第48話 焦燥(鎧狩)

 列から離れて、小脇の草影に身を潜めた。

 仲間たちが十分離れたのを確認して、皆と反対方向に走る。


 どうしてこんなことになったのだろう。 心細さに弓を握りしめる。

 どうもこうもない。外の人間を助けて、仲間を危険にさらし、冬を前に移動せざるを得なくなった。

 里に降ろして関わりを断つべきだった。


 それでも、背中のおびただしい傷跡を、見て見ぬふりなどできなかった。

 瞳に走る一瞬の怯えや、何かを隠すように浮かべる軽薄な笑顔が、無言で訴えを発しているのだ。


 息を切らして集落につくと、 誰もいないようすで、ウルヤはほっとした。やっぱり、シガミはうまく隠して帰ったんだ。

 

 腰がぬけ、地面にへたりこんでいると、小さな物音に気づいた。

 くぐもった声に、肉を叩くような鈍い音が何度も響く。

 

 苦しげなうめき声に、ウルヤはおそるおそる周囲を見渡した。そう遠くない広場に二人いる。男だ。片方が倒れている。

 

 ウルヤは男の顔を見て息を呑んだ。

 血に濡れたその顔は、昨日、笑顔で別れた青年のものだった。


 

 

 


 



 

 



 

  

 


 

 

 


 

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