第147話 軍神マルス

雨の空を飛ぶ、怪鳥ジャック。


巨大な怪鳥に変身することで傷口が広がり、大量の血が流れ出ているが、すべて激しい雨に流された。


しかし怪鳥となったジャックの目と嗅覚は人間の時より何倍も鋭くなる。


「リーフ・・・!」持てる力の全てを振り絞ってリーフを探し続けた。




クロードによるリーフへの責めは、長い間続いている。

体中這いまわる指と舌。

両手を縛られ自由を失っているリーフは、苦痛とも快楽とも分からない行為にただ身を任せるしかなかった。



「も~、早くやっちゃってよ~」

その様子をベッドのそばのイスに座ってずっと見ていたアベルが言った。


「クロード、わかってんの?ちゃんと最後までしないと、リーフがどんなに感じても処女のままなんですけど。

それとも、なにか時間稼ぎしてない?」


クロードは動きを止めてリーフを見た。

白い肌は全身ピンクに染まって汗ばんでいる。泣きそうな瞳、震える唇。


「おねがい、クロード先生・・・。やめてください・・・。」

本当はリーフの悲しむ顔など見たくなかった。しかし主の命令は絶対。クロード(サスケ)には、主アベル(ロック)に逆らうことなどできない。


「・・・・力を抜いて・・・。」

クロードがリーフの上に重なる。

「いやっ・・・やだーっ!」


リーフの血が一筋流れた時、胸のペンダントが光り、クロードとアベルは部屋の隅まで吹き飛んだ。


金色の光のリボンのようなものがリーフを包む。


その中に、リーフとは違う人影が現れた。


「やった!ついに来た!!」

アベルは起き上がりながら瞳を輝かす。

「これが見たかったんだ・・・!」

「な・・・何?」涙でぼやけるリーフの視界に、何者かの影が映る。



その人影は次第に形をはっきりとさせ、姿を現した。


「私はマルス。ペンダントを持つ者を守るために来た。」


2メートルはありそうな大きな体。金色に輝く鎧を身にまとい、獅子のような金髪をなびかせている。

燃えるような紅い瞳がリーフを見据え、次にアベルとクロードに視線を移した。


「軍神マルスか!!すごーい!!」はしゃぐアベル。


「見て見て、これがツバサの国の秘宝、守護者のペンダントの力だよ!文献では知っていたけど、実際に見ることができるなんて感激だよ・・・!

このペンダントのおかげでツバサの国はあそこまでの大国になれたと言ってもいいんだよ!

地上最強の鎧にして最強の武器になるという、無敵のペンダント!

でもなぜかここ200年、守護者を呼び出せた人間はいなかったらしいけど。

ボク、リーフならできそうな気がしたんだよなぁ。

ねぇ、やっぱり君は凄いよリーフ!」


「アベル様・・・!」

クロードがアベルの前に立ち、守るように素早く剣を構える。

軍神マルスが巨大な剣を振り下ろした。

宿の床が一太刀で大きくひび割れる。


「おおっと、やばいね。じゃあ、いいもん見せてもらったし、僕たちはそろそろ行こうか、クロード。

じゃあね、リーフ、愛してるよ。またすぐに会おうね」


アベルはそう言うと、クロードとともに窓の外に飛び降りた。


「な・・・なにっ?」あまりの出来事に茫然とするリーフ。

軍神マルスはアベルたちを追いかけるでもなく、リーフに向かい合った。


「私を呼び出した者。新たな主」


「あの・・・あなたは・・・」


「私は星のペンダントを持つ者の守護者、マルス。これより先、お前が必要とすれば守ってやろう。」


マルスは、リーフの縄をほどくと、霧のように消えた。


「なんだったの・・・?」リーフは胸のペンダントを見た。肌に触れる部分が少し熱い。


「どうしてボクはこんなものを持っているんだろう・・・?」

ゆっくりと解放された体を起こす。クロードが付けた傷がズキッと痛んだ。

さっきの出来事が蘇る。


「どうしよう・・・ボク・・・」



「リーフ!」


さっきアベルとクロードが飛び降りた窓から、怪鳥ジャックがいきなり入ってきた。

上空からリーフのペンダントが放ったただならぬ気を感じ取ったのだ。

「良かったリーフ・・・!やっと見つけた・・・!」

ジャックはすぐに人間に戻った。全身びしょ濡れで、体中から血が流れている。


「ジャックさん・・・!来ないでください・・・!ボクは・・・ボク、あの・・・」


ジャックは、ほとんど全裸で、頬に涙の跡があるリーフを見てすべてを察した。手首を縛られた後が赤く擦れていて痛々しい。

「ここは・・医師クロードがいた部屋だ・・・。クロードが・・・お前を無理矢理・・・?」

リーフは、ジャックに悟られたことに気付いて死ぬほど恥ずかしくなった。

何も言えずボロボロと涙がこぼれる。


「すまない、リーフ・・・!オレのせいだ、オレが悪かったんだ・・・。エレーヌとあんなことをして、お前を傷つけた・・・。」


ジャックは逃げようとするリーフを抱きしめた。

「離して、ジャックさん・・・!ボクはもう、ジャックさんの妻の資格なんてないんだよ・・・。ごめんなさい、ごめんなさい・・・。」


「あやまるな、お前は悪いことなんて、何もない。オレが愛しているのはお前だけだ。リーフ、おまえに何があってもそれは変わることはない。」


リーフは大きなジャックの体に抱きしめられて大声をあげて泣いた。


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