152-1.最後の定例会①
*・*・*
式典前、最後の差し入れ定例会。
ひと区切りついちゃうんだと思うと、少し寂しくはなるが。
これからの、私のすべきことはもっともっとたくさんある。
この国を中心に、世界中に正しいパンの知識と技術を伝えることだ。子供達にももちろん伝えたいが、まだまだ子供達には重労働だ。
出来なくもないが、子供って力加減が難しいから手ごねでも大変だもの?
(カレーパンは……式典後にここに届けてもらえるようにしようかな?)
それくらいは、多分出来ると思うから。
とりあえず、馬車でリシュアに向かい。孤児院に到着してからミニハンバーガーを入れた木箱を、私達と職員の人達で持っていく。
講堂に行くと、子供達が全員揃っていた。
『『『お姉さん!!』』』
私が入れば、子供達がわらわらとやってきてくれたわ。
「皆、こんにちは」
『『『こんにちは!!』』』
「元気なのはいいことです。今日も美味しいパンを持ってきました!」
『『『わーい!!』』』
自分のパンをここまで楽しみにしてくれるのは嬉しい。
けど、その楽しみを奪ってしまうのを申し訳なくなってしまうとも思う。
まだ片手で足りる程度しかこの会を開いていないのに、ずっとずっと続くものだと。
だから、マザー・ライアにその事を告げるのを事前にお願いしたのだ。
「はーい、皆さん。食べる前に大事なお話があります」
マザーの言葉に、皆一斉に彼女の方に振り返った。
「今日でひとまず、差し入れ会とお菓子教室は終わりになります。残念ですが、チャロナお姉さんのお仕事が忙しくなるからです!」
『『『『えええ〜〜〜〜!!?』』』』
皆が一同に声を上げると、私にしがみついてた小さな女の子が腰のエプロンにさらにしがみついてきた。
「やだ! お姉さんにもっと色々教えて欲しい!!」
「僕も!」
「俺も!」
「あたしも!」
と言って、わらわらと私の周りに集まってきた。
「……ごめんね? 本当に色々忙しくなっちゃうの」
「……もう来ないの?」
しがみついている女の子の頭を、私は撫でてあげた。
「……うん。ほんと、ごめんね?」
『『『……う、うわぁああああああんんん!!』』』
そこから、子供達は年齢問わず泣き出してしまい。
私やシュライゼン様達もだが、職員の全員で必死に宥めるしか出来なかった。
落ち着いたのは、一時間経ってからで。
皆、ぐずぐずと泣き止んだ男の子以上に女の子はなかなか涙が止まらないでいた。
「今日は、ハンバーガーってパンを持ってきました。皆、お腹いっぱい食べてください」
『『『ハンバーガー?』』』
そうして、卓の上に揃えてもらったミニハンバーガーのお皿を見てくれた子供達は、涙顔から笑顔になって行った。
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