70-1.ピタパンサンドイッチ!






 *・*・*









 昨日もびっくりな出来事があったけど、今日は今日。


 お昼のサンドイッチに、変わり種としてピタパンサンドイッチを作る予定です。


 中身にケバブは難しいから、焼肉と魚のフライを入れます!



「シェトラスさん達には、大量のキャベツの千切りをお願いします」


「任されたよ」


「私は、魚のフライでいいのかな?」


「はい!」


『俺っちは?』


「じゃ、レイ君は千切りの方を」


『了解でやんす』


「じゃ、行くよロティ?」


『でっふう、変換チェンジ撹拌器ミキサー!』



 生地の配合はピザとよく似てて。



 強力粉

 薄力粉

 塩

 砂糖

 水

 オリーブオイル

 イースト



 これをよく混ぜて、一次発酵。


 倍以上に膨らんだら軽くガス抜き。



「切り分けたら丸めて、少しの間ベンチタイム」



 布もいいけど、ラップがある今はラップをかけておけばいい。


 そして、ベンチタイムが完了したら、千切りはもう終わってしまったようだ。



『ひゃべつの千切り〜〜!』


『が、頑張ったでやんすぅ』


『ふわわわわわわ!』


「チャロナちゃん、これはこのままでいいのかな?」


「そうですね。塩を揉み込んで、水気を絞るのをお願いしてもいいですか?」


「わかったよ〜」


『やんす〜……』



 本当はごま油とかで和えたいんだけど、ホムラじゃないし、また仕入れるのが大変だから。


 水気を絞るのも大変だけど、男手さんの力を借りられるのはありがたいから甘えよう。



「では、生地を伸ばしていきます」



 要領はピザと似てるけど、ピザ程伸ばさない。


 軽くガス抜きして、だいたい3mmの厚さにして広げてシリコンシートの上に乗せていく。


 これを繰り返して、オーブンモードを調整して予熱をかけるのを利用して二次発酵させる。


 発酵が完了したら、焼く5分前にひっくり返して置いておく。



「焼き時間はそんなにかけませんので、5分ほど焼いて薄っすら焼けたら」



 適度に膨らんだピタパンの完成!



「ここで、冷却コールド!」



 タッパーやポリ袋があれば自然にしっとりとした仕上がりになるけど、ないから生活魔法に頼るしかない。


 これは、しばらく放置でいいから具材を作らなくっちゃ。



「昨日仕込んでおいた、即席の焼肉のタレでコロ牛のお肉と玉ねぎ、ピーマンを炒めてから和えて」



 味を確認してから、皿に上げて冷ましておき。


 この間に、ピタパンを半分に切ってからゆっくりとひらけば。



「あれ。中はほとんど生地がない?」


「こういうパンなんです。なので、中にいっぱい具材を入れて食べられるんです」


「なるほど……」



 見た目、スッカスカのパンにしか見えないけど、ピタパンだから大丈夫。


 ここに薄くマヨネーズを塗って、よく水切りしておいたキャベツ、リーフレタス、焼肉か白身魚のフライ。


 フライには、即席タルタルソースをたっぷり挟んで出来上がり!



「「『おおお(*゚Д゚*)オォォ...』」」


「これをさらに紙で包めば、手にべたつきません」


「なら、全部包んでから我々もいただこう」


「「はい!」」


『でやんす!』



 包み方は私が教えて、ロティ以外の全員で取り組み。


 お弁当箱に入れて……を繰り返して。



「「出来たー!」」



 本日のお弁当セットの完了です!



「お疲れ様。配達はまだだし、試食も兼ねていただこうじゃないか」


「「はい!」」


『でっふでふぅ!』


『やったー!』



 と言うわけで、一人一個ずつ食べることになり。


 ロティには、落ちないよう両手でしっかり持たせて。


 私は焼肉、シェトラスさんとエイマーさんは白身魚、レイ君は焼肉。


 きちんといただきますをしてから、勢いよくかぶりつく!



「「「んん〜〜〜!!」」」


『でっふぅう!』


『パンは薄いでやんすけど、肉と野菜が一緒に食べれて美味いでやんす!』







【PTを付与します。



『ポケットにたっぷりピタパン(焼肉)』

『ポケットにたっぷりピタパン(白身魚のフライ)』



 ・製造各40個=各1000PT

 ・食事1個=200PT




 →合計2200PT獲得!




 レシピ集にデータ化されました!



 次のレベルUPまであと4246000PT


 】





 パンは本当に薄いから、少し物足りなく感じるかもだけど、その分具にたっぷり加えた野菜と肉とかが食べ応えがあって。


 肉は甘じょっぱく、野菜は少ししんなりとしててもシャキシャキ感が残ってて。


 ただ、どうしても具材は上に乗せてるから後の方にたまってく野菜とパンだけになるのはどうしようもない。


 でも、初回にしてはいい味付け。



「少し水分を残したお肉のタレは野菜と絡みますし、いい出来です!」


『でやんす! あのショーユって使い方が色々あるでやんすね?』


「みりんとお酒があれば、もっと美味しいけどね」


「全てではないが、ホムラ皇国とは友好国なんだ。だから、手に入りやすい食材もあるけども」


「へ〜」



 だから、カイルキア様もすんなり了解してくださったのかな?


 っと、少しここで思い出した事があった。



「あの。すぐでなくてはいいんですが……育ったホムラの孤児院に一度挨拶に行きたいんです。冒険者だった時は結局挨拶に行けなかったので」


「うーん。そうだね、それは大事な事だ。あとで、一度旦那様に言ってみるといい。私はいいと思うんだが」


「チャロナくん、一人で……いや、ロティくんと行く気かい?」


「いえ。可能なら……今悠花ゆうかさんが経営してるお店にいらっしゃる、幼馴染みのお兄さんが一緒だったらな……と」



 悠花さんも護衛だからついてくるだろうけど、リンお兄ちゃんとも一緒に行きたい。


 お兄ちゃんは、交換留学以来行ってないだろうし、マザーもきっと覚えているはず。



「最低、マックスは君の護衛だから行くとしても。ホムラか……少し遠いな」


「ダメですかね?」


「いや。病でないとしても、結構な期間君がいないとなると、また皆が……ね?」


「あ、あはは……」



 昨日のカレーパン然り、かなりの落胆っぷりが想像出来そうだ。



「とにかく、一度旦那様に話してみるといい。もうすぐ来られるだろうから」



 と言うわけで、カイルキア様にも切り出してはみたんですが。



「マックスらがいるとは言え、ホムラにか……」



 ものすごく、考え込ませてしまいました。




「ダメ……でしょうか?」


『でふぅ?』


「いや。ダメではない、ないが。……俺やレクターとかが最初に言った話を覚えているか?」


「あ。えっと……私とロティの異能ギフトが無闇に外に広まっては、大変……です、よね」


「そうだ。シュラやその父君であられるアインズ殿からも、使命として承っているならば。今のところ、リュシア以外には出来ん。が、お前が恩師のところへ一度挨拶に向かいたいと言う理由も分からなくはない。一度、この件は預からせてくれ」


「は、はい」



 少し、抜け過ぎていた。


 冒険者の時とは違って、気が緩み過ぎてたかもしれない。


 のどかに過ごせて、皆さんが私達のパンを喜んでくれて。


 それが、いい事でも。【枯渇の悪食あくじき】により失われた大半のいにしえの口伝達は。


 私や悠花さんだけしか知らない、異世界の現代レシピ達だ。


 今はほとんどこのお屋敷だけしか知られていなくても、そう無闇に広めてはいけない。


 カイルキア様に話すまで、私も手土産にはと考えてたから。


 少し反省していると、大きな温かい手にぽんぽんと髪を撫でられた。



「制限をつけてしまったのはこちらの方だ。出来るだけ早い返事をするから待っててくれ」


「は、はい!」


『でふぅ』


「それにしても、このパンは薄いが具と一緒ならば食べ応えがあっていい」


「えっと。露店であるような肉の丸焼きを削いだものとかを挟んでも美味しいと思います」


「そうか、また頼む。昨日のイカの脚も美味かった」


「よかったです」



 夕飯の前に、少しゲソの唐揚げをお出ししたら、最初は驚かれたけれど、一緒にレクター先生とも召し上がられたらしい。


 美味しいけど、食べてくださってよかった。



「おやつには、悠花さんがリュシアでのお土産に買ってくださった乾燥のフルーツでパンを作る予定です」


「そうか。楽しみにしている」


「はい」



 シナモンロール、うまく出来るといいなあ。

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