131-2.豆乳味噌汁の虜(カイルキア視点)






 *・*・*(カイルキア視点)








 先日、最高神夫妻からいただいたと言う『トーニュー』を使って、姫がまた料理を作ってくれたそうだ。


 どうやら、ミソシルの類のスープらしく。見た目はシェトラスが得意なジャガイモのポタージュより白っぽいが、やや茶色。


 どんなスープだと、味の想像がしにくいが。向かいのマックスは目を輝かせたのだった。



「チーちゃん!? 豆乳味噌汁作ってくれたのか!?」


「うん! あの魔法瓶に10リットル入っていたから、豆乳プリンだけじゃもったいないかなって」


「くあー! 涼しくなってきたから、あったけーもんが欲しいと思ってたんだよ!! 具材は?」


「皮を剥いたペポロンとほうれん草」


「おお!?」


「……ミソとペポロンが合うのか?」


「たしかに、気になるよね?」



 とりあえず、スプーンでひと口。


 すると、豆のような牛乳のような、口当たりがよくて滑らかなスープの味が広がって行った。



「うんめ!!」


「……美味い」


「うん。美味しいよ!! 普通のポタージュよりも優しい味わいだね? 塩気も」



 ペポロンの皮はいささか食べにくいと感じていたが。皮は綺麗に剥かれて、むせることはない。


 それに、レクターが言うようにただただ優しい塩気と味わい。トーニューのお陰で口当たりがよく、いくらでも飲みたくなる。


 メインのコカトリスの照り焼きを忘れるくらい、俺は夢中になってしまった。



「……レクター」


「はいはい。スープだけど、飲みすぎないようにね?」


「! チャロナ、おかわりを!」


「はい。お待ちいただいている間に、他のお料理をどうぞ」


「ああ」



 堪能していると、俺の逆隣の席はないはずなのに。誰かがスープを飲んでいる音がしたのだ。



『んく、んく! うむ!! 大地の恵みが詰まったスープは美味じゃ!!』


「……ウルクル神」



 相変わらず、将来の夫になるラスティの側にいる時以外は、自由に過ごされる神だ。


 浮いたまま、姫にもらったらしいトーニューのミソシルを飲み終えたら、妖艶な笑みで俺を見下ろした。



『主は幸せ者よの? つがいになるやもしれぬ、あの女童めのわらわに様々な馳走を作ってもらえるではないか?』


「……まだ、予定です」


『ほっほ。その予定が実現するやもしれぬぞ?』


「あれ、ウルクル様。カイル様のお隣で召し上がっていらっしゃったのですか?」


「!」



 今の話は、どうやら聞かれていなかったらしい。告げたい気持ちと聞かれなかったことへの安堵が押し寄せてきたが。


 姫は、ウルクル神の話は何も聞いていなかったのか、俺におかわりのスープを持ってきてくれただけだった。



『チャロナよ、チャロナ! 妾はこのスープがもっと飲みたいぞ!!』


「はい。えっと……スープだけでいいですか?」


『ぬ? コカトリスの照り焼きとやらも美味じゃったが、何かあるのかえ?』


「そうですね? あんまりいい食べ方ではないですけど。白パンを浸すと、美味しいんです」


『ほほう!?』



 なので、俺達も試したのだが。俺は、姫が以前作ってくれたオニオングラタンスープを思い出す味わいに、またレクターに注意されるくらいおかわりしてしまったのだった。


 しかしながら、姫に見せてもらったトーニューと呼ばれる液体。普通のマジックアイテムではあり得ない収納力には驚いたものだ。


 何故なら、湯船一杯分入っていたらしい。


 そして、少しだけ味見したのだが。調味しなければ、ただの豆臭い牛乳のようでしかなかった。最高神もだが、姫やマックスの前世の世界ではよくこんな食材を扱うものだ。


 だが、調理次第でうまくなるのはよくわかった。八つ時のプリンアラモードが楽しみだ。

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