111-3.楽しみで仕方ない(ユリアネス視点)
*・*・*(ユリアネス視点)
あれで、よかったのかしら?
「……本当に、あれでよかったの? フィルド」
「いいよ。まさか、フィーの記憶にまで侵入するとは思わなかったけどね?」
毎回毎回私達神が選んではいたのだが、今回は違った。
姫の赴くままに、と思ったら。古い古い記憶に潜り込んでしまった。
私達の孫の一人でもあり、
シアがいつまで経っても、
主神の自覚を得るまで、随分と私達の側にいたけれど。今は孫の一人であるクロノソティスによく似た面立ちになり、結構自由奔放な性格になってしまってはいるが。
「……そう、ね。フィーにはサフィーナがシアのことを告げたらしいわ。連絡はあって?」
「んーん? ないねー?」
「じゃあ、私達が今この姿でいることも」
「フィーは知らないと思うよ?」
あの子はあの子で、私達は私達で。
世界のために動いていることに変わりない。それは他の孫達も同じではあるが。
「しっかし、ドライカレーかぁ? 半熟目玉焼き載せって、俺テンション上がるよ! 早く明日にならないかなー?」
「なー?」
まったく、シアもだけどフィルドまで子供のように。けれど、あれだけ手間の込んだカレーが食べられるとなると、私もはしゃぎたくはなるわ。
「フィルド、あの子には明日何を持って行くの?」
「んーと。これ!」
術で顕現させたのは、少し黄色かかった液体がなみなみと入った透明なケースだった。味見をすると、豆特有の風味と味わい。
「豆乳?」
「大豆でもいいかもしれないけど。ヌーガスの故郷じゃ多分作っているかどうか怪しいと思うからね? これでパスタとかスープとか美味しいよね〜?」
「飲み物としてもいいわねー?」
蒼の世界のレイのところでも重宝されているらしい。それを姫が知らないわけがないので、パン作りや他の料理に使えたらとても便利だと思うわ。
「ねーね、のおいちいりょーり?」
ついさっきまで寝てたシアは、姫の料理に興味津々でヨダレまで垂らしてたのでハンカチで拭いてあげた。
「いい子でいるのよ? 明日のご飯は口とか服を汚しちゃうから」
「あーい!」
とにかく、姫の料理を食べたくて仕方なくて元気いっぱいね?
多分だけど、明日食べる予定でいるドライカレーは子供にも食べやすい辛さらしいから、シアでも大丈夫だとは思うわ。
(それに、あのカイルキアもなかなか大胆になったわねぇ……?)
いずれ結ばれることは理解してても、頭と体が追い付かずに姫に抱きつきに行くだなんて。無表情に見えて、姫のためならと熱い一面も持っているのだわ。
ちょっと青いわねぇ? と思いながら、水鏡で姫達の様子を見ることにした。
「……
惚れている、マックスの契約精霊はどう受け止めるのだろうか?
真実を告げて、諦めさせるか?
けれど、それはよくないだろうと思いながら、私は水鏡に映っている景色をそっと撫でて閉じさせるのだった。
「……移り変わり、もあると言うもの」
姫が、あのAI精霊と思い込んでいるロティと名付けた存在。
あれの大元が、実は……とわかれば、どんな処置を下すのか。私も多少予想は出来ても、楽しみで仕方なかった。
「ふふ。明日はどれだけ食べてしまいそうかしら?」
とりあえず、目先の目的を優先することにして。シアを真ん中にしてフィルドとは川の字で眠ることにしたのだった。
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