169-4.お屋敷へ②






 *・*・*









 帰って来て、すぐにだけど。


 お屋敷の皆さんに、私の身の振り方がどう変わったかを告げるために……お兄さんのお願いで、食堂に全員を集めた。


 転生者についてはともかくとして、王女であることについて。


 身分がはっきりしたのに、何故またこのお屋敷に戻ってきたかをである。



「皆聞いてほしいんだぞ!!」



 お兄さんが声を上げると、やっぱり王子様だから全員かしこまった姿勢になった。いつもとは違って、今回は真剣なお話だもの。



「我が妹と判明したチャロナだが……本人の希望もあり、カイルの屋敷にとどまることに決定した。城には定期的に戻る次第にはなっている。だから……身分を気にせず、これまで通りに接してやって欲しい。悲しいからね?」


『『『『『はっ!』』』』』



 お兄さんのお願いを受け入れてもらえたのか……私が『よろしくお願いします』と言ったら、手前でひざまずいていたエスメラルダさんから、抱きつかれた。



「チャロナはチャロナさ! 王女様であろうとなかろうと、あんたはあんただ!!」


「……エスメラルダさん」


「だろう? 皆!」


『『『はい!!』』』


『『『おう!!』』』



 と言うことで、無事に私はお屋敷に戻ることが出来たのだ。


 お兄さんは、お仕事があるからと転移で帰ってしまい。私は、何故か悠花ゆうかさんから話があると、借りている部屋に一緒に向かうことになった。



「どーしたの? 悠花さん」



 部屋の中に入って、二人で床のラグの上に座ったんだけど……話があるって言うのに、悠花さんは唸るように考え込んでしまったのだ。



「……チーちゃん」



 やっと出た言葉は呼びかけだった。



「なぁに?」


「あんた……封印されてた記憶ってどんなけ戻ってんの?」


「え!? き、記憶……!?」



 悠花さん達にもあったんだ、って思ったけれど……正直言って恥ずかしくなってきた。だって、カイルキア様と両想いかもしれないってわかっちゃったんだもん!!


 けど、悠花さんの顔を見ていると、それじゃないような気がした。恋バナにしては、深刻そうな表情だから。



「……その様子だと、戻ってないみたいね?」


「え……何が?」


「あたしとあんたが、この世界に来る前。日本で本当に死んだ真実よ?」


「……悠花さんは人身事故じゃ?」


「それが違ったのよねー? フィルド達にいじくられてたわけ」


「……フィルドさん達に……?」



 ユリアさんは封印については徐々にわかるとだけ言われたけれど……それが、悠花さんも知った真実も含めて?


 けど、悠花さんに言われてもちっとも何も起こらない。


 そう思ってた瞬間。


 頭に激痛が起こった!?



「チーちゃん!?」


「ゆ……か、さ」



 痛いってものですまない。


 経験したことのない激痛。頭が割れそうなくらいの衝撃。


 いったいどうして……と思っていると。


 私の視界がフェードアウトするかのように、闇に包まれたのだった。

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