第130話 旅の仲間

部屋に入って二人きりになった途端、アーサーはリーフに襲い掛かってきた。


ベッドに腰かけたリーフを押し倒し、逃げようとしたところを後ろから捕まえて胸を揉みまくる。


「もおっ!いつもいつもセクハラは止めてくださいっ!」

「赤のドラゴンの欠片を持つ者の特権だよ・・・。どうせしなくちゃいけないんだし、そろそろいいだろ。さっきのキスをせがむ顔、可愛かったぜ」


もう一度キスしようとしたところを、リーフに思いっきり拒否される。


「そーいえばっ!!アーサーさんに大事な大事なお話があるんです!!ボクは、赤のドラゴンの欠片を集める人ではなかったんですっ!」


「え?」


さすがにアーサーの手が止まった。





リーフはアーサーに、青のドラゴンの巫女アリスのことを話した。もう明け方近く、リーフは眠くて仕方なかったのだが・・・。


「じゃあ、その美少女が、ホンモノってことなのか?」

「うん、そうだって。ドラゴンの羅針盤っていうのを持っていて・・・ふわぁぁぁ~~~よかったねアーサーさん・・・」

大あくびをするリーフ。


「だからですね、もうボクなんかとする必要はなくなったんですよ・・・・。」

この辺りでリーフは眠りこけてしまった。

「男に組み敷かれてる状況で寝るとはいい度胸だなぁ」あきれるアーサー。

「・・・ったく、なにがアリスだよ。男だって相手がだれでもいいってわけじゃないんだよ、リーフ。」


すやすや眠る黒髪の小さな女の子。

この小さな女の子のことが頭から離れなくなったのはいつからだろう。


さらさらと額にこぼれる黒髪をそっとなでる。

アーサーは思わず微笑んだ。


「ということは、お前は、俺だけのものになるんだな・・・?ほかの男に抱かせなくていいんだな?」

ピンク色に染まったリーフの頬にそっとキスをした。




翌朝。起きてすぐリーフは馬小屋に走った。

すぐにクロちゃんを見つけて抱きしめる。

「クロちゃん!よかった~、無事だったんだね!!会いたかったよ~!」

「リーフ!リーフ!ボクも会いたかったよう!」


二人(?)は涙ぐみながら抱き合った。


「ふふふ、ほら、これ。」リーフはニンジン入りのパウンドケーキをクロちゃんに差し出す。

朝起きた時に、あのお菓子の壺をアーサーから渡されて、さっそくお菓子を焼いてみたのだ。


「やったあ~~~!リーフのおかしだぁ!」クロちゃんは美味しい美味しいと言ってあっという間に平らげた。


「ちょっとお!このケーキ焼いたのアンタだってほんとお?」

馬小屋にロザソッソが駆け込んできた。

「そうだよ。クロちゃんに焼いたおすそわけを置いといたんだけど・・・。」

「アンタ、天才!ただのチビ巨乳女だと思っていたけど、凄い才能じゃない~!見直したわ!

アタシこういうスイーツを長年探していたのよねぇ。よし、決めた、どうせ暇だししばらくアンタについていってあげるわ!」

「ええっ??」



というわけで(どういうわけだか)、3人と1頭はツバサの国のお城へ行くことになった。


「ま~この仔馬、可愛いわねぇ」

オスだと分かったせいか、ロザロッソはクロちゃんをやたら触ろうとしていた。

「ちょっと!ボクに気安く触んないでよ!ボクに触れていいのはリーフだけなんだから!」

クロちゃんはロザロッソがもの凄く苦手な様子。

「なあ、リーフ、剣を教えてやるから今夜こそ・・・」

アーサーは勝手に発情している。


ちょっとしたカオスである。リーフは(一人の方が気楽だった・・・)と思いつつ、なるべくみんなが平和になるように気を使いながら歩いていた。


金髪と赤毛のイケメンを連れているせいか、道行く旅人がリーフたちを振り向いて通る。

お城に近くになった街道には人通りも増え、家や店が目立つようになってきた。


「ハエのお化けが出ている割には、なんだか平和ねぇ。」とロザロッソ。


3人は、とりあえず情報収集のために酒場へ入った。

酒場の中は普段通りであろう、なかなか繁盛している。昼間っからお酒を飲む男たちであふれかえっていた。

4人掛けの木のテーブルに座ると、色っぽいおねぇさんが注文を取りに来た。

「あら、素敵なお兄さんと可愛い坊やねぇ。・・・3人まとめて、今晩どう?あなたたちなら安くしちゃうわよ・・・。」

ドキーッっとするリーフ。

(今晩って・・・3人まとめてって・・・じゃあ、4人でってこと??)

チェリー(中身)なリーフには刺激が強すぎた・・・。


ロザロッソは無言で拒否したが、女慣れしているアーサーは笑顔で軽くかわした。

「美味しい話だけどね、俺たち急いでるんで泊まれないんだよ。そういえばお嬢さん、お城のハエの話は知ってる?」

そっと女の手に、結構な額のお金を握らせる。

「知ってるも何も・・・!」

女は空いている一つのイスに座り込んで、声を潜めるように話し始めた。

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