179-5.幸せを噛み締める(カイルキア視点)
*・*・*(カイルキア視点)
かつての、仲間だった彼らを……チャロナは恨んでいない。
穏やかな横顔から、それは本心なんだなと俺はわかった。屋敷で保護して、目が覚めた直後とはまるで違う。
泣きじゃくっていた、わずか数ヶ月前のこととは言え、この女性は随分と成長したんだなと……俺は少しばかり複雑にも思ったが、今俺の手の届くところにいることを嬉しくも思う。
だから、キスしたくなり……体を引き寄せてから何度も何度も繰り返した。俺もだが、チャロナもまだ慣れていないので、終わったら盛大なくらいに顔を赤らめていた。それが可愛らしく、愛しく思えて最後に額に口付けた。
どうやら俺は、惚れた女性には触れたくて仕方がない欲望を抱いていたらしい。とにかく、二人でいると彼女に触れたくて仕方がなかった。
パチ、パチ、パチ
と、焼き栗の音が激しくなったので、二人で笑い合ってから食べることにした。ついでに、少し早いがチャロナ手製の弁当も食べることになった。
「はふ、はふ!? 少し甘いですけど……ほくほくして美味しいです!!」
焼き栗はあまりしたことがないチャロナだったが、綺麗に皮を剥いては口に放り込んでいた。
「皮を剥くのが上手いな?」
「前世では、もうちょっと違った焼き栗がありまして……けど、こっちの方が好きですね? 自然の甘みって感じがします」
「……そうか」
言葉から察するに、神からの
あと少しで、ホムラへの派遣もあるが……久しぶりに会う皇太子殿下は俺を見てどう反応するだろうか?
チャロナと結ばれたことで、戻りつつある表情に気味悪がれるかもしれん。
(ホムラ……と言えば、シュィリンもだが)
元皇室だった彼は、チャロナのように亡命してセルディアスに来た。そして……マザー達の提案でチャロナと出会い、短い間だったが幼馴染みとなった。チャロナを想ってもいたらしいが……俺に既に想いを寄せていた彼女の気持ちを汲んで、身を引いたそうだ。
それを不謹慎ではあるが複雑に感じ、かつ嬉しくも感じた。
チャロナは……俺のものだと。名実共に俺の婚約者であると、彼にも言える。だが、彼はこれからどうするか。
暗部に在籍することは変わりないだろうが……チャロナにとっては、シュライゼンとは違う兄代わりだ。きっと、幸せになってほしいと思っているに違いない。
結ばれた今こそ……俺もそう言うことを考えることが出来た。
(……いつか、見つかって欲しい)
大切にしていた女性を奪った形になったかもしれないが……彼女は俺を選んでくれた。だから、シュィリンにも大切な存在を得て欲しいと思えた。
「カイル様? お昼、早めに食べませんか??」
「……ああ」
とにかく、今は……チャロナと共にいたい。
彼女が、無限∞収納棚から取り出した、色とりどりの弁当を堪能することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます