白い花と赤い実の山査子

どうしてこんなところにって聞いたら、この辺りに住んでいる名付け親カラ・アス・クリーストが危篤で、つい先日亡くなったから、って言っていたわ。

まあ、ありえない話じゃないわよね。

だから、私も当然お悔やみを口にしたわ。これは、誰だってするでしょう?


彼は、ありがとう、と言って、それから、もしよかったら君も名付け親カラ・アス・クリーストに会っていってくれないか、と言うの。

彼は、あの人は賑やかなのが好きな人だったから、と言うけれど、普通なら断るわよね。

でも、きっと、あの時点で私は善き人々ディーネ・マハに魅入られていたのよ。

だから、断れなかったし、彼を疑うこともできなかったのね。

そのまま彼に導かれて、道を外れて、まだ赤い実がぽつぽつと残った山査子の茂みスキャッハの間を縫って、森の中に入ったのよ。


どう考えても疑うべきでしょう? 笑いたければ、笑うといいわ。

あるいは、今後の足しにでもしてね。

そうでなければ、今私が自分の若気の至りを話している意味がないでしょう?


森に足を踏み入れた私を待っていたのは、地面一面に咲き乱れたブルーベルだったわ。

ええ、そう、ブルーベルよ。

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