98-2.オムライスのその後
*・*・*
オムライスは、皆さんに大好評で幕を閉じた。
シュライゼン様やカイルキア様もあれから三杯もおかわりしてくださったし。
私も二杯でお腹いっぱいになったから大満足。
そして、今日のゲストだったサリーちゃんやそのお父さんであるギフラさんも。
サリーちゃんは、お腹いっぱいになってから前回のジャムパンの時と同じように寝てしまったが。
「うにゃむにゃ……むー」
「挨拶もせずに寝てしまうとは……すまない」
「いいえー。ご飯を喜んで食べていただけただけで充分です」
「本当に美味しかった。ありがとう」
「こちらこそ、たくさん召し上がってくださりありがとうございました」
「ああ」
と、ギフラさんとやり取りしてから。もう遅いので二人はこのお屋敷にお泊まりと言うことになり。
サリーちゃんはお母さんのメイミーさんに抱っこされて、上の階に行ってしまう。ギフラさんも後を追うように、私に一礼してからついていった。
「うむ。あれがあそこまで礼を尽くすのは久々に見るんだぞ」
「シュライゼン様」
シュライゼン様は転移が使えるので、この後はお帰りになられるらしいが、私の隣に立つとぽんぽんと頭を撫でてくださった。
「今日は色々ありがとうなんだぞ。パンケーキもだけど、オムライスはとっても美味しかった。シャルも喜んでいたし」
「お褒めの言葉ありがとうございます」
「うむ。ところで、アイスのレシピ……ちょっと教えて欲しいんだぞ。爺やと父上にも食べさせてやりたくてね?」
「わかりました、あとでロティに頼んで
「うむ! また明後日にリュシアで会うんだぞ」
「はい」
リンお兄ちゃんへの魔法鳥での伝達は
厨房に戻って、ロティに頼んで
「あらまあ、可愛らしいレシピですが……あら、この紙は?」
「チャロナとロティにしか作れない特殊な紙なんだぞ」
『でっふ!』
「ですと、国宝級ですわね」
「そ、そうなりますかね?」
つい先日作ったレシピ本の方もだけど、コピー用紙もないこの世界の印刷技術を思えば、この紙一枚だけでも異質だろうから。
「チャロナさん、気をつけていらっしゃるとお思いですが。貴女の
「は、はい」
シャル様はレシピの紙をシュライゼン様に渡してから、そう言いつつ私の両手を掴んでぎゅっと握ってきました。
柔らかい手にドキドキはしたけど、いただいた忠告はしっかり受け止めようと頷く。
すると、シャル様はにっこり笑顔になられて、シュライゼン様の転移で帰られてしまった。
「チャロナお姉様!」
見送ったら、今度はアイリーン様が私の腰に抱きついてきた。
「リーン様?」
「わたくしもアイスクリームのレシピが知りとうございますわ! 両親に振る舞って差し上げたいのです」
「わ……かりました」
「父上は既に食べているが、母上にはいいな。相変わらず食欲が落ちているのか」
「カイル様」
「そうなんですの、お兄様!」
さりげなく私の髪をぽんぽんされてから、アイリーン様を引き剥がすのに隣に立たれたカイルキア様。
が、なかなか剥がれないアイリーン様に少しムッとされたのか美形兄妹にサンドイッチされてしまう私とロティ。
昼間の衝突キスを思い出しちゃうくらいドキドキがやばかった!
「離れろ、リーン」
「良いではないですか。お兄様と違って同性ですもの。スキンシップは大事ですわ」
「限度を考えろ」
「まあ、お兄様。嫉妬ですの?」
「違う」
「あ、ああああ、あの、大丈夫ですから!」
『でっふ、でふぅ!』
アイリーン様のマシュマロのようなお胸の感触もだが、カイルキア様の吐息がダイレクトに髪にかかるのも耐えられぬ!
止めるために、恐る恐る、カイルキア様の腕を触ったが筋肉すっごい。ガッチガチだ!
「む。妹がすまない」
「い、いいいいいえ!」
「お姉様、どもり過ぎですわよ?」
「リーン様!」
「話を戻すが、母上はまた食欲が落ちているのか?」
「はい。夏は相変わらず」
「えっと……リーン様の祝賀会の時に、一度お会いしたあの方ですか?」
「ああ」
アイリーン様によく似てて、カイルキア様とアイリーン様と同じスミレ色の髪の持ち主。
とってもとってもお綺麗な人だなと思いました。
挨拶も、使用人の私なのに今日のギフラさんのように丁寧で。
『あら、可愛らしい新人ちゃんなのね? はじめまして、愚息の母よ。エディフィアと言うの』
『ちゃ、チャロナ=マンシェリーです。お初にお目にかかります、大奥様!』
『ふふ。よろしくね?』
とても朗らかな女性だと言う印象を持ったが、どうやら夏バテがひどいらしく、毎年ぐったりされてしまうんだそうだ。
なので、たくさんはダメでも少しだけならアイスクリームを召し上がれるんじゃないかと。
たしかに、それは大変だ。
「一度作り方を見ていらっしゃるので、分量だけわかれば大丈夫ですよね?」
「お願いしますわ!」
「……
「はい。ロティ!」
『でっふ!〜〜〜〜んんぅううう、
ロティが宙に浮いて、両手を大きく開いてから叫んだ直後。
いつものように、細い光の線から紙が二枚出てきたのだった。
「お待たせしました。こちらです」
「まあまあ! 本当に不思議な手触りですわ!」
「このアイスで大丈夫でしょうか?」
「お母様はお兄様以上に甘い物が大好きですの。きっと大丈夫ですわ!」
「わかりました」
甘い物好きは遺伝なのかな?
もしくは、フィーガスさんの悪戯がきっかけでより一層好きになってしまったのか。
ともかく、アイリーン様は最後にレクター先生のほっぺにキスをしてから転移で帰られてしまった。
「……人前はやめてって言ったのに」
「と言いつつ、喜んでんじゃねーか?」
「まあ、嬉しくないわけじゃないけど」
ラブラブはいいなあ……。
いいなあとは思うけど、私はカイルキア様と本当にそうなれるのか色々怪しいし。
嫌われてはいないけど、好かれてはいるのだろうか?
でも、嫌いだと頭撫でられないよね?
「さて、片付けをあらかたしてからチャロナくん達は先に休むといい。明日はフィーガス殿のところに行くのだろう?」
「あ、ありがとうございます」
「今日も一日疲れただろう。明日と明後日は休み扱いで朝はゆっくりしなさい」
「ありがとうございます、シェトラスさん」
そうだ。
明日はいよいよ錬金術を学びに行く日。
記憶が戻る以前まであった適性の
ちゃんと出来るようになってるのか、確かめなくちゃ!
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