第262話 派手に暴れるぜッ!

◇◇◇


気に喰わねえ。


足元にある石を蹴飛ばし、転がっていった先を睨みつける。

力を込めて蹴ったわけじゃないし、ちょっところころ転がった先でその石は動きを止めた。


「・・・・・さっさと立ち上がれよ」


はたから見りゃ石に「早く立て」とか言ってるやべえやつだなこれじゃ。

自分の考えにもため息がついつい出ちまうほどに、俺はあいつの態度が気に喰わねえみてえだ。


「ラディ!ラディ!」


少し進んだ先で、まだ6歳くらいのガキが俺を呼んできやがった。

俺のことを気やすく呼びやがるこのガキはリリアナ、ミリアナの妹で、今回の事件で人質に取られていたガキだ。

こいつが捕まってたせいで、ミリアナは戦いに参加しなけりゃいけなくなったし、それにあれだけの劣勢で逃げることもできなくなったんだ。


「んだよ」


「あー!ラディったらまたそんなたいどで!いけないんだよ!」


俺の足にしがみついて来て服を引っ張りやがるリリアナ。

ったく、ガキはめんどくせえんだよな。


「だぁ!うざってえ!引っ張んじゃねえよ!」


「きゃっきゃっ!ラディがおこったおこった!」


「怒ってねえ、ぶっ殺すぞ」


このガキは苦手なんだよな・・・・・。

何言っても楽しそうに笑いやがる。

落ち着いて冷静なミリアナとは正反対の性格のくせして、そう言うところは似てんだから手に負えねえぜ・・・・。


「ぶーっラディそんなこといっちゃだめよ!」


必死に背伸びして大人ぶった口調を意識してるみてえだが・・・・ままごとにしか見えねえよな・・・・・。


「いいか?俺ぁは忙しいんだ。ガキは穴でも掘って一人で遊んでやがれ」


「ぶーっぶーっ!ラディのいじわる!いんけん!どーてー!」


「ぶふっ!?て、てめえそんなこと誰に教わりやがった!?」


「もういいもん!ラディがいじめるってみんなにおしえてあげるんだから!」


唖然とする俺を置いてリリアナが復興作業中のオヤジ共が休憩してる方に向かって歩いてった。


「あのガキ舐め腐りやが————ッ!?」


リリアナを少し懲らしめてやろうと思った時だ。王都の正門方向からかなりの数の気配がいきなり現れやがった。

しかも・・・・どうやら最悪のパターンかもしれねえ。


「ちっ・・・せっかく街がまともになってきたってのによっ!!!」


槍を出し、正門に向けて走り始めると、直ぐに事態を察知したミリアナが追い付いてきた。

ったく、空飛ぶって反則だよな。


「腑抜けの面倒はもういいのかよ」


俺が風を纏って宙を滑るミリアナを冷かしてやると、ミリアナの表情がやべえことに気が付いた。

あれは、キレてる、間違いなくキレてる。


「殺すわ。撃退でも軍事的な意味合いの壊滅でもなく、私の裁量の元、私の恨みを持って、攻め込んできた愚か者どもを塵一つ残さず殺すわ」


目が・・・・・座ってやがる。


「せっかく!せっかく旦那様がデレてくださって甘々なっ・・・・もうこれから出したり入れたり上下だったり前後だったりに動き回る寸前だったのに!」


襲撃者、よくやった。

今回だけは俺はお前らの味方だ。


ミリアナが今にも特大魔法をぶっぱなしそうになってた時に丁度騎士王が合流してきやがった。

どうやらこいつも一人で走ってきたみたいで、仲間がだれも追い付けてねえ。


「何を騒いでいる」


「あ?ミリアナがあいつの看病をしてて邪魔されたってんでキレてんだ」


「あぁ、ハシモトか・・・・」


あぁ・・・そういやコイツまだあいつの名前知らねえんだっけか。

面白そうだからこのままにしとくか。

まあいい、こいつと、あの勇者は・・・・相当辛い役目を押し付けちまったしな。

アイツを奮い立たせるためにキツいこと言って突き放させちまったわけだしな。


特にあの勇者は・・・・あの後号泣だったからな・・・・。


「とにかく今は外の敵を抑える。すぐに騎士団の援軍が来るはずだ」


俺、ミリアナ、そして騎士王が正門にたどり着き、敵の様子を始めて目にした。

俺はもちろん、騎士王も驚きを隠せないようだったが、ミリアナだけは怪しい顔して笑ってやがったな。

大方相手が全部サンドバックにしか見えてねえんだろ。


「恐らく冥王派の仕業・・・だろうな」


騎士王の言葉にゆっくりと頷く。

まあ、そうだろう。そもそもこれだけの数の魔物と、人間が同じ戦場にいて襲い合わねえってのがおかしな話なんだ。


「どうするよ」


「この国に仇なすものであれば・・・・斬り伏せるだけだ」


「殲滅、滅殺、皆殺しよ」


どうやら俺と同じ考えみてえだな。


行くぞッ!って言葉を言いかけたところで、俺とミリアナは動きを止めた。

騎士王は知ってたのかそれとも気が付きもしてなかったのかわからねえが。

迫ってくる魔物と人間の混成部隊の横っ面に、勇者率いる15名ほどの人間が突っ込んでいったのが見えた。


「作戦変更よ、ランディ、あなたは好きに暴れなさい、私は支援をするわ・・・・・あなたは・・・・」


あのバカ勇者どもが突っ込んだせいでミリアナが特大魔法で殲滅するってのは出来なくなっちまったみてぇだ。


「私は一人で戦うさ、こう見えても“王”の1人だ。そう簡単にやられはしない・・・・行くぞっ!変身っ!!」


騎士服のベルト通すところが1つとばしになってること以外は、まあ大丈夫だろう。


一瞬で黒い甲冑に身を包んだ騎士王が単身で軍勢の正面にぶつかる。

一合で先頭にいた数匹のブラックウルフを仕留め、次に飛び掛かって来たジャイアントモスキートを盾で殴り殺してやがる。

やっぱ王ってのは化け物みてえな強さだな。

そう思うが、戦えねえわけじゃねえとも感じちまう。


ダリアとかいうリッチの時に比べりゃ俺も強くなってる。

それに俺だけじゃねえ、ミリアナだって・・・・・ミリアナ、強くなりすぎてんだよなぁ・・・・。


「遍く超常よ 尊大なる万雷よ 我理に願い奉る 地を裂き海を穿ち 我が覇道を指し示せ 【万雷の覇者トニトルス】」


詠唱が終わると同時にミリアナの周囲に落ちた特大の雷が、ミリアナの傍らに集約され、形を成していく。

形成された形は獣。

雷を纏う錆びた様な水色の甲殻と、金色に輝く刃のような角を持つその獣は四つ足を付き、ミリアナの横で巨大な咆哮を上げた。


あれが、“大賢者”ミリアナの召喚魔法。

上位の精霊を使役し戦う理外の技だ。


「さぁ、蹂躙を始めましょうか」


優雅にドレスを翻すミリアナがトニトルスに指示を飛ばす。

ミリアナは自分を包む結界をすぐに生成し、その中で瞑想を始める。

あれは周囲から魔素を強引に集めている時に見せる姿だ、アレをすれば・・・・実質魔力は無限になる。


「ガアァァァッ!!!」


トニトルスの口から放たれた光弾が、万に及ぶ軍勢の、勇者達がぶつかった右側とは逆の、左方に着弾し、大規模な破壊と共に周囲の敵を吹き飛ばした。


「ミリアナ!俺のいる方には打つんじゃねえぞ!」


「さっさと蹴散らしてきなさいな、私は今旦那様との先ほどのイチャイチャを思い出すので忙しいの」


瞑想してんじゃねえのかよ。

まあ魔素は吸収してるみてえだしどっちでもいいか。


「っしゃぁあ!!!派手に暴れるぜッ!!!」


魔槍を周囲に展開し、その内の一本をつかみ取る。

振るえば風が切れ、空間が収縮する。

俺も、強くなってんだ。

先頭にいる連中を薙ぎ払い、串刺しにしながらボスを探していると。


「騎士王!ランディ!今すぐ戻りなさい!!!」


戦闘が始まって数分しかたっていない状況で、ミリアナから声がかかる。

魔法によって拡散された声は瞬時に俺まで届き、おそらくそれは騎士王も同じだろう。

即座にその場を離れ、ミリアナの近くに行けば、焦った表情のミリアナが舌打ちをした。


「相性最悪ね」


それだけ言って俺と騎士王に何かの魔法をかけたミリアナ。

相変わらず説明は無しかよ。

慣れてねえ騎士王が困ってんじゃねえか。


「トニトルスが取られたわ、あなたたちも洗脳に気を付けなさい」


あの上位精霊の主導権を奪われたから、対策の魔法を掛けた、ってところだな。

ようやく騎士王も納得したのか、自身の手を開いたり閉じたりしてる。


「敵はどんな方法を使っているのかわからないけど、これで戦況は最悪、私は魔力を吸われ続けてるし、ランディの維持があるから動けない、だけど精霊を還すこともできない、実質あなたたち二人でこの軍勢を食い止めなくてはならなくなったわ」


その言葉は暗に、先に突っ込んだ勇者たちが既に洗脳の支配下にあると語っている。

これで俺達まで洗脳されてたら王都は間違いなく落ちてたな・・・・・。




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