185-5.まんじゅう実食(アシュリン視点)






 *・*・*(アシュリン視点)









 王女殿に、きちんと指導を受けた饅頭は……美味かった。


 饅頭に肉だなんて……と最初は思ってしまったが、食べれば納得の味!! 我が国でも一部の地域でしか使わない醤油と言う調味料に酢を混ぜたタレをつけても絶品!!


 これが……我が城だけでなく、国民に広まれば名産になるに違いない!! それだけ、肉と玉ねぎだけの饅頭は美味過ぎたのだ。



「うん! このタレにつけてもすごく美味しい!! 王女殿、醤油にこのような使い方があるだなんて」


「お醤油は料理での万能調味料と言っても過言ではありません。ホムラですと、揚げ物や炒め物にも使えるでしょう」



 と言って、王女殿はご自分の契約精霊から渡されたものを父上に手渡した。



「これは……?」


「私の知り得る限りのレシピです。是非、ご活用ください」


「! それはありがたい!!」



 俺も父上の横に立って覗き込むと……たしかに様々な料理のレシピが書かれていた。これはおそらく……王女殿にマックスの前世での知識。


 かの世界ではどれだけ食の文化があふれているのだろうか。



「肉まんなどのレシピもありますので……次のお饅頭も蒸しますか?」


「そうだね?」


「頼む」



 我が国で比較的需要の多い、ゴマを使った饅頭だが……作り方は俺が幼い頃に作ったやり方とまるで違っていた。


 まず、小豆と言う豆を甘く煮たものだなんて混ぜない。先に味見はしたが……すごく、すごく好みの味わいだった。これ単体で饅頭の具材にしたものも凄く楽しみだ。


 蒸し時間は、肉まんより少し短め。


 あんまんと呼ぶのと、ゴマあんまんをそれぞれ蒸し終えてから……蓋を開けた瞬間、今まで嗅ぎ慣れていたはずのとは違う香りがしたのだった。



「小豆を混ぜると、匂いも段違いに変わるんです」



 王女殿が試食用にと切り分けてくれたあんまんを……俺は父上と息を吹きかけながら口に入れた。



「「あふ!?」」



 肉まんよりもさらに熱く感じたが……口の中に広がる甘さが……とてつもなく、美味かった!?


 甘過ぎず、しかし物足りなさも一切感じない。パサパサしない生地との相性もよく……むしろ、このために生地があると言えよう!!



「……餡子をそのまま食べた時より、甘さが控えめだけど。いいね!! 優しい甘さだ……」


「これは……」



 今までの饅頭の概念を打ち消してしまうほどの饅頭だ!! 俺はずっと昔から苦手にしていたのに、これは……美味い!!



「ん〜〜!! チーちゃん最高!!」


「ふふ、ゴマあんまんも美味しいと思うよ?」



 王女殿は、マックスと仲が良さそうだ。それぞれ婚約者を得たそうだが……マックスは昔以上にガタイが凄いのに、前世の記憶などがあるようで女言葉を使うが。



(こう見ると然程違和感はないな?)



 それも、王女殿のお人柄もあるのだろう。


 あともうひとつ。



「…………」



 王女殿の婚約者になった、氷の守護者とも呼ばれたかつての冒険者が。


 見たこともない柔らかく笑みで、ふたりを見ていたのだ。一瞬、寒気を感じたが……これは苦笑いするしかない。



(似合いだな?)



 元王弟殿下の写しとも言えるくらい、髪色以外瓜二つのカイルキア。王妃殿下と瓜二つの王女殿とはとても似合いだと思えたのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る