第56話 幕間 追う者、追われる者、裏切る者
長府達、勇者一向から逃げ続けていたボクはリーンガムに足を踏み入れていた。
この街に『別の異世界人』がいるはずだ。
ただ、それが結城さんなのかはわからない。
エシュト皇国に残っているのは、彼女か遠枝莉依ちゃんくらいなはずだけど。
とにかく、実際に見てみないとわからない。
ボクはアカシャの記憶書を取り出して『照合』した。
『北北東方向に存在。近隣』
近いらしい。
アカシャはかなり融通が利かない。
一度質問を『検索』すれば、何度も照合できる。
どんな分野の問いでも答えてくれる能力だ。
けれど回答はかなり曖昧だったりする。
しかも質問は具体的且つ不明瞭でなければいけない。
矛盾しているけれど実際そうなのだから仕方がない。
例えば、ボクは今、結城八重さんを探している。
けれど『結城八重の居場所』と検索しても、答えは帰って来ない。
『自分以外の、エシュト皇国にいる異世界人の居場所』という風に質問しなければならない。
この場合『自分以外』や『エシュト皇国にいる』という文言を除外した場合、回答はない。
具体性が必要な癖に、ピンポイントな質問には答えないのだ。
どうやら『答えが確実に一つである質問には答えない』らしい。
条件はそれだけじゃないのもかなり面倒だ。
イエス、ノーの二択しかない質問にも答えない。
何とも天の邪鬼で使い勝手の悪い能力だけど、答えは間違いない。
ともあれ、リーンガムに誰かがいるのはまず間違いない。
ボクはローブのフードを被って顔を隠しながら街中を歩いている。
本を持っているだけで多少目立ってしまうので、逐一立ち止まり人目のつかない場所に移動してから照合を続けていた。
やがてボクは一つの店に辿り着く。
「アーガイルの店?」
何とも安直な名前だ。
けれどそういうセンスは嫌いじゃない。
わかりづらく、妙に気取った名前よりは実直さが伝わる。
この中にいるみたいだ。
ボクは意を決して扉を開いて中に入る。
ドアベルが閑静な街路に鳴り響いた。
内部には用途がわからない商品が並んでいる。
何の店なんだろうか。
ボクは店内に足を踏み入れた。
誰も、いない?
「あの、誰かいるかな?」
返事はない。
「にゃ!」
あった。
返事というか動物の鳴き声みたいだった。
何かペットでも飼っているのかと思っていたら、店の奥から女性が出てきた。
中々グラマラスな見目をしている。
勇者のハーレム隊を思い出してちょっとイヤな気分になる。
別にボクが小柄で童顔で幼児体型で年齢相応に見えないって言われるからじゃない。
とにかく。
彼女は現地人だった。
「にゃにゃ、いらっしゃいませにゃ?」
「どうも」
人好きのする笑顔を浮かべる女性に、ボクはぺこりと頭を下げる。
異世界人がいるのはこの店なのは間違いない。
しかし彼女が知っているかどうかはわからない。
尋ねるのは危険だ。
けれど探っている時間もない。
勇者達はボクを捕まえようと間近に迫っているのだから。
幾ら何でも、オーガスで飼い殺しされたくはない。
とりあえず、会話をして窺ってみるか。
「あの、このお店って何を売っているんです?」
「にゃ? そうにゃー、わたしもよくわからないにゃ?」
「わからない?」
「にゃ。ぶっちゃけ、店主がでかけている間の店番しているだけだからにゃ」
語尾も変だけど、この人、個性的というか変わっているというか。
しかしこの店の主は不在らしい。
あんまり悠長にしている時間はないし、会話から探るのは非効率的だ。
賭けだけど、女性に聞いてみた方がいいか。
そう思い、口を開いた時、奥から誰か出てきた。
「お客さんかな?」
「にゃ、今接客していたにゃ!」
女性、いや男性、かな?
中性的な人がでてきた。
綺麗な顔立ち、華奢な体躯で、纏う空気は繊細に思えた。
その人物は現地人だった。
ボクは視線と意識を奪われた。
目が合う。
心臓を鷲掴みにされたような感覚に、息を飲む。
まるでスローモーションになった映像を見ているかのような。
ボクはその瞬間、何も考えていなかった。
半ば直感だった。
初めて見た人物だった。
見た目はそうだった。
しかしそうではないと理解した。
相手も同じように表情を変える。
それは間違いなく、
「辺見、朱夏」
「剣崎、円花」
互いに名を呼んだ。
僅かに勘違いの色を含んでいた疑念は確信に変わる。
まさか『またエシュト皇国に戻っている』とは思わなかった。
店内は狭く、踵を返すには奥に踏み入り過ぎた。
位置取りは最悪。
逃げようにも、二人の位置を見れば、間に合わないことは明白だった。
辺見の能力を鑑みれば、ボクに対抗手段はない。
まさか、こんなことになるなんて。
ボクは奥歯を噛みしめ、自分の失態を悔やむ。
しかし辺見は驚きから一転して、平静を取り戻していた。
「ニース、接客は僕がしておくから、奥で休んでていいよ」
「そうかにゃ? じゃあお言葉に甘えるにゃ」
サボれるのが嬉しいらしく、ニースと呼ばれた女性は嬉しそうに奥へ引っ込んで行った。
彼女は事情を知らないらしい。
しかし、なぜ現地人のような姿になっているんだろうか。
魔術がある世界だ。
変装するような魔術もあるかもしれない。
辺見は僅かに眉を傾けながら第一声を放った。
「君はオーガスにいるはずじゃなかったかな?」
「……それはこっちの台詞だね。
オーガス所属になってからしばらくして姿を消したって聞いたけど?
一体、ここで何をしているのかな?」
「剣崎さんには関係ないことさ」
「そうかい? じゃあ、こっちも話す必要はないね」
「……想像するに、戦闘能力がないと判断された君は、能力だけを利用されそうになった。
だからオーガスから逃げてきたってところかな?
力がものをいうオーガス勇国じゃ君みたいな存在は虐げられるからね」
ご名答。
だけどそれだけじゃない。
それだけなら、最終的には目的は達成されるから悪い条件じゃない。
問題は、長府の独善的な指針。それによるハーレムの一員への強制的な参加というもの。
他にもあるけど、わざわざ教える義理はない。
「君は、戦う力が大してなく、能力的に諜報が向いていると判断されたってところかな。
だからボク達にも君の動向は伝わっていなかったんじゃない?
エシュト皇国内部を探っていたのかい? それとも別の異世界人と接触を図ったとか?」
「……さあね」
「嘘が下手だね」
辺見の表情が物語っていた。
しかし、そんなことはボクにはどうでもいい。
問題は辺見がボクにとって味方ではないということだ。
見逃してはくれないだろう。
でもボクには戦う術はない。
懐に隠してあるナイフも、まともに扱えるかどうか……。
様々な手段が頭に浮かぶが、どれも成功確率は低そうだった。
見つかった時点で、何をしても道は塞がれている。
ここで逃げたとしても、すぐに捕まるだろう。
どうすれば……。
いつの間にか心臓は早鐘を打っている。
一か八か逃げるしかない。
そう結論が出た時、辺見が唇を動かした。
「行きなよ」
「……どういうつもり?」
「そのままの意味さ。見なかったことにしてあげるからさっさと行けってこと」
どんな腹づもりなのか、辺見は興味なさそうに半眼でボクを見ていた。
何か裏が?
けれど、こんな状況でボクを泳がせる意味はないはず。
オーガス所属の、神託の勇者となった辺見は、長府一行と同勢力だ。
ならばボクを捕まえない理由がない。
情報が伝わっていない、とは思えなかった。
すべてを知った上で、ボクを逃がすと決めているようだ。
疑問はあったけど、話し続ければ気が変わるかもしれない。
ボクは相手を刺激しないようにゆっくりと振り返った。
次の瞬間、店の扉が開く。
「みーつけた」
そこにいたのは、最も会いたくない人物だった。
「小倉凛奈……!」
最悪だ。
こいつに見つかれば、もう逃げ場はない。
「どうして、ここが」
「円花ちゃんは知らないかもだけどねぇ、わたし数日前に新しい能力覚えたのよねぇ。
透視できる便利な能力なのよぉ。おかげで捗っちゃったわぁ」
小倉の眼はオレンジに色彩を変えている。
まさか他の瞳術を覚えているとは、計算外だった。
「あら、その顔……まさか」
小倉は辺見を見ると、首を傾げた後、瞳の色を変える。
左は白、右は黒。
真贋の瞳術だ。
この目の前ではどんな嘘も吐けない。
例え、姿を変えても、本来の姿が露呈する。
「あらあら、朱夏ちゃんじゃない。こんなところにいたのねぇ」
軽妙な口調だったが目が笑っていない。
長府達と辺見は仲間のはずだ。
ところが二人の間には奇妙な空気感が漂っている。
辺見は剣呑な雰囲気の中、僅かにたじろいだ。
何か、あった?
三つ巴の状態で、ボクは小倉の隙を窺おうと必死で相手の挙動を凝視した。
そうしていると小倉の背後から三人が現れる。
「リン、円花はいたか?」
「ええ、ここにいるわよぉ」
長府を先頭に、江古田沙理とカタリナが姿を見せた。
袋の鼠だった。
逃げ場がない。
捕まれば、ボクはオーガスの牢に閉じ込められ、幽閉されるのは間違いない。
希望のためとはいえ、そんなの受け入れたくはない。
「よく逃げたとはいえ、ここまでだな、おい」
「悪党の言葉だね」
「へっ、別に自分が正義の味方だなんて思ったことはねぇよ。
おまえだって俺達を利用して、希望を叶えようとしていただろうが」
「一緒にしないで欲しいね。ボクは知らなかったんだ」
「そういや、おまえが神子の言葉を聞いたのは後だったか。
まあ、でもどうでもいいじゃねぇか。大したことじゃないだろ?」
「……外道」
「人間、誰しも最後には自分が可愛いものだろ?
綺麗事言って、結局おまえも罪の意識から逃げてるだけだ」
長府の高説中、他の連中は黙して聞いていた。
全面的に賛同しているとばかりに、首肯している。
異世界人の存在は世界を震撼させる。
その言葉通りになる、その瀬戸際だと言うのに。
いや、もう遅いのか。
ならば、せめて知らせなければ。
「ところで、そこの奴、誰だ?」
「朱夏ちゃんよぉ。姿は違うけれどねぇ」
「へぇ、変装してるのか。便利なもんだな。
親善大使なんて肩書がなくても他国に潜入できるじゃねぇか。
どうやってやるんだ? 道具か魔術か能力か。教えろよ朱夏」
長府は威圧的に辺見に近づく。
辺見は表情を険しくしながらもその場から動かなかった。
「黙秘するのか? あ? ってか、おまえさぁ、何してんだ?
エシュト皇国に残っていた異世界人、結城と遠枝とかいうガキはどうした?
なぁ? おまえの任務を忘れたのか?
裏でオーガスと繋がったまま、連中を利用するって内容だったよなぁ?
それが、途中で連絡が途絶えるんだもんなぁ。おい、どういうつもりだ?」
ただの馬鹿なのか、それともそれだけの余裕があるのか。
長府は内情を平然と口にする。
やはり、エシュト皇国に残ったのは他の異世界人を利用するつもりだったらしい。
仮にエシュト皇国所属になれば、内からかき乱すことも可能だ。
辺見はオーガスの勇者。
だからエシュト皇国に所属したと見せかけても、オーガスが勝利すれば第一条件は達成できる。
そう。
『各国に所属し、勇者として助力。勝利を収め、世界を統一する』という一つの条文の通りに。
神託は感受性の強い人間であれば聞くことができる。
しかしそれはただの零れ落ちた音だ。
実際、正しい神託は各国に一人いる神子にしか聞けない。
その神託を受け、各国の君主は指針を決め、そしてボク達勇者にも及んでいる。
そしてそれは国の一部の人間しか知らない。
まるで――神々の遊びに巻き込まれているようだとボクは思った。
長府の恫喝にも辺見は口を固く閉じたままだ。
「朱夏ぁ、一度所属したら神子を通さなければ所属は解除できねぇんだ。知っているよな?
いいのか? このままだとおまえの望みは絶たれたままだぜ?
おまえもだ円花。それとも利益もなしに、殺されるのを待つか?」
長府の言葉は正しい。
ボクも辺見もオーガスに所属したままでエシュト皇国にいる。
ボクはオーガスに助力するつもりはもうない。
けれどそれは、このレースから降りるということじゃない。
賞金なしで強制的に参加させられているということ。
デメリットしかない。
それでも、ボクは受け入れられなかった。
でも辺見はどうなんだろうか。
「わかったよ……一度僕も帰る。このままいても信用されないだろうし」
長府は満足そうに相好を崩した。
その所作は、恐喝しているヤンキーにしか見えない。
「だよなぁ。じゃあ、オーガスに帰ろうぜ」
長府はうんうん、と気持ちの悪い笑顔を浮かべながら頷く。
反吐が出る。
日本でもこういう風に生きていたのだろう。
居丈高で独善的な行動と考え方。
はっきり言って魅力の欠片もない奴なのに、なぜかモテる。
そう言えばヤンキーが好きな頭がお花畑な連中って一定数いたな。
ハーレム隊の面々もその類なんだろう。
小倉は、少し色が違う気がしたけど。
もう、どうでもいい。
ボクはこの場から逃げられないのだから。
「で、変装技術を持ってる奴、どこだ?」
長府はまだ忘れていなかったらしい。
頭は悪いのに狡猾な奴だ。
辺見ははぐらかそうとしてらしいが、誤魔化しがきかないと判断したらしい。
「奥にいる娘が使えるよ」
「連れてこい。リン、一緒に行け」
「はいはい」
有無を言わさぬ物言いに、辺見は小倉と共に奥に引っ込む。
すぐに先ほどの女性を連れだって戻ってきた。
「にゃ? お客さん一杯にゃ? ここは私の出番らしいにゃ!
当店のおススメはそこの時間式時計にゃ!
にゃんと、時間が経つとジリリと鳴るんだにゃ」
空気を読まない、いや読めない女性は一人で商品説明を始めた。
「こいつ馬鹿か?」
「……マイペースなんだ」
初めて長府の言葉に賛同した。
辺見はニースと呼んでいた女性に耳打ちする。
ニースさんはわかったにゃと言い、無言になった。
「カタリナ、そいつら拘束しろよ」
「お任せください、勇者様」
淫乱魔術師が杖を取り出し、呪文を唱えようとした。
「その前に、この建物から出て欲しい。商品を壊したりしたら店主に悪いから」
「ちっ、こんなクソみたいな商品誰も買わねぇだろ」
「それでも、頼むよ」
「……まあ、いいだろう」
辺見の頼みに大した意味はないと考えたようだ。
確かに辺見の能力は一人にしか効かないし、戦闘能力もない。
仮に戦う力を得ていたとしても、彼ら四人には敵わない。
つまり長府は辺見を見下している。
それをボクも理解しているから抵抗ができない。
ボクと辺見、ニースさんは長府達四人に挟まれて店を出た。
「それじゃ、拘束」
と、長府が言った瞬間、景色が黒く染まった。
違う、黒い粒子が虚空を舞ったのだ。
それが理解できた時、ボクの身体は宙に浮いていた。
「な!?」
そう叫んだのはボクだけじゃなかった。
混乱の最中、ボクとニースさんの身体は黒い手に握られていたのだ。
それは粒子が集まり形作られている。
そして両の手に介在して、右手に四角い漆黒の箱を持っている人間がいた。
辺見だ。
じゃあ、これは辺見が造り出したものなのか?
そんな能力は持っていなかったはずだ。
辺見の足元には黒い板が浮かんでいる。
その両端から手が伸び、後方からは箱に繋がる黒い線が出ている。
ボクが呆気にとられている中、辺見は長府達の間を縫って、逃走を図る。
「待ちなさい! きゃっ……!」
鋭い叫びと同時に小倉は弾かれて、倒れた。
辺見が逃げると同時に、小倉を操作しようとしたらしい。
しかし、小倉の自我が強く弾かれた、ということだろう。
その反動で小倉は転倒する。
的確な判断だ。
彼女は見たものに効果を与える。
金縛りの瞳術もあったはずだ。
それを見越してのことらしい。
この四ヶ月、オーガスから姿を消してから辺見はかなりの力をつけたようだ。
「逃がすな!」
長府は咄嗟に背中から身の丈に及ぶほどの剣を抜く。
そのまま前方に放ると、跳躍。
剣は地面に向けて、平行に浮かび上がり、長府の身体を受け止めた。
奴は剣に乗っている。
そのままスケボーのように、地面と宙を滑った。
『スカイソード』
そのままの名称だけど、空を舞う剣だ。
これは長府の能力ではない。
あれはオーガス勇王から与えられた単なる武器だ。
追手は長府だけ。
他の連中は長府のような移動手段がないのは助かった。
「ゆ、揺れるぅ!」
「おおお、は、速いにゃ!? ひゃっはー!」
黒い手がボクとニースさんを握っている。
震動が伝わり気持ち悪い。
だけど、なぜかニースさんは楽しそうだ。
「我慢して!」
辺見の真剣な表情を見ると、何も言えなくなる。
どういうつもりなのかわからない。
けれどどうやらボクを助けようとしているらしいことはわかった。
今は、頼るしかない。
街中を疾走する漆黒の板とスカイソード。
スカイソードは空を飛べるが、この黒い板は地面から僅かに浮いているだけらしい。
それでも速度は互角。
なんとか逃げ切れなくもない?
露店の商品を風で吹き飛ばした。
「ふ、ふざけんなっ!」
干している洗濯物や通行人の衣服を巻き上げ、ボク達は逃げ惑う。
「待てってんだよ、オラ!」
長府の言動は完全にただの輩だ。
住民達は驚き、道の端に避け続ける。
「な、なんだあれ!?」
「飛んでるぞ!? 人が乗ってる!」
「け、憲兵呼べ!」
「きゃ! 危ない!」
「街中かっ飛ばすんじゃねぇぞこら!」
怒号がそこかしこで生まれる。
だけど構ってなんていられない。
辺見は表情を硬くしたまま、必死で長府から逃れようとしていた。
「あ!」
そんな中、辺見は突如として声を上げて、急ブレーキをかける。
「おいおい! いきなり止まるな!」
長府は減速が間に合わず行き過ぎてしまう。
間抜けな行動に、少しだけ胸がスッとする。
「ヘ、ヘンリーさん?」
知り合いなのか、髪の長い陰鬱そうな男性が素っ頓狂な声を上げた。
「トーラに連絡して!」
「へ? あ、ええ」
一方的に言い放つと、辺見は路地裏に入る。
黒い手によって高く掲げられたボクとニースさん。
すごく怖い。
「このまま外に逃げる!」
「わ、わかった」
「待てって言ってんだろコラ! 止まれや!」
後方から長府が執拗に迫る。
止まれだの止まるなだの忙しい奴。
ボク達は道を抜け、屋根を飛び、時として壁を走って街中を駆けた。
そしてやがて、街の外に出る。
一体どこへ向かうつもりなのか。
問いかける気にはなぜかならなかった。
ボクの頭にはトーラという人物の名前が強く残っていた。
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