58-5.ポテサラパン実食
*・*・*
神様とは言え、外見の姿よりも充分戦力になって。
今は、ラスティさん達を呼びに行ってもらってるけれど、おそらくすぐにやってくるかもしれない。
転移かはわからないけど、あの勢いならすぐにやって来そう。
ただ、ここで重要なことをひとつ忘れていた。
「黒胡椒引くの忘れてたぁあ!」
「? それは重要なのかい、チャロナくん?」
「香りとか、アクセントが全然違うんですよ!」
ああ、もったいない。
もったいないことをした。
そりゃ、なくてもいいっちゃいいけど、ポテサラに混ぜておくだけでも全然違う。
仕方ないから、焼き上がった仕上げに軽く引くだけにしよう。
そうすると、ほとんどチーズにかけるのと一緒だけども。
『戻ったぞえ。おお、チーズの焼ける良い匂いじゃ!』
「あ、お帰りなさい。あと少しですので、食堂で待っていてもらえますか?」
『もう手伝いは不要か?』
「大丈夫です。ゆっくりしててください」
『うむ』
本当にすぐ戻って来られたけれど、手伝っていただけるようなことも本当になく。
パンも焼き上がったら、本当に軽く軽くミルで黒胡椒を引いて、乾燥パセリを振りかけて。
「うん、実に美味しそうだね?」
『俺っち二個は食いたいでやんすー』
「量産しましたし、ラスティさん達もたくさん召し上がるようですからそうしましょうか?」
せっかくだから、私達も一緒に食べようとコーヒーも落として準備をして。
食堂に回ると、ウルクル様が抱きつかんばかりに飛んでこられた。
『もう待ちきれん。早う、早う!』
「わ、わ、わかりました」
『でっふぅ。お待ちゃしぇしまちた〜』
『うむ!』
テーブルを寄せて、コーヒー、パンを順番に置き。
目の前に置いた途端、ウルクル様やエピアちゃんは輝かんばかりの表情になって。
全員でいただきますをして手に取ると、まだまだ熱いので、ウルクル様でもあちあちされちゃった。
『これは中も相当熱そうであるな?』
「あむ。……お、美味しい!」
『ふーふー……なんと!?』
エピアちゃんとウルクル様の様子が気になって見ていると、エピアちゃんは本当に気に入ってくれたようで。
ウルクル様も、エメラルドグリーンの瞳をまん丸にさせて声を上げてくださった。
「チーズは伸びないけど、カリカリしてるし。黒胡椒でピリッとしていて」
『こんなパンがあったかえ? 甘味もあり、柔らかでいつまでも食べたくなる! 中のジャガイモのサラダとも相性がいい! これは、一個じゃ足りぬ!』
はい、食リポいただきました!
二人が食べ進めてから私達も食べることになり、ロティも少し冷めてから自分でパンを抱え出した。
『美味ちーでふぅ。ご主人様ぁ!』
「ありがとう。じゃあ、私も」
温かいうちに食べたいので、カプッとかぶりついたら。
【PTを付与します。
『熱々カリカリチーズ乗せポテサラパン』
・製造70個=各120PT
・食事1個=75PT
→合計8475PT獲得
レシピ集にデータ化されました!
次のレベルUPまであと4664225PT
】
うん。PTもまあまあ予想してた具合だ。
パンもふわふわ、ポテサラの塩っ気とマヨネーズのまろやかさでたっぷり入れたから食べ応えもあって。
チーズも内側は少しとろんとしてるけど、外側のカリカリした部分も美味しい!
黒胡椒、やっぱりポテサラにも入れたかったけど、焼いた直後に振りかけただけでもよかったと思う。
これは、一個ペロリといけちゃう逸品になった!
あと、『口福』のおかげか、すっごく美味しい!
【ほぅ。面白い、主の加護にはそのようなものがあるのじゃな?】
突如聞こえてきた、天の声じゃないテレパシーのようなもの。
その口調から、まさか、と振り返ればウルクル様は口に人差し指を添えられていた。
【慌てるでない。妾は神ゆえに聞こえてしまうだけじゃ。どうやら、他の者には聞こえておらぬようじゃが。ほんに面白い。主だけの
どう返事を返せばいいのかわからなかったが、心もいくらか読めるのか、テレパシーでも笑いを堪えられていた。
【近しい神の存在は居らぬようじゃが。馳走も、新たな技術も見せてもろうた。時々で良いならば、妾が作物の事について伝授してやろう】
どうやら、気に入られてしまったらしく、テレパシーが終わると、ウルクル様はもう一個のパンを美味しそうに食べ出した。
(……か、神様まで、協力者が出来ちゃった?)
ちょっと引っかかる事はあったけど、心強い事には変わりない。
少し安心していると、右隣に座っているエイマーさんからつんつんと肩を突かれた。
「なんだか、今まで以上に美味しいと感じるんだが。これは……?」
「あ、多分。私が育てたジャガイモの効果らしいです」
とここで。
【*初めて生み出した作物を使用したため、『口福』の効果発動
→ウルクルの加護との連動により、収穫量UP
→ジャガイモ……200000コロン獲得!
】
などと、とんでもない効果とコロンの獲得が聞こえてきて、一瞬だけウルクル様を見ても艶やかな表情で微笑まれただけだった。
「? チャロナくん?」
「ま、また後で教えますね?」
「あ、ああ」
おやつタイムが終わっても、まだまだやる事がたくさんある。
特に、ウスターソース作りを頑張らなくちゃ!
『ほんに、これは神の供物に引けを取るどころか凌駕しておるぞ? 狙う輩は多いはずじゃ。ロティ、契約精霊として一層励むのじゃ』
『でっふ! 頑張るでっふ!』
『俺っちとマスターも、一応護衛でやんす!』
『そうかえ? 雷公の、もおるなら少しは安心じゃの?』
それと、とウルクル様はまた宙に浮かんで私とロティの間に降りてこられた。
『妾の加護を少しばかり与えよう。何、ラスティのとはいささか違うが』
「ふぇ!」
『でっふ!』
ほ、ほほほ、ほっぺにチューされてしまった!
人ではなくても、あったかさは感じて。
すぐ離れたウルクル様はにんまりと微笑むだけ。
【ウルクルの加護『豊潤』を獲得
→『口福』の効果を促す、作物の成長を助ける為の効果
→次の作物を出来るだけ早く、決めてください
】
とまあ、なんとも凄い加護
「ウル〜、そんなにも気に入ったの〜?」
『ほっほ。このように稀有な幼子。……腕も確かな者にであれば、使える加護じゃよ』
「あ、ありがとうございます」
『さて、妾はこの屋敷の主人にも久々に会いに行かねばのぉ』
「え?」
『神と言えども無断で居座ってはな!』
「じゃ、僕も行くよ〜」
と言うことで、カイルキア様とレクター先生のパンを持って行ってもらう形になり。
私は、少し食休みをしてからウスターソースの仕込みに取り掛かる事にした。
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