第298話 俺が引き金を引いていた

「お主を選んで正解じゃった………まさか、まさかここまでとは思わなんだ!ゼクトのような生まれながらの強者でもなく、ダラス達のような種族的な強さでもない!これこそ、これこそ弱者故の強さッ!それが、師匠以外にも生まれたのじゃ!こんなにうれしいことがあるものか!」


「先ほどお前は俺と、その師匠が同じだといったな。それはどういうことだ?」


未だに興奮冷めやらぬまま、尻尾を振り回すドラニアに、俺は再びの追及を行う。こいつがまともになるまで待っていたのでは日が暮れるか、目的地に着く方が早いだろう。


「我が師匠は、貴様と同じく心が、魂が存在せんのじゃ。それも、貴様とは違い、完全にの」


…………その男は、必滅万死と、夢現廻廊の二つを持っているのだろうか。俺と全く同じスキルを、過程を歩んだとでもいうのか?


「お前の師匠は、アサシンだったのか?それも、必滅万死と、忍者のスキル全てをもった………」


「いや、師匠のジョブはたしか“叛逆者”と呼ばれるものじゃ。忍者のスキルもアサシンのスキルも使ったところを見たことはないの」


叛逆者…………分からない。そのジョブに、危険さゆえに冥王が根絶やしにしようとした忍者のスキルと、アサシンをカンストした際に得られる必滅万死、この二つを使って起こした現象と同じ効果を持つスキルがあるというのか?


「しかしまあ、師匠は武王なんぞより武術に長け、剣王よりも剣術を知り尽くし、そして我より龍に好かれた存在じゃ。その師匠と比べるのはさすがに酷かの」


分からないことが多すぎる。圧倒的に情報が少ない。

しかし、気に掛けなくてはならない相手だろうこともわかる。 

ドラニアの師匠と言っても、それはドラニアの師匠であり、俺の知り合いという訳でも、仲間というわけでもないしな。


「師匠は何でもできるし、なんでも知っておる。それこそ…………冥王がフォースガドム跡地を狙っておることも知っておった。これからそこで起こるであろう戦いのことも、儂は既に聞いておる。まあ、他の者には“言えぬ”ように“約束”してしまったがの」


「…………そうか。だが、どうしても分からないことがある。なぜ冥王は…………冥王派は今になって急に動き出したんだ」


これが一番の謎だった。ドラニアも相当な長寿と聞くが、そのドラニアと時を同じくしている冥王も、相当な長寿の種族なのだろう。 

だが、その長寿の種族がなぜ今になって、突然活発な動きを始めたのか、それが分からないのだ。


「その話をするには…………我の能力について話をしなくてはならんの…………」


ドラニアの能力……確かに今までは何かにつけて様々な技能や力を見せてきたドラニアだが、本人からその能力を聞いたことはないな。


「龍王のスキル、レベルマックス時に手に入るスキルを我等は“奥の手”あるいは“王のスキル”と呼んでおるが、龍王の奥の手は少々難儀な物での。“可能性の拡大”であり、そして我がもう一つ持つジョブ、龍帝の奥の手は…………“可能性の接続”じゃ。拡大は文字通り可能性を拡大する効果じゃ。可能性と言われるとわかりにくいが、能力の拡大と、師匠は呼んでおったよ。そして、接続は…………能力の接続。我ではない他者に、我の力を使わせることや加護を与えることもできる」


なんだそのふざけた力は………反則もいいところだな。だが、何故それだけの力を持ちながら冥王を倒さない……。

可能性を操作することが可能なら、冥王の死の可能性を操作することができるのではないか?


「貴様の考えている事はわかる。しかし、さすがに出力が足りぬのじゃよ。冥王を始めとした古い王相手に、そ奴らの可能性を直接操作することはほぼ不可能じゃ。じゃがの、我が可能性を、能力を大きく拡大させた“眞金千切り”は別じゃ。あの刀は元来師匠が我に授け、いつの日にか弟子に授ける様に言われていた物じゃ」


眞金千切り…………そう言うことか。


「眞金千切りの射程を広げた……いや、実質的に射程を取り払ったのか。俺がリンドブルムと戦い、それを壊してしまったから冥王の傷が甦り、武王が動き出し、リアスが殺された…………俺が引き金を引いていたんだな…………」


リアスの死の原因を作ったのは、間接的に俺だったのか。

もし俺がリンドブルム戦で、眞金千切りを壊さず勝つことができていれば、こうなることもなかったのだろうか。

リアスは…………今も生きていたのだろうか。


「それも、仕方の無い事じゃ。あの場で貴様が戦ったからこそ、我等は今も生きておる。あのまま貴様が逃げ出していれば、我等は生き残れてはおらぬよ」

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