195-3.幸福な家庭
*・*・*
あれから、七年。
私、チャロナ=マンシェリー=セルディアス=ローザリオンは公爵夫人としての出産を迎えていたのだった。
「おめでとう、チャロナ!! 元気な男の子だよ!!」
産婆として、我が子を取り上げてくれたのはエスメラルダさん。あれから、ご自身も双子を身籠ったなどで……もともとの職種を活かして、産婆の仕事も頑張ることになった。
私は……あの婚約パーティーを終えて、二年後にカイルキア様と結婚した。お兄さんとシャルロッタ様の結婚や
実際は同居していたので、ほとんど家族同然ではあったが。
(一人目はすぐに授かったけれど……)
第一子は女の子で、結婚前後で身籠っていることがわかり……式などを急いだと慌てたりしたが。二人目はなかなかだった。
跡継ぎとなる男の子を……とは、思ってはいてもすぐに授からず。
現在、やっと二人目を出産出来、念願の男の子をこの腕に抱けたのだ。
「……いらっしゃい」
うっすら、緑色の髪が我が子の頭に生えていた。一人目のリーシャもだけど、我が子は私側の血を濃く受け継いだのか……王族の象徴でもある
継承権などについては、お兄さんの子供達が優先なのでこの子達にはほとんどないに等しい。
けど、万が一の場合はないとも言い切れないのだ。
夫となった、カイルキア様もそう思ったのか……エスメラルダさんに中に入る許可をもらってから、私達のいるベッドの方に来てくださった。
「チャロナ……よく、頑張った」
私はまだ息が整っていなかったが、愛しい人が来てくださると自然に口元が緩んだ。
「はい。……男の子です」
「……そうだな」
抱っこしてくださると、このお屋敷で会った頃とは違い……随分と表情が戻ったので、今は蕩けるような微笑みを浮かべていた。ちょっと、我が子に妬けちゃうくらいに。
「名前……どうしましょう?」
「そうだな。父上達にも通達は今さっき出した。……早く孫の顔を見たいとうるさいだろうが」
「ふふ。お父さんも、デュファン様もそう言いそうです」
「……ひとつ、浮かんだが」
「まあ」
もうすぐに。
もしくは、ずっと考えていらっしゃったかもしれない。
「お父様〜、お母様〜!!」
カイルキア様が教えてくださる前に、愛娘のリーシャが入ってきた。髪色は私と同じだが、目の色は父親似ですみれ色である。
「……リーシャ」
「弟が生まれたって聞いたの! ミアから!」
『みにゅぅ!』
ミアはロティとレイ君の娘だ。今はリーシャの契約精霊として、母であるロティと同じようにリーシャと料理を作る練習をしたりしている。
姿形は、両親のいいとこ取りをしたような可愛らしい精霊だ。
「こら、あまり騒ぐな。チャロナはまだ疲れているのだぞ?」
「……はーい」
「……とりあえず、この子がお前の弟だ」
「わぁ!」
しゅんとしたり、すぐに笑顔になるのは私に似たとカイルキア様は言うが……ちょっと、そうかもと最近は思うようになった。
「……新しい家族よ、リーシャ」
「うん! ね、ね、名前は?」
「今、お父様が言おうとしていたの」
「……ディオスとは、どうだ?」
「おお!」
「……いい名前ですね?」
洗礼名はまた後日、お父さん達が決めるだろうから……ゼーレンさん伝に、カイルキア様が新しい魔法鳥を届けさせた。
(……本当に、幸せ)
王女だったり、公爵夫人になるとは思わなかった……約十年前とは違う生活。
今を精一杯生きれるのは、旦那様となったカイルキア様達のお陰ももちろんだが……
パン作りの間違った方法も随分と改善された。フィルドさん達は婚約パーティー以降ほとんどお会い出来ていないが、今私が幸せだからと手を貸さないのだろう。
でも、本当に大丈夫なくらい幸せなのは間違いない。
『ご主人様ぁ!!』
レイ君と一緒にやってきたロティは、七年前から変化はないがお母さんらしい貫禄は出来ていた。口調は相変わらずだけど、しっかりしてきたと思う。
「……ロティ」
『でふ!』
この子とも、記憶が蘇った時に目覚めさせてよかった。
ロティがいなければ、正しいパンの作り方もこの世界に合った作り方で広めることが出来なかったから。
私は体を起こして、抱きつきに来たロティを受け止め……たくさんの家族に囲まれて、嬉しさが込み上がってきて……思わず、泣いてしまった。
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