126-3.伝えられない(カイルキア視点)
*・*・*(カイルキア視点)
今日は伝えなかった。
いいや、いくらシュラでも伝えられないだろう。
姫の過ごした、ホムラの孤児院が襲撃され。彼女が一番慕っていたマザーも一時誘拐された。
そのマザーは無事ではあったが、助けた冒険者達が前に姫が所属していたパーティーだったと。
どうして伝えられようか。自分を追い出したパーティーが、慕っていた養母を助けたのだと。
救出は悪いことではない。だが、助けた相手が相手だ。
姫にとっては、知れば複雑以上の感情を生み出してしまうだろう。
八つ時を終えてから、俺は執務室にマックスやシュラ達を伴って戻ってきた。
「……最悪とは言い難てーが、なんでまたホムラにいるんだか」
シュラから、改めてホムラでの出来事を伝えらると、マックスが開口一番に不機嫌さを増した。
「しばらくはリュシアに居たって、ミュファン達から伝達はあったが。どーゆーわけかホムラに移動したのか。だから、あいつらからの連絡もなし。納得したぜ」
「パーティー『
「そのチーちゃんの今の能力は?」
「生産技術のみならず、魔法師の能力も開花出来た。間違いなく、君と同等なんだぞ」
「なのに、記憶が戻る以前はペーペー……あの神達の仕業にしたって、カイルが見つけなきゃチーちゃんのたれ死んてたぞ?」
「……そこも、計画通りだとしたら?」
「「「レクター?」」」
考えに煮詰まっていると、レクターが割り込んできた。
「カイルが見つけること。それに加えて、怪我確定で、記憶を無理に呼び戻させたから条件が揃った。だから、安心してもともとあった
いつも、ここまで考察出来たら神からの邪魔が入るのだが、今回はなかった。
おそらく、ホムラでの襲撃事件を俺達が知っているからなのと。あと半月で、姫の生誕祭などの式典が迫っているからだろう。
「だとしたら……すっげー遠回りじゃねぇか? 俺とチーちゃんの世界での空想物語だと。赤ん坊の頃から能力を開花させるのがセオリーだぜ? 俺だってそうだろ?」
「「「たしかに」」」
こいつの場合、わずか一年程度で言葉を話せたしな?
父君にもだが、母君にも大層驚かれてしまい。一部のメイド達は喜んだりなど。が、元が女だと知られたら面白がられたりもした。
だが、
転生者のくくりでまとめれば、たしかにその通りだが。姫の場合は、俺が見つけたあの事故の時だった。それまでは、家政婦まがいの雑用係しか出来なかったらしい。
最高神は、彼女にいったい何をさせたいのだろうか。
レクターの考察が合っていれば、この国のためを思ってか。
わからない。わからないだらけだ。なぜなら、それはこの国にとって都合が良過ぎてしまうからだ。
「……ひとまず、シュラ」
「なんだい?」
「マザーは今後どうなるのだ?」
「うーん。孤児院は完全に崩壊したわけじゃないし、アシュリン達はマンシェリーのことを考えて一度会わせようとはしてるらしいけど」
「……まだ時期ではないな」
「だろう? とりあえずは、シュリ城に『永遠の風』達と一緒に匿っているそうなんだ」
「彼らも?」
「……マザーが、マンシェリーを追い出した事情を聞いたら再教育したいとかで」
「「「…………」」」
俺達も直接、姫からどう追い出されたかは詳しく聞いていないが。養母が怒るくらいだから、カイザーク殿の指示があったとしても。その彼女が怒るくらいなのだとしたら、言い方などが悪かったのだろう。
だから、俺達も同情はしないと決めた。
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