76-3.第二回お菓子教室、ココア蒸しパン






 *・*・*









 今回の差し入れも無事に喜んでもらえたところで。


 次は、前回も使わせてもらった調理場で第2回お菓子作り教室。


 今回の調理補助にも、リーン様、悠花ゆうかさん以外にリンお兄ちゃん達も一緒。あと、ミュファンさんもだけれど……なんで修道服を着てらっしゃるんだろう?


 いや、似合ってなくもないんだけど。


 目を合わせても、お得意の微笑みにドキッとさせられただけ。


 けれど、今は私が注目の的になってるから余所見は出来ない。



「これから作るのは、前回の鬼まんじゅうと似た作り方で『蒸しパン』と言うものを作ります。今回はパンでも、お菓子なので」


「はい! それってほんとーにパンなんですか?」


「いい質問ですね」



 挙手してくれたのは、たしか水色の髪の女の子、ケーミィちゃんと一緒に食べてた男の子。


 赤茶の髪が特徴的の、見るからにやんちゃ君な感じの子だった。



「いきなり、皆さんにパン作り……となるとかなり難しいので。色々挑戦しながら、順番に頑張っていきましょう!」


「いきなりは、難しいんですか?」


「そうですね。いきなりやると、食べにくいものが出来上がってしまうと思うよ?」


『ええー』



 前世の子供向けの料理教室とは違うのが、今はロティに頼ってるミキシング用の機材がない事。


 ホームベーカリーのような機械もないのもある。


 手ごねだと、子供にはかなり負担がかかるし。分割や簡易的な成形も同じ。


 いきなり、何も出来ない状態からのスタートもよくないし。いくら希望を出してくれても、そう簡単にはうまくいかない。


 だから、教えるにしても順を追わないといけないから。


 それに、カイルキア様からまだ教えていいのかも、許可をいただいてないのもあった。



「なので、今日は『蒸しパン』と言う甘いお菓子を作ります。今日は包丁も使うので、気をつけてくださいね?」


『ハ━━━ヾ(。´囗`)ノ━━━イ』


「皆様、頑張りますわよ!」


『はーい、アイリーン様!』



 リーン様もやる気十分なようだ。


 今日は、早めに来て一度実践してあるので。


 全体的に説明するのじゃなく、レシピを見て作っていこうと言う趣旨になっている。


 だから、指導する人達が各グループに一人ずつ付いて、アドバイスしていくことになった。


 私は、さっきの質問してくれた男の子やケーミィちゃんがいる卓の担当になりました。



「え、えーと……チョコを細かく砕いて、ボウルに入れる?」


「粉とかは、全部ボウルに入れて混ぜる?」


「あの、これだけでいいんですか?」


「うん。とりあえず、チョコを刻むのは誰がやるのかな?」


「お、俺やってみる!」



 挙手したのは、赤茶の髪の男の子でクラット君と言うらしい。


 好奇心旺盛で、結構チャレンジ精神が強い子みたい。


 ピザパンを食べる時も、自信を持って挑戦してくれたし。


 ただ、刻むのがなかなか難しいのかざく切り状態になっちゃったので。



「もう少し細かい方がいいかな? ちょっと、包丁貸してくれる?」


「あ、はい」


「火を通す事で溶けなくはないんだけど、生地にうまく混ざるのはやっぱり細かい方がいいの。これをこうして」


「「「おお!?」」」



 ただみじん切りにしてるだけだけど、ちょっと早いせいか子供達にはびっくりしたようだ。


 慣れちゃえば大したことのない技術でも、初めて経験する子には新鮮だったみたい。



「さ、これを一緒にボウルに入れてくれる?」


「「「はーい」」」


「えっと……手じゃ大変だから……チャロナお姉さん、これ包丁を使って入れた方がいいんですか?」


「ええ。怪我だけは注意してね?」



 ケーミィちゃんは、普段からマザー達を手伝っているのか手際がいい。


 もう一人の女の子、ターニャちゃんはまだぎこちないけど木べらでボウルの中身を一生懸命に混ぜている。



「次はー、牛乳と油を混ぜろって」


「あ。注意だって。あんまり混ぜちゃダメみたい」


「お姉さん、どれくらいになればいいんですか?」


「そうね。混ぜていくと粉が固まるように見えるけど。それがだいたいなくなれば大丈夫だわ」


「「「はーい」」」



 そして、協力して混ぜた生地を。


 ケーミィちゃんが、コンロに火をつけてフライパンでお湯を沸かしてる間に。


 ターニャちゃんが、カップ型に薄い紙の型を入れて。


 クラット君が、スプーンで慎重に生地を流し込んで。


 準備が出来たら、簡易蒸し器に型を並べて蒸す!



「さ、この時間にお片付けよ?」


「「「はーい」」」



 この間に、少し離れる事を伝えてから他のグループを見ていくと。


 大きな怪我はないようだが、皆うまくいってるみたい。


 少し心配だった、リーン様のグループもちょうど蒸すところまで出来ていた。



「さあ、お片付けですわよ!」


「「「はーい!」」」



 リーン様が担当してるグループの子達も、嫌な顔一つせずに出来上がりを楽しみにしてるようだ。


 ちなみに、タイマーはここで召喚するわけにもいかないので、部屋の中央にある壁掛け時計で時間を計るように伝えてあります。



「「「「うっわ〜〜〜〜、チョコのいい匂い!」」」」



 だいたい10分経過したくらいで、子供達の大半が声を上げるくらい、部屋にはチョコの匂いが充満していた。


 ちょっとむせるくらいだけど、甘いものに目がない子供達には嬉しい匂いでしかなかったみたい。


 そうしてもう少し待ったら。


 竹串を用意して、私が卓に戻るとケーミィちゃんが代表して火の通り具合を確かめることに。



「い、いきます」



 布で包んだ蓋を、ターニャちゃんがゆっくり上げて。


 ほぼ蒸し上がってる、蒸しパンにこれまたゆっくりとケーミィちゃんが竹串を入れて。


 ちょっとしてから持ち上げると、竹串には何もくっついてなかった。



「お、出来た?」


「うん。これでいいはずだと思う」


「うん、大丈夫。ここでミトンを使って、フライパンから出してね?」


「「「はーい」」」



 クラット君がフライパンから出して。


 卓に置いた型を、女の子二人がミトンを使って取り出してお皿に乗せて。


 見た目は少し岩みたいに不恰好だけど、私には予想通りに出来上がっているココア蒸しパンの完成だ!



「「「出来た!」」」


「ほんとだ、パンみたい!」


「「早く食べたーい!」」


「けど、熱いけど食べれるのかな?」


「そうですね、お姉さんに聞いてみましょうか? チャロナさーん?」


「はーい。熱いと火傷しちゃうかもしれないので、全部お片付けしてから食べましょう」


『ハ━━━ヾ(。´囗`)ノ━━━イ』



 ミュファンさんからの質問があったので、少し大声で部屋に響かせてから、全員でお片付けをして。


 指導した人も、そのグループで出来たものを一つ食べることになり。


 飲み物は、マザーの皆さんにお願いして、アイスミルクを用意してもらった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る