89-1.さっと煮るだけ鯖の味噌煮
*・*・*
いよいよ鯖の味噌煮のお披露目だ。
と言っても、そんなに時間もかからないから、皆さんで大量にお米を洗ってから、ボウルでつけ置きをすることに。
お米は30分から一時間つけ置きするだけで、ふっくら加減が違うもの。
『いや〜、マスターもでやんすけど。コメがあんなにも美味いとは思わなかったでやんすよ〜』
レイ君は片付けをしながら、昨日と一昨日のお米の味が気に入ったのかるんるんしつつもお皿とかを片付けてくれた。
「私は冒険者の時以外だと、育った国でしか食べてないか他はなかったかなあ?」
『俺っちも、ホムラと黒蓮くらいっすね』
「コクレン?」
『ホムラのさらに奥地の、山あいの国でやんすね。農耕が発達してやしたが、コメはチャロナはんやマスターの方が段違いに美味かったでやんす』
「そうなんだー」
私も、育ててくれたマザー達の腕前は……正直言って悪かったと思う。
と思うのも、今なら【枯渇の悪食】の影響で間違った方法で伝わっていたから。
一部の料理は美味しかったけど、主食が美味しくないのは、ほとんどが悪食による間違った伝来のせいがあるもの。
私や
多分だけど、今の世界でも一部しか食の改善が成功されていない。
このお屋敷については、カイルキア様のおばあ様が成功させたらしいが、一体どんな方だろう?
まさか、私達のように転生者じゃないだろうか?
けど、リーン様やカイルキア様は特に何もおっしゃっていなかったし。
『だもんで、昨日のチャンチャン焼きもでやんすけど。今日のミソ煮言うのも楽しみでやんす〜』
「ありがとう、頑張るね?」
気にし過ぎてはいけないけど、今は料理にも集中しなくちゃ。
と言っても、材料の下ごしらえもそこまで難しくないんだよね……。
「皮をこそげとってから、スライスにした生姜。これとお酒があれば、魚の臭みを取ってくれてかつ旨味にもなります」
「ショーガの使い方にそのような。ショーガ湯くらいしか使ってなかったけれど」
「場合によってはお菓子にも使えます」
「「ほーお?」」
ジンジャーエール、ジンジャークッキーとか色々あるけれど。
今回は料理だから、その方法はまた別の機会に。
「一部は仕上げと香り付けにも兼ねて、皮を剥いたのを針生姜にします」
そして、メインの鯖の切り身は。冷凍食材として売られてるようなフィレと言う半身のサイズを使用する。
せっかくたくさん仕入れたし、大量に使ってこその食材。贅沢は言ってなんぼです。
『
ここいらで、ロティには炊飯器に変身してもらい。つけておいた米を無限∞収納棚並みのお釜に入れて炊いてもらう。
この大容量だけは、最初からセッティングされてたので、いくらでも炊けちゃう。けど、お釜から盛る時の量はいくらすくっても一升炊きくらいなんだけど。
「まず、水、酒、砂糖、醤油、味噌、生姜を入れたフライパンを沸騰させて」
本当はみりんも欲しかったけど、砂糖と水の分量で調整すれば大丈夫なので代用。
煮汁が沸いたら、鯖を入れて。クッキングシートを落とし蓋に加工したものを載せて、中弱火にして10-15分煮ます。
「ずいぶんと簡単なんだね、チャロナくん?」
「お湯をかけたりする『霜降り』の工程をやらずとも失敗しない方法なんです。私の前世での祖母が教えてくれました」
「「なるほど」」
「とりあえず、手分けして取り掛かりましょう」
昨日も使った伸縮性のあるコンロを数台取り出して、レイ君も頑張って調理していくと。
全員分が出来た頃に、ユリアさん達がやって来た。
「お邪魔するわー」
「ヤッホー!」
「ひゃー、いい匂いなの!」
「いらっしゃいませ!」
食堂側に向かうと、またフィルドさんが何かの瓶を抱えていた。
一緒に来てたレイ君に渡すと、少し重いのか一生懸命抱えてだけど。
「今度はみりんだよ?」
「え」
「ふふ。今日の煮物にも使いたかったようだけど、大丈夫そうみたいね?」
「え、ええ」
あると風味がまた違うけれど、なかったものはどうしようもない。
だから、次の機会にまた腕を振るうしかないだろう。
とりあえず、出来上がった鯖味噌定食を皆さんと一緒に食べる事になった。
「わー、おしゃかな!」
シアちゃんは少し興奮した様子で、テーブルに置かれていく料理を目にするとキラキラと顔を輝かせた。
定食の内容は、ご飯、鯖味噌、レモン汁ベースのさっぱりサラダ、野菜たっぷりのコンソメスープ。
昆布とかが有れば、おすましを作りたかったけど。まだシュライゼン様に頼んだばかりだから無理もない。
けど、きっと美味しいと思う。
「まあ。この少し黒っぽいのがミソ?」
「あと。厩舎の方から分けていただいた醤油に、この間いただいたお酒も使ってます」
「へー。楽しみ!」
「どうぞ、お召し上がりください」
「「いっただきまーす!」」
「いただくわ」
そうして、ロティも一時的に元の姿に戻ったので、一緒に食べることになりました。
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