59-1.熟成ウスターソース作り
*・*・*
休憩もちゃんと取って、次はいよいよウスターソース作り!
「けど、今日のメインもメンチカツでいいんですか? お昼も作りましたし」
「あの揚げ物は画期的だし、飽きがくるまでは頻繁に作った方がいいよ。挽肉のストックも結構あるし」
「いや、揚げ物で合うならコロッケはどうだろう? せっかくのチャロナちゃんのジャガイモもたくさん使えるし?」
「「了解しました、料理長」」
『でっふぅ』
『手伝うでやんすよー』
ではでは、と分担して私とシェトラスさんでウスターソース作り。
エイマーさんとレイ君にはコロッケ作りを。
ジャガイモが相当大きいので、レイ君が
「とにかく、香りで味もわかるくらい濃いソースなので、香味ソースとも言われてるんです」
「ふむ。そのために、これだけの材料が必要なんだね?」
取り揃えました材料は、
りんご
トマト
玉ねぎ
にんじん
にんにく
生姜
セロリ
醤油
ザラメ糖
塩
酢
水
お湯
グローブ
ナツメグ
シナモン
ローリエ
セージ
タイム
黒胡椒
レッドペッパー(唐辛子)
用意したのは、こんなにも。
実は、私が前世で勤めてたパン屋の近所に、お肉屋さんがあって。
店長同士が幼馴染みさんだったから、昔っからとっても仲が良くお互いの店も出入りしてたらしく。
お肉屋さんの店長さんのお父さんが、ある日仕込みを手伝えと言った事が発端で、ウスターソース作りを覚えさせられ。
以来、お肉屋さんとパン屋以外門外不出だぞと念を押されてから、わざわざパン屋でも仕込むことになり。
コロッケやメンチカツ、焼きそばパンに欠かせないソースを、店内だけで作るようにとこちらでも念を押されてから私を含める若いスタッフにも教えてくださって。
もう元の世界には戻れないし、いいよね?と今回仕込む訳です。
「みじん切りでもいいんですが、野菜と果物はほとんどすりおろします」
「これは、力仕事になりそうだね?」
「頑張りましょう!」
よく洗って、皮をむいたのから順にすりおろして。微妙に残ったのは後でみじん切りにする。
トマトは皮を湯むきして手で潰し、セロリは葉をちぎっておく。
スパイス類は、グローブ、手で割ったシナモン、黒胡椒、唐辛子を乳鉢に入れて。こちらもよくすり潰しておく。別ですりおろしたナツメグもここに加えます。
「……はあ。少し歳かな? 流石に少しばかり疲れたよ」
「あ、お茶淹れましょうか?」
「うん。チャロナちゃんは元気だね? 若いっていいなあ」
「そんな。シェトラスさん、おいくつですか?」
「ん? ちょうど40だよ。娘も息子も、去年あたりから冒険者になって旅立って行ってしまったけど」
「そうなんですか?」
って事は、お子さんは……私とそう変わらないのかな?
一応聞いてみると、双子さんでその通りと答えが返ってきた。
「今はどこで何をしているかはわからないけど。たまに、妻宛に頼りを寄越すらしいから、元気そうだよ」
ちょっと寂しそうな笑顔になったけど、紅茶をくいっと飲まれてから、その表情は消えた。
「さ、私もまだまだ頑張らなくては。次はどうするのかな?」
「あ、次は砂糖をカラメルって言う、わざと焦がしたソース状のものにするんです」
「砂糖を……?」
『カラメル〜カラメル〜プリン食べちゃいでふぅう!』
「あー、今度のおやつにする?」
「プ、プリン?」
「ちょっと苦いんですが、甘くて美味しいゼリーみたいなものです。また明日とかに作りましょう」
「う、うん。わかったよ」
カラメル作りに必要なのは、砂糖を分量内の三割程度大鍋に入れてゆっくりと溶かす。
弱火で熱していると、あぶくが立ち、薄く煙が出てくるけど気にせずに焦がす。
シェトラスさんに心配されても、ここは大丈夫だと返事をする。
「熱いうちに、躊躇せずにお湯を入れてよく混ぜます! ヘラで底にこびりついてるカラメル部分もこそげるように」
ちょっぴり甘く苦い、コクと香りの素となるカラメルソースの出来上がり。
とここで、心配されてるシェトラスさんやエイマーさん達に味見をしてもらうと。
「これは……っ」
「苦味もあるけれど、甘味が際立っていますね? 砂糖にこんな使い方が」
「お菓子の材料にもなりますし、明日のおやつはプリンにしましょう!」
「「手伝うよ!」」
『プリン? マスターが小さい頃食べたいって言ってた前世でのお菓子でやんすね?』
「そうなんだ? じゃ、是非とも食べてもらわなくちゃ」
ついで、じゃないけど。アイリーン様とも幼馴染みらしいから、甘い物の好みとかも聞いておきたい。
なんだかんだで、あと三日もないしね?
「あとは、このカラメルの鍋の中に下準備した野菜達にスパイス、計量した調味料と水を入れて混ぜ。煮立たせないように温めます」
要は、せっかくのスパイスの香りが飛ばないようにするため。
あとは、ゆっくり温めることで風味を豊かにするため。
温度は、鍋縁がふつふつ泡立つ程度。
もうここで、火にかけるのはおしまい。
「本当は、二、三日このまま寝かせておくんですが。……ロティ?」
『だいじょぶでっふ! よじょー魔力があれば、複合出来まふ!』
「よし、やろう!」
恥ずかしいとか言ってる場合じゃないので、コロッケ作りが進んでる横で例のハイタッチを済ませて。
ちょっと貧血気味になったけど、ここからが本番だから気を抜けない。
「行くよ? 重ねがけ……
『最大短縮ぅううう!』
私とロティがバナーを重ねた直後に手をかざせば、一瞬だけシュバッと瓶達が光り出し。
光が落ち着いた頃には、淡い茶色だったソースが少し黒っぽくなってて。
これを、晒し布で濾して味見をすれば。
「うん、この酸っぱさに辛味! あのソースだわ!」
『でっふぅ!』
「「私達もいいだろうか?」」
『俺っちもー!』
「はーい」
ただし、ティースプーンにほんのすこしだけ。
大量に味見しちゃうとむせちゃうからね?
三人とも、パクッと口に入れるとぴくっと肩が跳ね上がった。
「すごい、香りが深い!」
「味も、コクとまろやかさがなんとも言えない。旨味と甘味が出て、実にいい!」
『これを揚げ物に……美味いでやんすけど、まだ想像出来ないでやんす』
「すぐに仕上げるぞ!」
エイマーさんがやる気メーターをMAXにしてしまい、レイ君の首根っこを掴んでから、二人であっという間にコロッケのタネを作ってあげてしまい。
人数分だけに用意された熱々ホクホクのコロッケに、私とシェトラスさんが作ったウスターソースを軽くかけて。
「「『「いただきます」』」」
『いちゃだきまふぅ!』
サクッ、サク!
熱々の出来立て、ホクホクのコロッケ。
衣に染み込んだ、黒いウスターソース。
酸味と辛味が、絶妙なバランスで油っこいものをくどくさせず。
『口福』の効果のお陰で、いつも以上に美味しいコロッケとなり。
全員無言で食べ終えたのだった。
【PTを付与します。
『熟成ウスターソース』
・製造2l=10000PT
・食事小さじ一杯=200PT
→合計10200PT獲得!
レシピ集にデータ化されました!
次のレベルUPまであと4654025PT
】
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