第84話 悲しい未来
「どうして元の男の姿に戻ったのか、分からないんです・・・」
離れの塔の部屋で、リーフは、ベイド、クルクルと一緒に丸テーブルを囲んでいる。
男の姿をしていると、この二人とも初めて会ったみたいな感じがして恥ずかしかった。
ブルーはエリー姫にひっつかれていて身動きが取れない。
「大丈夫、ブルーはだいたい分かってるから」クルクルだけが余裕の表情だった。
「しかし・・・驚いたな。これがリーフ殿だとは。」
さっきの危機は何とかごまかしたベイドだが、動揺は隠せない。
何度も何度もリーフの全身をくまなくガン見している。
「ううむ・・・どこからどう見ても・・・男の子だな。」
「ベイドさんなんて、シロクマから人間になるし、クルクルはこだぬきから人間になるし、男から女になるのなんてそんなに凄いことじゃないんじゃないかなぁ・・・」
「それもそうか・・・?」ちょっと納得するベイド。
「もしかして、気付いたかもしれないけど」
クルクルはニッコリして言った。
「リーフが男の子から女の子に変わったり、女の子から男の子に変わる理由」
「えっ!知ってるの?!なになに?!」
「・・・リーフは鈍いなぁ」
あきれるクルクル。いつの間にか二十歳ぐらいの可愛いイケメンになっていて、リーフより偉そうに振る舞う。
「わたしも城についてから、クルクル殿に聞いたのです。
リーフ殿が異世界から来たということ、元はその世界の15歳の男の子だっていうこと、そして・・・女から男に変わるには・・・」
「変わるには?」リーフ、ごくり。
「女の子とキスすること」
「あーーーーーーーーっ!」
そいえば、と色々思い当たる。
最初に男の子に戻ったのは、スカーレットさんにキスした後で、そのあと女の子になったのはブルーにキスされた後で、今回男になったのは・・・・カナシャさんにキスされた後だった・・・!
「ちなみに、ブルーにそのことを教えたのはボク。知識としてはあったんだけど、試してみたくて」
アハッと笑うクルクルには悪気はないらしいが、超長生きしているせいかたちが悪い。
「えーっと、じゃあ、いま男の人とキスしたら、また女の子に戻っちゃうってわけ?」
唇を隠しながら座っている椅子ごと後ずさるリーフ。
「まあ、そういうことだね。それよりリーフ、今回は女の子と・・・誰とキスしたの?」
リーフは返事に困った。亡くなったカナシャさんの幽霊だったと、言うべきだろうか。
しばらく考えて、
「ブルーさんには内緒にしてください」と前置きしてカナシャのことを話した。
「カナシャ様・・・」
リーフの話を聞き終えて、涙ぐむベイド。
「死してなお、ブルー様をお助けになっていらっしゃる・・・・。誇り高く美しい、悲劇の王女カナシャ様・・・。」
「あのキスがなければ、ボクは女の子のままで、エリー姫に殺されていたかもしれないんだもんね。」
リーフもちょっともらい泣きしそうだった。
「それにしても、あのエリー姫、ひどかったなぁ。」クルクルがみんなを代表して言いづらいことを言ってしまった。
「顔は潰れたみたいで吹き出物だらけだし、体は醜くぶよぶよしてるし、声はガラガラだし、似合ってないドレスは最悪だよ。」
ベイドとリーフはこっそりうなづいた。
「でも・・・・あの子、とても悲しい心を持っているね。このままでは”泉の者”になる未来が見えるんだ。」
「泉の者?!」
「そう。体も心も悲しい呪いに支配される”泉の者”に。
でも、リーフ、ボクの予想だと彼女を救うのはキミなんだよ。」
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