159-1.あと少し(ディーシア視点)






 *・*・*(ディーシア視点)









 あと少し。


 ほんとにあと少し。



「ふふふ? チャロナ、頑張っているねー?」



 水鏡越しに、あの子の様子を見ている。


 じぃじやばぁばは今いない。チャロナのために、色々動いているからだ。


 私だって、頑張って動いているけど。この前フィーと一緒に頑張ったから……あと二日後の式典の日までやることがない。


 だから、ちょっとだけ暇なの。



「クロワッサン……チーズ蒸しパン、ミートパイとか美味しそう……!!」



 全部全部美味しそう!!


 チャロナの作るパンとかは、なんだって美味しいに決まっている!!


 久しぶりに食べたい……けど、私は神だ。


 ウルはともかく、他世界の最高神が贔屓している人間のとこに、頻繁にいくわけにもいかない。


 それに、私の見た目はだいぶ変わってしまった。会いに行ったとこで信じられないだろう。記憶の書き換えも面倒だし。



「あ〜あ、あ〜あ……! ウルが羨ましいぃいいい!!」



 自分のつがいに会いにいく理由にもなるだろうけど。その度にチャロナから美味しいパンとかお菓子とか食べさせてもらってる。……すっごく、羨ましい!!



「……フィーと、一緒に食べたいなあ」



 私の兄であり。


 私の番であり。


 私の最愛の相手。


 だから、一緒にいろんなことを共有したい!!


 けど、それもすぐには出来ない。……あと二日後までは。



「こう言う時って、最高神って不便ー!」



 後ろに倒れても、壁があるようでない空間があるだけ。


 狭間だから、本来の神世界とは違って当然だ。


 私は、本来の自分の世界に帰るためには、ここで身体を慣らさなきゃいけないけど。



「……チャロナのためにも、頑張らなきゃ」



 チャロナのためは、この世界のため。


 私達の世界のためにもなる。


 だから、神とは言え頑張らなきゃいけない。



「……あそこに行くか」



 手で水鏡を消してから、狭間の隙間からアクシアの魂安置所に行く。ロティの本体のところにも。


 装置の中でまた眠っている二人だったが、私が前に立つとロティはきゃっきゃしてたし、アクシアは会釈してくれた。



「あと二日。あなた達の選択の時も近いわ」



 私としては、チャロナが何を選ぶかはわかってなくもないけど。


 人間はギリギリまで選択を変える傾向がある。


 だから、選択させる私達も慎重に誘導させなくては。


 アクシアの装置の表面を撫でると、彼女は私の言いたいことがわかったのか苦笑いしてたけど。



「……あと、少しよ」



 チャロナ、この二人も導いて欲しい。


 あるべき姿のために。

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