ミドリ(1)
季節が変わり皆変わった。
営業パートナーだった篠崎さんは昇格し、ぼくは入社したばかりの女子社員と組まされることになった。
あれ依頼陽子さんはBarにぜんぜん来なくなり、最近はやたらカップルの客が多い。
まあ、放っておけば勝手にいちゃいちゃしてくれるから仕事は楽だけど。
代官山の本屋でいつもぼくをストーキングしていた女子高生も最近は全く見かけなくなった。
前よりも肩コリが軽くなったように感じるのは気のせいだろうか。
いろいろ変わったようだが、ぼくの周りが変わっただけでぼく自身は何も変わっていない。
ただ三人の女たちに告白もしてないのにフラれたような納得のいかないモヤモヤした気持ちだけがぼくの中に澱のように溜まっている。
「なんか女って勝手やな、ミド....」
ミドリ、そう呼ぼうとして止めた。
「名前変えんといかんな」
夏の間食欲旺盛でエサを食べまくり急成長したミドリがメスではなくオスだと分かったのはつい最近。
「おまえ、ずっとオスやったんやな。でもおまえ、なんかメスっぽいぞ」
そう呟いてぼくは小さく笑った。
メスっぽいなどと、ぼくは勝手だ。
これじゃあの三人の女たちと同じだ。
人差し指でミドリの頭を撫でようとして、がぶりと噛みつかれる。
「痛っ」
と言ったが、あれ全然痛くない。
よく見ると噛まれた指の先がうっすらと消えている。
第一関節の先からじわりと第二関節まで?み込まれる。
「あれ、どうして・・・・」
指から手全体へ腕へとそれは僕を浸食していく。
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