60-1.とびきりメンチカツサンド①






 *・*・*








 朝……とも言い難い時間帯に起きて、身支度をして。


 と言っても、メイクをほとんどしないからすぐに終わってしまうんだけど。


 ロティの髪のお手入れも済ませてから、部屋を出て……風邪が治ってからすぐに加わった日課がある。


 少し遠目に見えそうで見えない、カイルキア様の素振りの稽古をちょこっとだけ見る事。


 ここからは声も届かないだろうし、こっちも素振りの音以外全然何も見えないし聞こえないんだけど。



(この前の昼間に見た 時以上に、きっと綺麗でかっこいいんだろうなぁ……)



 直接覗き見する追っかけさんよりは、緩いと思うんだけど。我ながら、実に変態さんだと思う。


 けど、けど、好きな人のことは少しずつ知りたい。


 その思いだけは、もう隠しようがないから。


 だから、ほんのちょっと立ち止まって、素振りの音が聞こえたら立ち去るだけ。それだけにしている。



『もー、いーいんでふか?』


「うん。お仕事あるしね」


『でふぅ』



 ロティは私の想いを知ってても、心配してくれるから嬉しい。


 必要以上にアピールを強要したりとかしてこないし、私の意志を尊重してくれてるいい子。


 他の皆さんも、思うのは自由ってスタンスだから強要はしてこないし。


 だから、私も安心して自分の『初恋』を抱えることが出来る。


 子供の頃は、シュィリンお兄ちゃんの事が初恋だと思い込んでたけど。本当に好きな相手が出来たら違うって実感出来たから。


 なので、カイルキア様への想いが、私のこの世界での初恋なんです。


 それはひとまず置いといて、厨房にいつものように向かってパンの仕込み。


 それから、二日連続になるけどメンチカツサンドの仕込みだ!



「パンだけは、昨日作って収納棚に入れておいてあるから」


『でっふぅ! かちゅの仕込みでふぅう!』


『今日も同じ事すればいいでやんすか?』


「うん。野菜のみじん切りからお願いします」



 玉ねぎだけでもいいけど、私の作り方にはキャベツもどっさり入れます。


 挽肉に、キャベツと玉ねぎの粗いみじん切りを入れる前に。


 昨日は入れなかった、ウスターソースや他の調味料を入れて粘り気が出るまでよくかき混ぜる。


 その後に、野菜とパン粉を加えてよく混ぜて。


 分厚くなり過ぎないように、少し大きめのハンバーグをイメージするくらいに成形。


 野菜は、エイマーさんとレイ君。


 私が成形。


 衣はシェトラスさん。


 その分担でやっていくと本当に時間があっと言う間に過ぎていき。


 揚げの工程もささっと済ませてから、冷却コールドで粗熱をとってバーガーサンドの仕上げに。



「マヨネーズ塗って、千切りキャベツと挟む前に」



 昨日の晩、ちょっと思い出した事をソースに一手間加えて作った『中濃ソース』。


 そこまで難しくないけど、ウスターソースだとさらっさら過ぎるからサンドには不向きかもしれないと思ったので。


 実際、うまく挟みやすかったし、大丈夫なはず。


 お弁当用でも、エスメラルダさんのご要望と、結局他の皆さんも欲しいと言われたので少し小さめのサンドを二ついれて。


 おかずと野菜も忘れずに。


 そうして、皆さんが取りに来る寸前になんとか終われた!



「お疲れ様でした!」


「何、今日からがスタートだと思わなくては。試食であれだけ美味かったこのサンドに、リピーター続出しないわけないじゃないか」


「そうですね……」


「毎日これだと。流石に私も疲れるよ……」



 なにせ、ウスターソースの仕込みだけで結構な労力を使うからだ。


 フードプロセッサーとかはロティについてないし。ミキサーもしかり。


 多分、なかなか上がらない次のレベルからか……とも思ってるけど。ピザを量産したらしたで、また夜のご飯の栄養価も偏ってしまう。


 野菜はあれど、これほとんどジャンクフードだもの。



「…………少し早いが、昼をもらえるか?」


「!」


『でふ?』


『おや』


「あ、はい。ただ今!……チャロナくん、君が行くんだぞ?」


「な、なんでですか!?」


「はっはっは。意地悪を言わないであげなよ、エイマー。ひとまず、旦那様へのお昼を作ろうか?」


「は、はい!」



 そう。本当にタイミングを計ったかの具合で、カイルキア様がやって来られて。


 そして、サンドイッチにはしなかったが、大きめのメンチカツを二枚揚げて中濃ソースをかけてからお出ししてしばらく。



「…………このソースは、画期的過ぎるな」



 もう一枚おかわりされてから、そんな事をおっしゃいました。



「えと。私や悠花ゆうかさんの前世だと、このソースを濃度に分けたものだったり、味付けを変えるだけで多岐に渡る料理を作っては食べてました」


「揚げ物だけではない?」


「はい。粉物……小麦粉をベースに使ったパンじゃない料理があるんです。一つなら作れそうですが、それも材料があんまりなくて」


「取り寄せれないか?」


「うーん。私の前世の知識を伏せたまま……では」


「そうか。一度、マックスとも話し合わねば、か」


「そうですね……」



 この間は一緒にはしゃいじゃったけれど、この世界に粉物の材料があるかあやしいところがある。


 特に、『削り節』や『青のり』とか。


 あと、つなぎの材料とか。


 不肖、関西人の娘として。


 本拠地の人には負けても、自分なりのこだわった粉物は前世作ってはいた。


 あれを踏まえて、ひとつ再現したい。


『焼きそばパン』を!



「まあ、急くこともないが。これは手間はかかるようだな? 毎日はお前達も疲れるだろう?」


「い、いいえ。私は大丈夫です」


「無理はするな」


「は、はい。あ、旦那様、ひとつだけ取り寄せていただきたい食材を思い出しました」


「なんだ……?」


「ホムラの『麺』です」


「麺……? 何に使うんだ?」


「パンに挟むんです!」


「…………わかった。お前のその顔なら、とびっきり美味いものが出来そうだな」


「はい!」



 出来れば、メンチカツもだけど。焼きそばパンも孤児院の子供達に食べてもらいたい。


 差し入れ以上に、パーティーメニューになっちゃうけど、シュライゼン様もきっと喜んでくださるはず!


 その前に、カイルキア様との談笑を終えてから、戦場と化したお弁当の受け渡しを頑張るのだった。







【PTを付与します。



『とろっと中濃ソース』


 ・製造2l=15000PT

 ・食事大さじ一杯=250PT



『熱々メンチカツサンド(中)』


 ・製造200個=30000PT

 ・食事1個=500PT




 →合計45750PT獲得!




 レシピ集にデータ化されました!



 次のレベルUPまであと4508275PT


 】

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