136-3.お祝いのエンガディナー③(マックス《悠花》視点)






 *・*・*(マックス《悠花ゆうか》視点)











「るーんたった、るんたった!!」



 あたし、吾味ごみ悠花ゆうかことマックス=ユーシェンシー!!


 今すっごく上機嫌なのよね〜ん?!



(チーちゃんが! エイマーが!! クルミのお菓子作ってるんだって!!)



 呼びに来たレイから聞いたら、居ても立っても居られずにスキップしながら向かうわけ。


 この屋敷の使用人達は、だいたいあたしの性格を理解してっから。スキップしてても軽く振り返るだけだったわ! ほんといい子達ねん?



「マックス様! 機嫌ええですね!」



 一階に降りたら、ちょうど魔法陣を使用するのに待ってた、執事バトラー見習いのシャミーとぶつかったわ。口調は関西弁なんだけど、あたしの部下でもあるカーミアと同郷だから関西弁ではないのよね?



「んふふ! チーちゃんが美味しいお菓子作ってるらしいのよん!」


「……姫様が? 俺らもおこぼれに預かれますか!?」


「どーでしょ? フィーんとこに渡すお菓子の試作品も作ってても。全員分はないんじゃないかしら?」


「……そんなー」



 完全に胃袋掴まれている一員ね、こいつも。


 けどまあ。チーちゃんが王女だって事実は知ってるし、分は弁えているもの。頼んでおくわよ、と口約束してからあたしは食堂に向かったのだ。



「チーちゃん、エイマー!!」


「はーい?」



 到着したら、それらしいケーキの箱をチーちゃんはフィーガスに渡しているところだったわ。



「お、来たか?」


「もう出来たのん?」


時間短縮クイック使って、パパッと! あ、悠花さんの分は、エイマーさんが作ったのがあるから」


「ま、ほんと!?」



 愛しのエイマーの、て・づ・く・り!?


 是非とも食べたいわ〜!! とテンションがハイになっていたら、そのエイマーが切り分けたケーキのようなものを持ってきてくれたわ!!



「やあ、マックス。チャロナくんからも、大丈夫と言ってもらえたんだ。食べてくれるかい?」


「……当然だろ?」



 近づいてきたら、フィーの技能スキルには負けるけど、イケメンボイスで囁いてやったら。


 エイマーには効果覿面で、危うくケーキを落とすとこだったわ!? 尻もちつきそうになるってどんだけ!?



「……お前さん、俺みてーな技能持ってた??」


「……多分、こいつ限定だ」


「……悠花さんは自分がイケメンだって自覚した方がいいよ」


「え、チーちゃんも?」


「びっくりした!!」



 あらあら、一応自覚はあるけど。婚約したからセーブ出来ていないのかしらん?


 とりあえず、二次被害にならないようにエイマーと二人っきりの時だけにするわ。


 無事だったケーキを見ると、パイ生地? タルト生地? にクルミがキャラメルみたいなソースに絡んでる不思議なお菓子だったわ。



「これなーに?」


「エンガディナー。スイスのタルト生地を使ったお菓子。コーヒーもいいけど、ミルクティーとかにも抜群に合うの!」


「うーん。じゃ、せっかくだからミルクティー!!」


「はーい」



 量は試作だから少なかったので、フィーと一緒にミルクティーが出来上がるまで待って。


 チーちゃんが仕上げてくれた美味しいロイヤルミルクティーをひと口飲んでから手で持つ。


 崩れやすいから、フォークよりも手掴みでいいんですって。



「んん!?」


「んめ!?」



 フィーと同じタイミングで声を上げてしまうくらい。


 サクサクで香ばしいタルト生地の間には。食感の良いクルミと甘い甘ーいキャラメル風味のソースか何か。


 中身だけなら甘過ぎるけど、タルト生地がサクサクで甘さ控えめだから、むしろちょうどいい!!


 ほんの少しだから、あっと言う間にぺろりと食べてしまい。口の中をミルクティーで潤した。



「美味かったぜ、エイマー?」


「……そうか」



 ああ、ああ。


 婚約した欲目を差し引いても。


 エイマーは少女時代の頃のような、花のある笑顔になってくれた。

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