第177話 お前たちを殺すなんて一言も言っていない

「ぎゃぁぁぁぁあっ!だ、誰かぁ!!誰かだすげてぇぇぇ!いたいっいたいっ!!ゆびがああぁ!!!」


そう言って女たちに手を伸ばすが、女たちは、今まで散々な仕打ちを受けていたのか、王に対して敵意を抜き出している。


「まぁ、そう喚くな、なに、質問に答えれば俺だってこんな酷いことはしない」


「ほ、ほんとう・・・だな・・・ほんとう・・・にひどい・・・ことをしない・・だな?」


「あぁ、約束しよう、俺は約束は守るタイプだ」


「お、女だ!変な姿の女に今回のことを提案された!それ以外は本当に何も知らないんだ!だからたのむ!助けてくれ!こ、こんなに血が出て・・・このままじゃ死んでしまうっ!」


そう言いながら泣きついてきたフォースガドム王に橘は仮面の様な笑顔で向き直り、そして、いつもよりも遥かに冷酷に言い放った。


「嘘だ、俺の生きる邪魔になる存在は殺す、お前は既に死ぬことが確定してる」


そう言ってフォースガドム王の首を跳ね飛ばした。

その光景を見ていたこの部屋にいた女たちは一瞬ぎょっとした表情をしたが、雇い主が死んだことで自分たちが自由になったことを理解したのか、直ぐに手を取り合って喜んでいる。


「お前ら・・・何を勘違いしてるんだ?お前らは俺の居場所に喧嘩を吹っかけたんだ、たった一人殺したくらいで俺の“怒り”が収まると思ってたのか?」


そう言ってフォースガドム王の血で濡れた刃を女たちに向けた橘。

その表情は憎しみの籠った瞳からは想像もできない程清々しい顔をしている。


小躍りしそうな勢いでその場で喜び合っていた女たちは、全員がその場に崩れ落ち、震えながら、失禁した姿のまま命乞いを始めた者さえいる。


「まぁ、別にお前らを殺すとは言っていないがな!」


そう言って錆姫をしまった橘に、全員が目を丸くし、きょとんとした顔を浮かべている。


「言ったはずだ、たった一人殺したくらいじゃ収まらない、と、お前たちを殺すなんて一言も言っていないし、それに“もう五人”殺してるからな」


渾身のジョークが決まったとでも言いたげな顔で微かにニヤケる橘に、その場の女たちはどうしていいのか全く理解できず、ただ橘に合わせ苦笑いを浮かべるだけだった。


(・・・冗談はなかなか楽しい気分にさせるな、これは新しい発見だ、今度南達にも披露しよう)


1人どうでもいいことを考えながら、感情を僅かに取り戻してしまったせいで残虐性が増した橘は倒れている女たちに声を掛けた。


「働く気があるなら向こうの世界に行け、そして事情を話してこい、こいつを持って行けば信じてくれるはずだ」


そう言って渡したのは使い道皆無だった手裏剣だ。

仲間の前で何度か使ったことはあるが、ナイフの方が使いやすく、針の方が仕込みがしやすいということで今では全く使わなくなった代物。

それを女たちに渡し、結界を解除した。


「さて、俺は少しこいつの部屋と宝物庫でも漁るとするか」


駆け足で出ていった女たちを見送ってから、橘もパーティールームを後にし、その足取りはこの城の宝物庫に向かっていった。

この部屋に来る途中にある程度金目のものがある場所にアタリを付けていたのだ。


宝物庫は巨大な扉で厳重に塞がれていたが、腐敗毒を使う橘には大した意味がなく、ほんの少し時間を稼いだだけで宝物庫は破られた。


数分後、中身の空になった宝物庫から出てきた橘は珍しくまんざらでもなさそうな顔をしていた。

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