38-2.パリっとウィンナーロール
ウィンナーロールについては、成形を頑張る以外材料はそんなにも難しくない。
パンの生地(食パンと同じタイプ)
ウィンナー
乾燥パセリ
ケチャップ
マヨネーズ
ドリュール
これらがあれば大丈夫。
まずは普通に食パンタイプのパン生地を仕込んで、一次発酵。
分割した後は、コロネのように太めの棒状に。
これを全部作ってから、少しベンチタイム。
「伸ばし方、巻き方は、そんなにコロネとは変わらないんですが」
先端を作るわけじゃないので、本当にロールになるように。付け根を最初と同じラインになるようにするのもコツ。
あと、ちょい斜めに巻いていくと層が綺麗になる。
せっかくなので、シェトラスさん達もやってはみたのだけれど。
「「難しい……」」
うまくロールにならないので断念。
レイ君も参加してみたけど、同じく断念。
なので、ここは本職の私一人で
「休憩時間もあるので、二次発酵は
なので、発酵器の中には、いい感じに膨らんだウィンナーロールが。
それとそこからの作業ですが、
①シェトラスさんがドリュールを塗り
②レイ君がマヨネーズをスプーンで細くかけ
③同じ要領で、エイマーさんがケチャップを
④私がパセリを振って、ロティのオーブンに入れていく
このサイクルで進めると、ほんとにあっという間。
焼き時間はそんなに長くないので、ロティ以外の全員でお片づけ。
『うっほ〜〜〜〜。ソーセージの焼けるいい匂い〜〜!』
「これは……っ、八つ時まで我慢出来そうにない匂い!」
「そうは言うが、エイマー。私も我慢するんだから、君も我慢しなさい」
「…………はい」
本当に。
それほどってくらいに、暴力的にまで充満していく肉が焼けるいい匂い。
パンと相まって余計にいい匂いになるのは、私も転生してから初めて嗅ぐのにどこか懐かしく思えて。
パン屋にいた頃は、お客さんの中でも子供達には大人気だったなと思い出す。
まだ予定は詳しく出来てないけれど、孤児院の次の差し入れはピザ以外にこれやクリームパンも追加してあげようと決めた。
『ぷぷぷっぷぷ〜。出来まちた〜〜〜〜!!』
出来上がったウィンナーロールは、本当にとってもいい出来で。
これはもう試食するっきゃないでしょう!
「焼き立ては、製作者の特権です! 食べましょう!」
「『わ〜〜い!』」
「作り手が言うなら……遠慮なく」
だけど、本当に熱いので包み紙に包んでから全員でフーフー。
「「『「いただきます!」』」」
『いちゃだきまふぅうう!』
そうして全員がウィンナーの部分を頬張ったら?
パリっ!
某精肉メーカーばりに音が立った!
さすがは、サイラ君やエスメラルダさんお手製のウィンナー。
前に、朝食で目玉焼きとソーセージのプレートをいただいた時も思ったけど。焼いただけでこんなにも歯応えがいい!
パンもあえて卵を入れない生地で作った分、小麦の風味が強くてお互いのいいとこを引き出せて居る。
皆夢中になって、パリっ、パリっと音を立てながら食べ進めていく。
【PTを付与します。
『パリっとジューシーウィンナーロール』
・製造100個=1000PT
・食事1個=15PT
→合計1015PT獲得
レシピ集にデータ化されました!
次のレベルUPまであと513567PT
】
朝に大量に食パンとペポロンパン達を作っても、次のレベルには程遠い。
急いでいるわけじゃないけど、次のステップアップかどんなのか楽しみで。
ロティの進化だけでも充分だけれど、あの子のナビレベルももっとあげておきたい。
昨日も確認したが、
既に、メイミーさんの許可もいただいています。
「あ、このパン。私達と悠花さんの分だけ持って行っていいですか?」
「ああ、構わないよ? 残りは、責任を持って結界で保護しておくから」
「お願いします。ロティ、レイ君行こうか?」
『でふぅ!』
『でやんすね?』
そうと決まれば、無限∞収納棚に持ってく分だけを包んで入れておき。
部屋でコックスーツから、メイミーさんのお下がりでいただいた薄黄色のサマードレスに着替えてから。
悠花さんを探しに、獣化になったレイ君の背にロティと乗って壁抜けのドライブに!
悠花さんは、中庭で何故かカイルキア様と剣の稽古をされていました。
「はっ!」
「くっそ、相変わらずその細身で攻撃重いなっ!」
少し手前で止まったレイ君の背に乗りながら、その光景が何故か懐かしく思えた。
お二人じゃない。
まだ離れてひと月足らずの、前にいたパーティーのメンバー達の事。
リーダーのマシュランと、悠花さんと同じ
お二人のように、本気でぶつかり合いながらもいい笑顔で剣を交わしていたあの頃を思い出したのだ。
『?……ご主人様、どうかちたんでふか?』
「…………え?」
『泣いてりゅでふ!』
「…………あ、これは」
つい、懐かしくて涙が出てしまったんだろう。
けれど、ロティの大声がお二人にも届いていたのかこっちに気づいてギョッと目を丸くされた。
「ちょ、どうしたのよチーちゃん!」
「何があった!」
「ち、違うんです! 少し、パーティーにいた頃を思い出して」
「パーティー??」
「って、最初に話してくれた奴らね?」
「ああ」
「あそこにも、お二人のように剣の稽古に明け暮れてたメンバーがいたんです。だから、つい懐かしくて……まだひと月程度なのに。不思議です」
私が雑事をこなしてる間に、他のメンバーはそれぞれ強くなるために頑張っていた。
羨ましくは思っていたけれど、私には何も取り柄がない。
だから、耐えて一人で過ごしてきた。
はじめの頃は、参加しないかと言われたが、全然飲み込みが悪くて断念してしまった。
「…………チーちゃん。ちょっと思ったんだけど」
「なーに?」
ちょっと思い返していたら、悠花さんが急ににっこり笑い出した。
「あんた、下手するとあたし以上に魔力が飛躍的に伸びたんでしょう? なら、シュラかフィーに頼んで魔法鍛えたら?」
「へ?」
『でふ?』
『いい提案でやんすねぇ?』
「なるほど。自衛のためもかねてか?」
「そーそー。いざって時にね?」
まさかまさかの、魔法使いこと魔法師デビューさせられちゃう?
今まで、そんなこと思い当たらなかったから、思わず口があんぐり開いてしまった。
「……マジ?」
「ほら。リュシアであったあの糞子爵のような事件が。次もないと言い切れないじゃない? チーちゃん無意識でも攻撃魔法使おうとしてたから、見込みはあるわよ?」
「錬金術師で魔法師に……??」
なれるんだろうか? 本当に。
自分の手を見ても、余剰魔力をロティに与える時は例のダンスで気力が抜ける以外特にないから。
あまり、魔力量の実感がない。
「シュラは面白半分に進めそうだろう。依頼についてもあるのならフィーガスが適任だ。もと、シュラの教師でもあったしな?」
「妥当かしら?」
「ふぃ、フィーガスさん、がシュライゼン様の先生??」
「と言っても、大まかな基礎以外は、突飛すぎた応用だけだがな? 転移をいち早く物にして伝えたのがフィーガスだ」
「ほへー」
『ほえ〜』
けど、知ってる人に教えていただけるのは非常にありがたい。
まだ本決定じゃないけれど、そうなれば少し嬉しくもなってくる。
生徒として成果が出れば、より一層ウェディングケーキ作りも張り切っちゃうぞ!
「ところでチーちゃん、ステータス確認しに来たの?」
「そうそう。あと、ウィンナーロール作ったから皆で食べよ?」
「ウィンナーロールですって!」
この時ほど、悠花さんの赤目がとびっきり光ったのを見逃さなかった。
「……それは、美味いのか?」
「美味いってもんじゃねーぞ! 肉だぞ肉! ソーセージにパンが絡まって美味い!」
「そ、そうか?」
「カイル様の分は、シェトラスさんに預けてありますので」
「そうか。わかった」
なので、ここからは悠花さんもレイ君の背に同乗して部屋へ逆戻り。
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