101-1.自信が持てない
*・*・*
お米の炊き方についてはうまく行き。
おにぎりパーティーも成功に終わったので、少しゆっくりしてからお屋敷には戻ったのだが。
今日はある意味お休みだから、何もすることがなく、ちょっとゆっくりするのに菜園に行ってロティと米の田園スペースの端でぼーっとすることにした。
エピアちゃんやラスティさんにはちゃんと許可を取っています。
「平和だね……」
『でっふ、でっふ!』
「のんびりだね〜……」
『ご主人様ぁ、眠いでふ?』
「う〜〜ん、ちょっと」
ここ最近はスケジュール的に色々立てこんでいたのもあってか。
今みたいにのんびりしてると、少し眠くなってきたかもしれない。
けど、頭を冷やすには眠るわけにもいかない。
「皆さん、応援してくれるけど……」
カイルキア様を想う心。
それを諦めちゃいけないと、今日リンお兄ちゃんにもだけど、シュライゼン様にも告げられた。
身分差など気にせずに、相手を想う心は大事だからと励まされ。
勇気を持つんだとも、告げられたにしても。
臆病な私の心は、未だに自信を持てないでいる。
いくら、カイルキア様に気にかけられてたとしても、それはただ使用人だから気にかけられてるんじゃないかって。
パン作りや料理はともかくとして。
自分自身の、ある意味将来的なことについては、この世界に生まれ落ちても、その前も異様に消極的だ。
なんでこんなにも……と思い当たるのは、役に立つところと立たないところの差が大きいから。
料理はともかく、他は何も役に立たないから。
容姿とかは置いておくにしても、本当に役に立たないから。
あのパーティーにいた頃も、前世で働いてたパン屋でもそう。
仕事以外、役に立たなかったから。
『何を辛気くさい顔をしておるのじゃ?』
「え?」
『でっふぅ、
『息災か、ロティ?』
『でっふ、でふぅう!』
少し落ち込んだ顔を覗き込むように現れたのは、数日ぶりにお会いするウルクル様だった。
相変わらずの幼女姿ではあるが、妖艶な美しさは健在。
私の顔を覗き込んでから、ペチペチとほっぺを叩かれた。
『主らしくもない。何かあったのかえ?』
「え、えっと……」
『ご主人様ぁ、あの怖いおにーしゃんをしゅきな気持ち、諦めようとしてるんでふ』
「ろ、ロティ!」
『ほう。あのカイルキアにか?』
ウルクル様はご自分のほっぺに手を当てられると、にんまりと笑顔になられた。
「う、ウルクル様?」
なんか良い予感がしない。
『良き眼を持っておるの? 妾のラスティとは別ではあるが、あれも見目以外に魅力を感じるヒトが多数いる。チャロナ、目の付け所があるのぉ?』
「ほえ?」
『あれは公爵になったにも関わらず、細君となる女を見定めてはいない。主なら、容易くその座に行けれるが』
「さ、細君?」
『妻となる女のことよ。主なら必要以上に気に入られている故に可能であろうが』
「な、ななな、ないですないです!!」
『ん?』
『でっふ。ご主人様、ずっとこうなんでふ』
『ほう?』
気にかけられているとは言え、いきなり奥さんになるとかなんてあり得ない!
まだ好きだとも伝えていないし、カイルキア様がどう思っているのかも知らない状態。
なのに、神様までもが、大丈夫と言ってくれる展開。
本当に、カイルキア様を想うだけでなく、告げてもいいのだろうか。
振られたり、しないのだろうか?
「た、ただの孤児がお貴族様とだなんて!」
『しかし、主以外にもこの国の先代王妃や過去の王妃にも孤児だったものはおる。強固派とも呼ばれておる阿呆共のようにならずとも良い。我らが最高神はむしろ、当人の気持ちを優先して祝福なさるのだよ』
「さ、最高……しん様?」
『応。妾よりもさらに高位の神。祝福の名を与えられる神じゃ』
「祝福?」
『この国の場合、王族や一部の貴族に与える洗礼名のようなものじゃ。カイルキアにもあるようにの』
「ほえー」
どの部分かと思えば、どうやらミドルネームにあたる部分らしい。
つまり、カイルキア様の場合、『ディス』。
不思議なお名前だと思ってはいたけれど、あれが洗礼名。
それはともかくとして、そんな素敵なお名前をお与えになられる最高神様が、私を祝福されるだなんて到底思えないのだけれど。
『ふむ。不安そうな顔じゃな?』
「う。他国の人間ですけど、孤児とお貴族様が……と言うのはどうも抵抗がありまして」
『ほう。主が導いたマックスとエイマーとて似ておるではないか?』
「あ、あのおふたりは、きちんとお互いを想いあっていたもので!」
『であれば。カイルキアが主を想わぬと思うておるのか?』
「か、カイル様が、私を?」
『いくら使用人であれど。気にもかけぬ奴に触れる輩ではないぞ?』
「い、色んな人にも言われました……」
『ほれみい。周りは知っておるのじゃよ』
「けど……」
『なんじゃ?』
「皆さんに言われても、私じゃ釣り合わないと思うんです」
お世辞抜きに、と告げられても自分が可愛くて綺麗だと到底思えず。
大丈夫大丈夫と背中を押されても、あまり自信が持てない。
だから、胸に秘めたままにしておこうかと思っているのに。
大丈夫、だと。
『ふむ。釣り合わないのは、主自身が魅力のないヒトだと思うからか?』
「可愛くも綺麗でもないですし、料理は
『ご主人様は綺麗綺麗でふぅううううう!!!!』
「ぐ、ぐぐぐ、ぐるじい!!」
『うむ。ロティの言うように、主は可愛らしいと思うぞえ?』
「え?」
『それに、異能は我ら神からの贈り物。大事に扱ってくれる主はそれだけでも魅力があるぞ?』
「え?」
少し、信じられなかった。
神様にも認めてもらえる顔立ちでいるだなんて。
それに、
思いもよらなかった。
だって、毎日鏡を見ても平凡顔だって思ってるから。
『少しばかり自信を持つのじゃ。彼奴を想う心を諦める必要はどこにもない。背を押してくれる輩がおるのなら、少しばかり信じよ』
「いいん、でしょうか?」
『逆に、あれから何か告げられたのかえ?』
『にゅ。ご主人様、デートにしゃしょわれたでふぅ!』
『ほう。逢引きとな?』
「と、遠出をしないかと……」
『ほれみい。立派に気にかけられておるではないか。その時に告げよとまでは言わぬが。彼奴をもっと知れば良い』
「は、はい……」
たしかにデートには誘われはしたけれど。
悠花さんか、レクター先生とかの提案だろうし。
けど、カイルキア様もどうだとは言ってたし。
少しばかり、自惚れてもいいのだろうか?
『うむうむ。ところで、こんなところで何をしておったのじゃ?』
『おやしゅみでふ〜』
「お米の炊き方を、街で教えてたので。他はお休みをいただきました」
『そうかそうか。以前のテリヤキも美味だったからのぉ』
「あ、今度カレー作るんだった……」
『カレーとな?』
『ピリッとかりゃい、美味しいご飯でふぅうううう!!』
『ほう』
「悠花さん、マックスさんに頼まれてて」
『いつ作るのじゃ?』
「そうですね。三日後の定例会のあとくらいに……」
『妾も食したい!』
「わ、わかりました」
明日に作っていいかもしれないけど。
せっかくだから、ユリアさんやフィルドさん達が来る日に合わせたい。
恋事情については解決はしてないけど。
ちょっぴりの自信を持って、そこからはウルクル様にお米の料理について色々話すのだった。
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