第3章 Unsightly

絶望の幕開け

「ああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」


 慟哭があった。

 絶望する叫び声があった。

 美しかった町並みは轟々と赤い炎に包まれ、空は黒煙に包まれている。

 その中で、セナは倒れたユウの体を抱えて泣き叫んでいた。


「ユウさん! ユウさん!! ダメです、お願いっ、死なないで!!」


 体を揺さぶり、必死に名前を呼びかけるがユウは目を覚まさない。

 左肩から先は消失し、断面からおびただしい量の血液が溢れてしまっている。苦悶の表情はなく、呼吸も絶え絶えで体温をあまり感じられない。

 素人目に見ても分かる。彼女の命はもう長くない。


「っ!? そんなのダメ、お願いですユウさん! 目を覚まして!!」


「無駄だよ」


 前方から声があった。

 はっとして顔を向けると、そこには銀髪の少女が立っていた。

 ニヤニヤとセナに嘲笑を向けながら彼女は言う。


「もうこいつは死ぬ。今のお前はパンドラも呼べない。チェックメイトだ、お前たちはここで終わるんだよ」


「…………」


 少女の言葉にセナは返す言葉も見つからず。

 グォォォオオオオオ、と地響きすらともなうほどの巨大な咆哮が響き渡った。

』の合図だ。破壊をもたらす前兆の声だ。

 セナにも理解してしまう。もう、手遅れなのだと。

少女の右手が光り始めた。強力な爆発魔法。あれを直接受けてしまえば命は助からない。

 だが、もうセナは体を動かせない。両足が骨折しているからだ。


「…………ッ!」


 歯ぎしりし、セナは強くユウを抱きしめる。

 たとえ、ユウが助からないのだとしても。

 彼女の手で殺されるのだけは避けたかった。最期まで守りたい。その意思表示のつもりでセナはユウを庇ったのだ。


「……へぇ。お前たち、中々いい愛を見せてくれるじゃないか。アヤメ様にいい土産話を聞かせられそうだ!」


 少女は笑いながら、光を強めた拳を振り下ろし。



 



 閃光と共に、爆音が響き渡った。


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