49-1.今度はチーズリゾット






 *・*・*








 美味しいお米も食べて、気力も全快かと思いかけたが。


 やっぱり夏風邪を甘くみてちゃいけないようだったので、ロティと仲良く寝込むしかなかった。



「……あ、熱い」



 セルディアスは少し標高が高い国だから猛暑と言うのはないらしいけど。私の体だけはそれに匹敵するくらい熱い。



『……でふ。……でふぅ』



 そしてロティも、私と体調をほぼ共有してるので、同じように苦しんでいる。


 さっきメイミーさんに氷嚢とミニタオルは変えてもらったけど、もうだいぶぬるい。


 私の方も同じくらい温くなってきてしまったし、治すのも仕事!と、なんでか社蓄的なテンションになってたが、無理せずにナースコールがわりの小さな魔法のベルでメイミーさんを呼ぶことに。


 ただ、来たのはメイミーさんじゃなくて副メイド長のアシャリーさんだった。



「はいは〜い。どうしたのかしら〜?」



 アシャリーさんは腰まで伸ばしてる天パの薄ピンクの髪と、ふんわふわな笑顔が特徴的な可愛らしい女性だ。


 口調も、ちょっと間のびているけど、仕事は完璧にこなしちゃうすごい人。


 メイミーさんは、今別件で立てこんでるから代わりに来てくださったみたい。



「すみません。変えてもらったばっかりなんですが、二人とも氷嚢が温くなってしまって……」


「あらあら、また熱が上がったのかしら〜? 貸してみて?」



 少し体をずらしてから氷嚢を取ってもらうと、たぷんと揺れた具合を見て彼女は『あらあら』と声を上げた。



「多分相当熱が上がってるのね? 寒くなぁい? お腹の空き具合は?」


「今のところ熱くて……多分、ロティもなんですけど。お腹はゆ……マックスさんに作っていただいたのを少し前に食べたので、大丈夫です」


「あらそうなの〜。じゃ、食べて汗をかこうと体が頑張ってるのかもしれないわ〜。とりあえず、氷嚢はすぐに持ってくるわね〜?」



 さっき着替えたばかりだけど、汗はまだまだ出さないといけないみたい。


 風邪って、こんなに大変だったっけ?とうろ覚えなとこがあるけど、ロティのためにも早くよくならなくっちゃ。


 アシャリーさんはすぐに氷嚢を持ってきてから、一緒に持ってきてくれた冷たいハーブティーを私達に飲ませてくれた。



「水分補給はしっかりね? 遠慮なく私達を呼んで大丈夫だから〜」


「お……お世話かけます」


「全然よ〜。いつも美味しいパンをご馳走になってるんだから、それは私達にも言えるわ〜」


「う……ども、です」


「また何かあったら、呼んでね〜? 眠くないだろうけどぉ、熱がある時は自然と寝ちゃうはずだから。ご飯の時には長が来てくれるはずよ〜」


「あ、ありがとうございます」



 そうして、冷たい氷嚢に癒されながら横になっていると。アシャリーさんが言ったように本当に眠くなってきてしまい。


 次に起きた時は、部屋の中で食器が擦れる音が聞こえてきたので目が覚めた。



「あら〜、チーちゃん起きた?」


「気がついたようね? ちょうどご飯持ってきたのよ」


「…………あ、ありがとうございます」



 どうやら少しの間寝てたみたい。


 起こされる直前だったようだが、悠花ゆうかさんとメイミーさんが一緒にいて、食事の準備をしてくださっていた。


 熱は気分的にだいぶ引いた気がしたが、油断は禁物ですと言わんばかりにメイミーさんによるはい、あーんで食べさせてもらうことに。


 ロティはまだ寝てたので、私の後に食べさせることに。



「! これ……おかゆ?」



 差し出されたスプーンには、昼間悠花さんに食べさせてもらったのと同じお米のつぶつぶが!



「リゾットよん。エイマーが、1回目の炊飯で失敗した後あたしの口伝えで上手く作ってくれたの。それは、米はあたしが炊いたの以外はあの子の力作よ?」


「さ、どーぞ?」


「は、はい」



 リゾット……生米からじゃないからおじやに近いけど、チーズのいい匂いがしてとっても美味しそう!


 よく寝たのでまたお腹が空いてきたから、遠慮なく差し出されたスプーンを口に入れてもらう。


 もぐっと、歯に当たるつぶつぶを感じれば。


 舌の上ではチーズがとろけていく!


 コンソメの風味も塩気もちょうどいい!


 すっごく美味しいリゾットに仕上がってる!



「美味しいです!」


「そりゃ、ねえ?」


「うふふ。失敗を繰り返したのが結構あったと聞いてますわよ?」


「メイミー!」


「お米を扱い慣れてなきゃ無理ですから」



 苦戦してる光景が想像しやすかった。


 けど、本当に美味しいので、私は自分で食べることにして、メイミーさんにはロティの方を頼んだ。


 ロティも起きてお腹が空いたのか、メイミーさんに頼んでどんどんお代わりを欲しがっていた。



『もぐもぐもぐ。美味ちーでふぅうう!』


「おかわりもあるから慌てなくていいわ。チャロナちゃんはどう?」


「おかわりください!」



 ただ、一人足りないような……と悠花さんを見たら肩を落とされた。



「レイは下の夕飯の作業を手伝ってもらってるわよ。ロティちゃんの様子はあとで見に来たがってたけど、全部終わってからって言い聞かせたわ」


「あ、あはは……」



 ロティには懐かれてても、恋のような好意を持たれているかはわからないしね?


 たくさんアピールしたいようだけど、今はこちらが療養中だもの。



「さ。熱もだいぶ引いたからぬるめのお風呂に入りましょう? ロティちゃんも」


『でっふぅ!』


「ありがとうございます」



 さっぱりしたかったので、助かったと嬉しく思いながら夜は更けていき。


 また眠りについた後。


 何故か、カイルキア様が頭を撫でてくださったような気がしたけど。


 いい気持ちで瞼が上がることはなく、私はそのまま眠ってしまったのだった。

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