154-3.誕生日会③(アインズバック視点)






 *・*・*(アインズバック視点)








 ああ、ああ、ああ!!


 あの子の正式な誕生日でないとは言え。


 この日が来るとは思ってもみなかった。


 昨日、甥から魔法鳥で通達が来た時は何事かと思ったが。


 こんな嬉しい驚きは願ってもいない!!



「……ああ。本当に、アクシアにそっくりだ」



 自分にとっては高価なアクセサリーを身につけて、ガチガチになっているが。


 我が娘は可愛らし過ぎる。


 隣に立っている甥が弟とほぼ瓜二つなので、アクシアとデュファンが並んでいるようで気に食わないが。



「兄さん。それ、大声で言っちゃダメだよ?」



 と考えていたら、そのデュファンがやってきたのだ。


 手には料理の皿を持っていたが、俺に片方を差し出してきた。


 なんだ、と思ったら。層が美しい、肉を使った料理のようだが見たことがない。おそらく、マンシェリーがシェトラス達に伝授した料理なのだろう。



「……あと数日の我慢だ。配慮はする。と言うか、お前も俺を今兄と呼ぶな?」


「ま、ね? けど、ここの料理は美味し過ぎだよ。このラザニアってパスタ使った料理も美味しいし」


「ラザニア……? これはパスタの料理なのか?」



 フォークで切り分けてみると、層の途中に独特の弾力を感じた。すくってみると、肉のソース、白いソースにパスタとチーズの彩りが美しい。


 口に入れれば、その味の素晴らしさに声を上げてしまいそうになった。



「美味しいでしょ?」


「……なんだ、これは。パスタもだが、肉と白いソースが美味い!! チーズとも相性が抜群だ!!」


「ね? 姫の料理の技術が広まれば、あの子は蔓延していた【枯渇の悪食】を覆してくれるだろうね? 既にパンで証明は出来ているし」


「……ああ、そうだな」



 しかし、このラザニアはたまらん。


 ひと口ひと口味わっても、まだまだ足りない。少し冷めているのは仕方ないが、これが焼き立てだとしたら……美味いだけで済まないだろう。


 おかわりしに行くか、と自分でとりに行こうとしたが。



「すみません! ラザニアが終わったので、しばらくお待ちください!!」



 シェトラスの声が聞こえてきたので、残念で転けそうになった。



「く……すぐに食べれないのか」


「やや、陛下!」



 がっくししていたら、フレイズ殿がやってきたので、すぐにマンシェリーの耳に届かない位置まで引きずった。



「フレイズ殿!! 俺は今は陛下でもあの子の父親でもない!! とりあえず、アインズにしてくれ!!」


「あ、すみません……。しかしながら、せっかくの姫様の誕生日パーティーですのに、名乗り上げ出来んとは」


「仕方ない。下手をすれば、神に聞き届けられて記憶を封印させられるからな?」


「……なんと」



 はたから見れば、怪しいヒソヒソ話をしているように見られるだろうが、今日は無礼講。とりあえず、怪しまれないだろう。


 そう、俺は馬鹿息子の父親ではあるが、ただのアインズだ。


 あの子の父親とこの国の国王であることは、まだ告げられない。


 式典と、あの子の『本当の』誕生日までは、おそらく今口にしたところで……封印させられるに決まっている。親としては、早く口にして名乗り上げたいのに、出来ないのだ。


 封印を直にされたことで、俺はそれを確信しているのだった。



「……だから、今は出来ん」



 しかし、今回はある意味好都合だった。


 リーンのもだが、実は俺やシュラもマンシェリーに贈ったのは。


 アクシアの形見。


 彼女が若い頃に、俺からアクシアに贈った一式だったのだ。同じ顔なので似合わないわけがないと自負していたが。


 まさしく、その通りになって良かった。

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