しそうに左右へ振られているのが見えた。



ゴホンと態とらしい咳が聞こえてそちらに目を向けると、ドリトスが「そろそろ良いかの?」と聞いてきた。

セルヴァンの首に手を回したまま「どうぞ?」と言ったら手招きされた。


セルヴァンが私を抱き抱えたままテーブルに向かい、そのまま自分のイスに腰掛けた。

私はセルヴァンに『膝だっこ』状態。

だって私のイスはないしー。


モフモフ~。モフモフ~。


セルヴァンに頭をナデナデされて、さらにモフモフ世界にドップリ浸かってた。



「我々は話をしたいんだが」


うわー。エラソーに何様だよ。


『この国の王様ですよ』


私を迎える気のないクズ王な。


『怒ってますか?』


うん。ハンドくんたちに、そこの窓から『ポイ』させようか考えるくらいに。


『それは王の威厳が無くなるから止めてね』


モフモフに免じて許してあげる。


『・・・それはありがとう』



そんな会話をアリスティアラとやってるとは思いもしない『クズ王』ことレイソルとやらが「神官は『女神様に愛された』とか言ってたが、あの世界には礼儀とかマナーとかないのか」と小声で暴言を吐いた。

ああ。まだ『盗み聞き』スキルを解除してなかったから丸聞こえなんだよ。


・・・ムカついた。




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