172-3.言っていない事①
執務室に到着すると、フィーガスさんがいきなり扉を開け放った。
「聞いたぞ、カイル!!」
勢いよく開けたので、私もだけどロティもびっくりしてしまう。
「……うるさい。毎回毎回、なん……」
カイルキア様が呆れた口調でこちらに振り返ってくると、当然私の姿も見えたので少しどもってしまった。
そして、だんだんと無表情が真っ赤になって行く!?
なんだか可愛く見えたのは気のせい!?
「嬢ちゃんと正式に付き合うって聞いたぜ? あと身体の変化も」
「……………………そう、か」
「おいおいおい? らしくねぇなあ? そんなにも嬉しいのか?」
「…………うるさい」
ついさっき、胸の変化もだけど……カイルキア様と交際を始めた事をお伝えしたら、頭を結構な力で撫でてくださった。だもんで、今ちょっとだけ髪がボサボサだ。
「聞いたんでしょ、フィー? チーちゃんとカイルが念願叶ってなのよん!!? すべき事はわかっているかしらん!!」
「だろうな!!」
「……ちょっと二人とも??」
悠花さんが言葉を続けようとした瞬間、レクター先生が何故か割り込んできた。
「チャロナちゃんには、カイルがまだ全部言っていないんだから勝手に盛り上げないように!」
「「…………はい」」
「言っていない……ことですか??」
ちょびっと怖かったけど、自分の事なので先生が口にした言葉を聞き返した。
すると、レクター先生はにっこり笑ってから……悠花さんと比べると断然細い腕で悠花さんとフィーガスさんの首根っこを掴んで、執務室から出て行ってしまった。
「ちゃんと言うんだよー、カイル?」
「……………………ああ」
メイミーさんもだけど、この姉弟は怒らせてはいけないんだと改めて認識出来た。
なので、ロティと三人になってしまったが……ロティも扉から透けて出て行ってしまったのだ。
『旦那しゃまがいるなら、大丈夫でふ! ロティ、レイのとこに行ってきましゅ!!』
と言うわけで、少し前とは違い、完全にカイルキア様と二人っきりになってしまいました!?
けど、すぐに話すだなんてパニック状態が最後だから、恥ずかしくなって……堪らず、赤くなっているはずのほっぺを両手で包んでいると、カイルキア様から咳払いがあった。
「……とりあえず、座るか」
「……はい」
応接スペースで向かい合わせで座るかと思いきや、私の部屋の時のように隣り合わせで座る事に。手も自然にって感じで恋人繋ぎになっちゃった!?
「……嫌か?」
「は……恥ずかしいだけ、です」
「そうか……」
私、こんな素敵な人と本当に両想い以上に……恋人になれたんだ?
前世でもなかったので、人生初の彼氏さんだ!!
嬉しくないわけがない。
思わず、にっこり笑うと……カイルキア様の顔が近づいてきて、軽くキスをされてしまった!?
「!?」
「お前が可愛い過ぎるのが悪い」
「そんなつもりでは……」
「わかっている。だが、無意識はほどほどにしてくれ。それと……」
「はい?」
今から、レクター先生が言っていたお話かな??
「…………チャロナがこの屋敷に来てすぐだったんだが」
「? はい?」
「身の安全のために、俺は後見人や保護者だけでなく……陛下から『仮の婚約者』に任命されていたんだ」
「…………お、お父さん、が??」
なんで、そんな処置したの!? お父さぁああああん!!?
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