第38話 昨夜
朝。
リーフはテントの中で目を覚ました。
テントの天井をぼんやり見つめ、ああやっぱりまだこっちの世界だな、と思う。
すぐ横にはマーリン王子が椅子に腰かけ、リーフを見つめていた。
銀髪が朝の光にキラキラ輝いて、ヒスイ色の目が優し気に微笑んで、絵のように美しい。
今日は王子、ずいぶん気分がよさそうだなぁ、とのんきに思っていると・・・
「あれ?」「なんでボク裸なの?」
リーフは、服を着ていない自分に気が付いた。
「あ、あれあれあれ???!!!」
一瞬で目が覚めて、昨夜の記憶の糸を手繰り寄せる。
おじいちゃん兵士さんが来てくれて、お菓子をみんなに焼いて、スカーレットさんとくっついて・・・。
そこから記憶がない。
恐る恐る一緒に寝たと思われる人に聞いてみる。
「あ・・あのう・・・ボクはどうして服を着ていないのでしょう・・・?」
王子はニコッと笑って答えた。
「昨夜、私たちは婚儀をしたからね。」
「・・・コンギ・・・?」 うまく言葉が理解できない。
「結婚したんだよ、リーフ」
「・・・・・・・・・・・・・・・
ええーーーーーーーーーーーっつつ!!!」
キャンプ中にリーフの叫び声が響き渡る。
「失礼!今のお声は、何事ですか!」
スカーレットがすぐに駆けつけてきた。
すがるような目のリーフ。
「あのっ、あのあのっ!王子とボクが婚儀をあげたって本当ですか?夜に!」
リーフの戸惑いは察したものの、スカーレットは恭しく頭を下げて「はい」と言った。
「だってボク寝てて・・・その間って・・・ていうか婚儀ってどういうことを・・・。」
「リーフ様がマーリン様の妻になったという証がお体に刻まれまし・・・」
「きゃーーーやっぱいい!言わなくていい!言わないで~~~!」
思わず耳をふさぐリーフ。「ななな何も聞きたくない・・・・」
まさかマーリン王子と、いたしてしまったというのだろうか。しかも寝てる間に。
自分の体が、どこがどう変わった感じはないのだが、男でも女でも経験のないリーフにはそもそもさっぱり分からない。
もう一度マーリン王子を見る。語らずとも余裕の微笑、妙にスッキリした顔に見えるのが恐ろしい・・・。
昨夜までは仲間の様だった兵士たちも、おじいちゃん兵士も、スカーレットさえ、リーフにやけに丁寧な態度になり、「リーフ様」と「様」を付けて呼ぶようになっている。
トドメは、おじいちゃん兵士の
「リーフ様にお子様がお生まれになったら、100歳を超えましてもこのわたくしめが命がけでお守りいたしますぞ!」
という威勢のいい一言だった・・・。
ショックで茫然とするリーフを乗せて、馬車の旅は二日目を迎えたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます