第10話



では『鑑定拒否』の魔法はあるのか?

もしあるならそれを使われたらどう表示されるのか?

その質問の答えは「鑑定拒否に似た魔法はある」「それを使った人は『不明』表示になる」そうだ。

しかし完全な鑑定拒否の魔法を使える人はおらず、魔法かスキルの非表示を使える人が『ほんの一握り』しかいないらしい。

でも鑑定スキルは『上級魔法』で取得可能なため、『鑑定士』以外に取得してる人は少ないそうだ。



「私のレベルとかバレたらヤバくない?」


そう聞いたら、私には『公開ステータス』というのがあり、レベルや所有魔法などはそこで選択出来るらしい。

そういえば、私の名前は『空欄』だったな。

名前・・・日本で使っていた名前をこの世界では使いたくない。

あの名前は私と『元の世界』を繋ぐ唯一のもの。


「ねぇ。名前なんだけど・・・『この世界用の名前』をつけていい?」


そう聞いたら黙って頷かれた。

多分、この女神様は『私の気持ち』に気付いているんだろう。

元の世界の、日本を思い出せるもので名前にしてもおかしくないもの。


「さくら」


私がこのアリステイドで使う名前は『さくら』。

この世界に『私の家族』はいないから『ファミリーネーム』は要らない。


小さめのステータス画面が表示されて、名前には『さくら』と表示されていた。レベルは1。

これが『公開ステータス』なんだろう。


そして大画面のステータスには『私の本名』と『生年月日』が表示されていたが、横に『非公開』となっていた。

うん。これは『この世界に必要ない』よね。

だって『私の記録』だから。

元の世界に生まれて生きてきた『紛れのないあかし』。

けっして忘れたくない『思い出』だから。

もちろん忘れる気はない。

名前は思い出の詰まった『大切なたからもの』なんだから。

そして、人を操る時は『本名』が必要だと聞いたことがある。

だったら、この名前を隠すことで『操られる危険性』が回避出来るといいな。



ついでだから、公開ステータスの表示変更をしてみる。

アリスティアラの話では、普通に生活してる人たちの平均レベルは7前後だそうだ。

生活用の魔法を使ったり、勉強をしたり、薪割りなど仕事や手伝いをする事でスキルを覚えたりレベルが上がるらしい。

小学生レベルの四則計算など算術の知識は中位スキルらしい。

でも商人たちには必須スキルだそうだ。

確かに『計算出来ない商人』って笑えウケる。


じゃあ私は『一般人より高めのレベル』にしましょうか。

商人のレベルが13辺りだそうなので、私はレベルを10に設定。

『ほどほどに計算が出来る一般人』って位置付け。

メニューに『電卓』もあるし、面倒な計算式なら『検索バー』に打ち込めば良いみたい。

さっき『りんご5個で380円を6袋とミカン1箱880円を1箱買ったら全部でいくら?』と検索バーに聞いたら、別枠で『3,160円』と表示された。

『じゃありんごは何個買った?』と聞くと『30個』と表示。

これで先の質問を継続で繋いで聞けることが分かった。


『検索バーに聞く』というのは、『検索バー』と思ったら枠にカーソルが点滅。

まるでパソコンみたい。

その状態で質問を口に出さずに聞いただけ。

思念で動くからなのか、誤字脱字もなく打ち込めるようだ。

これならメモ帳やカレンダーでも、バンバン予定を打ち込めそうだ。


ちなみにこの世界は『1分60秒。1時間60分。1日24時間。ひと月30日。1年14ヶ月』で、メニュー画面のカレンダーや時計もこの世界仕様になっている。

私としては『1日に変更なし』って事が良かった。

毎日は日々を過ごしていけば良いが、1日の時間が長かったり短かったりっていうのは慣れるしかないからね。


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