72-2.試練を打破したい(アインズバック視点)
*・*・*(アインズバック視点)
今日もまた、マンシェリーが元気でやっているか考えてしまっていたが。
さあ、風呂に入ろうかと決めた矢先に。
バカ息子から、珍しく真剣な表情で話があると言われたので部屋に通したんだが。
いったい、 何があった?
「なんだ、話と言うのは?」
「まずなんだが、これを見て欲しいんだぞ!」
「その紙?は」
書簡に使われてるのとも、また違う大きめの紙。
何か、コーティングでもしてるのかツルツルしててなめらかな手触りのように見える。
受け取ると、その予感は当たっていたが。
「……なんだ、これは」
書かれていたのがとんでもない代物だった!
◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯
【
《所有者》チャロナ=マンシェリー(16)
《レベル》31(次までは、残り4302575PT)
《ナビレベル》3(次までは、残り245125PT》
[スタミナ]満タン(200/200)
《
・無限∞収納棚
・ナビ
→ホイッパー三種
→ミキサー機能(ジューサー他)New
→トースター
→オーブンに発酵機能・奥行き拡張
→
→揚げ物フライヤー
→フードプロセッサーNew
・
・タイマーセット同時機能(レベル10)
・複合(レベル6)
★
《特典》
・レシピ集データノート
【レシピ】
〈バターロール〉〈コカトリスの卵サラダ〉〈いちごジャム〉〈カッテージチーズ〉〈山形食パン〉〈ラタトゥイユ〉〈チョココロネ〉〈コーンマヨパン〉〈コーンパン〉…………
………………
…………
〈シナモンロール〉
・
◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯●◯
なんなんだ、なんなんだ。
なんなんだ、この摩訶不思議なステータスらしき文面は!
「それ、マンシェリーの今日までのステータスなんだぞ」
「あの子、の今が……これ、なのか?」
「紙にしてくれたのは、契約精霊のロティなんだぞ。しかも、この紙は異世界産物だぞ」
「これを……少し前に出ていたと聞いたが、その時にカイルキアから譲り受けたのか?」
「父上に持ってて欲しいそうなんだぞ。これは、ロティにならいくらでも出せるからって」
「こんなのを、ホイホイと……?」
あの
赤児のような口調でいたが、やはり精霊としての本質は違えていないようだ。
「それと、今日例の神が細君を連れてマンシェリーに会いに来たらしいんだぞ」
「……は?」
「しかも、お土産にって。聞いたこともない『
「待て待て待て。お前がカイルキアに呼ばれたのは」
「その神が来たのと、俺がマンシェリーの
「……叱られた?」
「うむ。例の神……妻であられる方とどちらかは未確認なんだが、マンシェリーに定期的に届く声の中に労わりの言葉をいただいたらしい。その時俺と爺やも同席してたんだが、あの子があんまり気にしてなかったから俺も爺やもそこまで気にしてなかったんだ」
「で、カイルキアには叱られたと?」
「うむ。あの子の
「当然だ!」
「いで!」
この世に、数多、神々は存在している。
あの無愛想な甥が今住んでいる屋敷にも、別であるが神の加護を受けている状態。
それは農耕の神として地位が高い、ウルクル神。
しかも、今は雇っている菜園の責任者が不老となり、いずれは神席に籍を入れる予定でいる規格外として日々を過ごしているのも。
それだけでも、常識的に十分逸脱してる事だが、我が娘もまたその一人となってしまったようだ。
「つまりは、以前名を封じられてしまった、その最高神らしき存在が。マンシェリーの持つ
「ほぼ確実なんだぞ。それと」
ずいっと、指を俺の方に向けてきて、珍しく笑みを引っ込めた。
「……なんだ」
「以前の、今は牢で刑に服している元子爵。あれの時にマンシェリーが繰り出しかけた攻撃魔法。おそらく、その時に神がマンシェリーを依り代にされたかもしれないんだぞ」
「依り、代?」
「あれだけ、神の慈愛を受けているし。異世界からの転生者であるなら、器はともかく、神が降りやすい身体にされててもなんら不思議じゃない。俺や父上にように王家の器を得てる身体でも治りにくい魔法なんて、そんじょそこらの人間で敵うと思うかい?」
「! お前でも、傷が治りにくかった?」
「あの時、父上はキレてたからあえて言わなかったんだぞ」
「……あー、すまん」
特に、マンシェリーに会えない悔しさでいっぱいだったから、そこは大人気なかったと今では反省している。
しかし、こいつの傷が治りにくかっただと?
王家の中でも、俺に次ぐ随一の高速治癒の体質を持つシュラですら。
治りにくい傷をつけたと言うのか、マンシェリー……いや、あの子を依り代にした神の
「王家どころか、貴族の教育すら受けていないあの子が。母上のような弁舌を披露出来るなんて、普通じゃあり得ない。マンシェリーの前世は、ごく普通の女の子だったって聞いてるし」
「それなら、神が密接に関わったと言うのも……」
あり得ないわけではない。
先日の授賞式での、最高礼などのマナーは付け焼き刃だったのはわかりやすかったが。
態度と、受け答えはまずまずだった。
それは、シュラも言っているように前世での生で受けた経験が役立っているだろうが。
あそこから、俺の最愛である妻だったアクシアと同じような弁が立つとは思い返しても否と答えられる。
だとすれば、神があの子を依り代にされた可能性は十分に考えられる。
その神が自ら出向いて、あの子と接触するから。
「まだ憶測ばかりだけど。これだけ神がマンシェリー……それに俺達と関わるのならば。生誕日も何かあっておかしくないんだぞ」
「……ああ。今の俺でも、それはわかる」
今のこのやり取りですら、見透かしておられるかもしれないが。
逆に試されてるのもあり得る。
なら、俺も堂々としなくては。
「神が再び来られるのは二日後らしいんだぞ。渡された
「わかった、許可しよう」
そう言う理由にしておかねば、こちらも探りにくい。
本来、神に対してそのような行いをする事自体不敬に問われることでも。
俺達は、なんとしてでもマンシェリーに真実を伝えたい。
そして、家族として迎え入れてあげたいんだ。
(神よ……あの子に、酷な試練をお与えなきよう)
俺の子供を、赤児以来この腕に抱いていないあの子を。
もう俺から、引き離して欲しくない。
だから、あと二ヶ月で、それを。
俺やシュラ以外も望んでいるそれを。
どうか、先延ばしにさせないでいただきたい。
(そう願っていても、神の御考えは俺達にはわからないから……)
ただただ、願うしか出来なかった。
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