150-2.ペポロンミートパイ①(エイマー視点)






 *・*・*(エイマー視点)








 本当に心配したけれど、姫様の体調は無事に元通りになり。


 今日も今日とて、新しいパン……いや、パイ作りをご教授してくださることになったが。


 このパイ生地作り……一癖二癖と、難しいし体力を奪われてしまう。


 料理長ですら、軽く汗をかくのに、姫様は全然だった。それだけ、前世での経験が活かされているからだろう。



「さ! 次は中身を作ります!」


『でふうううう!』


『無茶してないでやんすか? 二人とも?』


「全然!」


『だいじょぶでふうう!!』



 本当に大丈夫だからかやる気に満ちあふれた表情でいた。しっかり休んだ証拠なので嬉しいが。



「ペポロンをマッシュにするのと、ひき肉を炒めるのとで分担しましょう?」



 なら、と。前もってひき肉にしたオーク肉とみじん切りにした玉ねぎを炒めるのは、料理長が。


 マッシュは私達が担当することになり、皮とワタに種を取り除いて、適当な大きさに切ったペポロンを。姫様の魔導具? である、銀製器具シルバーアイテムから出した蒸し器で蒸して。


 軽く私の冷却魔法で冷やしたら、ひたすらマッシュ。


 これが出来上がったら。



「チャロナちゃん、炒まったけど」


「はーい! じゃ、ペポロンも入れちゃいましょう!」



 大鍋にひき肉、ペポロン、ケチャップとウスターソースに塩胡椒を入れてさらに炒めていき。


 濃いめに味がついたら、これは自然に冷ますだけでいいそうだ。



『くぁ〜、いい匂いでやんす!』


「これがパイの具材……? この前とは違って、たしかに食事向きだ」



 なので、出来上がってる生地を丁寧に麺棒で伸ばしたら。まだ具材が温かいので、私が冷却魔法をかけて。


 綺麗に伸ばした生地に、均一に塗るように載せて。またもう一枚、別に伸ばした生地を被せて。



「周りをフォークとかで止めて、上に少し切り込みを入れてから、今回はキャラメルじゃなくてドリュールを塗ります」



 そうして、ロティくんのオーブンに入れて。彼女の歌が終わるまで、片付けをしていたら。この前のクロワッサン同様に、甘いバターの香りに加えて、肉とスパイスの香りが厨房に充満したのだった。



『……腹減りゅぅ〜〜……』



 レイは特に鼻がいいから、我慢も大変なのだろう。


 魔物ではないが、精霊も人間と比べるまでもなく臭いなどに敏感かもしれない。


 レイでこれだと、とカウンターの方を見れば。


 クロワッサンの時と同じく、姫様と同世代の三馬鹿が揃って顔を出していたのだった。



「「「いい匂い〜〜」」」



 仕事はきっちり終わらせたようだが、相変わらず気の合う奴らだ。



「こら。昼提供にはまだ早い時間だ。チャロナくんは大丈夫だし、それぞれの上司から許可をもらっているのなら、おとなしくテーブルで待ってなさい」


「けど……エイ姉……この匂いって、チャロナの言ってたパイ?」


「ああ、そうだ。……出来立ては無理だが、もう少しで他のも出来る」


「「「りょーかい!」」」



 これくらい言わないと、頷かないものだから。


 若者とは言え、扱いが大変だと実感出来た。

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