99-2.錬金術を学ぶ②


 可能性の有無として、考えられるのはロティのことだけど。それが普通の錬金術と何が関係があるのだろうか?



『契約精霊には、マスターとして認めた人間に様々な効能を示すでやんすよ』



 そこから、レイ君をメインに契約精霊講座が始まったのだった。



『昨日の、ロティがチャロナはんマスターの気持ちを感知したのも同様に。契約精霊は契約主の感情に敏感。あとは、魔力を増幅するとかバランスを保つとか様々でやんすが……』


「つまりは、チャロナの場合。魔力のコントロールがうまくいってなかったのを、得た異能ギフト以外にロティが補ってるっつーわけか?」


『特に、ロティは通常の魔力溜まりにいた俺っちのような奴とも違うでやんすからね? けど、間違ってないと思うでやんすよ』


『でふ?』



 ロティは自分が注目されていても、よくわかっていないのか、私の肩の上でこてんと首を傾げているだけ。


 ナビレベルは上がってきても、まだまだ赤ちゃん精霊なためか。時々分からないことがあるとこんな風になるのだ。


 けど、一応確認は取ろう。



「ねえ、ロティ」


『あいでふ』


「ロティが私の魔力コントロールしてくれてるの?」


『にゅ。違うでふ。余剰魔力も含めて、魔力の根源はご主人様のものでふ!』


「そう。じゃあ、私が急に魔法使えたり、今日みたいに錬金術を使えたりしたのは?」


『ご主人様の魔力が……フィーのおにーしゃん達が言うように、安定したからだと思うでふ。それがロティのせいなのかは、まだナビレベルが足りにゃいのでわからないでふ』


「そっか。だそうです」


「難しいもんだなあ?」


「けど、錬金術師で契約精霊持ちっていうのも少ないんだよね〜?」



 カレリアさんがそう言うと、私達の近くに来てロティの頭を撫でてくれました。



「しかも、異能ギフト持ちであんなにも美味しいパンを作れるんだもの。普通以上にすごいわ〜」


「お前さんの場合、料理だけ・・不器用だもんな?」


「う……こればっかりは向き不向きだもーん」


「けど、多少は頑張れよ? 将来の伯爵夫人?」


「はぁ〜い」



 幸せそうな空気。


 少し羨ましくもあるが、それはこのおふたりが自分達で進んだ道だから。


 悠花ゆうかさんは馬車の中でああ言ってくれたけど、私にはカイルキア様と結ばれるだなんて、やっぱりあり得ないだろう。


 昨日、アイリーン様やシャル様に何か言われた気がしたが、よくは思い出せない。


 そもそも、なんでおめかししてカイルキア様を散歩に誘ったんだっけ?


 よく思い出せないや。



「そう言えば〜、チャロナちゃんの方はどうなのー?」


「へ?」



 考え事をしてたら、カレリアさんに話題を振られたのだった。



「カイルさんとの事だよー。あれから進歩あったー?」


「え、え、あの」


「ところがどっこい。ぜーんぜんなのよね〜?」


「ゆ、悠花さん!」


「んだよ。嬢ちゃんくれぇ可愛い子になら、カイルの奴1発で落とせるんじゃね?」


「ふ、フィーガスさん!」



 昨日あれだけ皆さんに、可愛い綺麗と言われても。


 化粧を落とした私の顔は相変わらず平凡そのもの。


 なのに、何故皆さんはこんなにも後押ししてくださるのだろうか?


 肩の上のロティもえっへんと胸を張っていたし。



『ご主人様はいっつも綺麗綺麗でふ。あの怖いおにーしゃんの事、大大大大大しゅきでふもん!』


「ろ、ロティ!」


「ほぅ。契約精霊にまで認めてもらってんなら、あとはぐいぐいいけや。押して押して押しまくれ!」


「な、なんで!」


「氷の守護者の胃袋掴んでんなら、あともうちょいだろ?」


「うう〜〜〜〜!」



 レクター先生以外の、元パーティーのメンバーが集まっているので、カイルキア様のことは熟知されている。


 けれど、私の気持ちを伝えても本当に大丈夫なのだろうか?


 迷惑……じゃない?



「まーまー。チーちゃんにプレッシャー与えるのはこれくらいにして。カレリア、他の錬金術でこの子に教えれることはなーい?」


「そうだね〜。あ、ポーションの受注とかが多めに頼まれてるんだ。それ手伝ってもらおうかなあ?」


「わ、わかり、ました」



 とりあえず、尋問が終わってほっとしたが。


 その後に、中級ポーション、ハイレアポーション作りも何故かうまくいってしまい。


 カレリアさんには、自分以上の才能があるかもしれないとまで言われてしまった。



「私、あんまり教えることなかったよ〜」


「そ、そんなことないです!」


「チーちゃん生産向きには、ほんとなんでもチートよねぇ? あ、魔法でもか? 爵位も正式じゃないけど、男爵くらいはあるしカイルの後ろ盾もあるし」


「それなら、カイルさんにアタックしなきゃ!」


「ふぇえええええ!」



 とにかく、錬金術も問題なく使えることがわかり。


 休憩がてら、収納棚に入れておいたプリンアラモードを人数分取り出して、楽しくお茶会をしようとした。


 が、一個だけ忘れることがあったので、悠花さんに前にもらった素材を収納棚から出した。



「これ……なんですけど」


「あれー、黒銀のブロック。どうしたのー?」


「あたしがついこの間、討伐依頼受けてもらったのよ。あたしはいいから、これでチーちゃんの武器作ってあげてよ?」


「わかったよ〜。けど、ねーさん。チャロナちゃんの武器ってメイス? 棍棒? どんなのがいいの?」


「そうね〜。魔法はともかく、体術は習わせていないし……ステッキ込みのメイスでいいんじゃないかしら?」


「あ、それいいね〜。デザインも考えておくから、二週間くらいはかかるよー?」


「お、お願いします……」



 錬金術が使えるようにはなっても、いきなりそんな高度な技術は扱えないので。


 完全にカレリアさんにお任せになった。


 代金は、材料持ち込みとお土産のプリンがあるからいいんだって。


 感謝感謝だ!

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