マミ⑤

月初のミーティングが始まった。


月に2回、月初めと月の中間にミーティングがある。


ホストが店舗ごとに集まり、社長も来て、連絡事項などを伝達する。


店長からの話が終わり、社長の番になる。


「皆はもう知ってると思うけど、今月は新人王の月です!該当の新人だけじゃなく、周りの人間も盛り上げるために頑張るように!」


一同「はい!」


今月から始まった。


新人同士の1ヶ月の売上をかけたバトル。


新人王。


「なんのために仕事をするのか?」


この問いには様々な回答があると思う。


おそらく「お金のため」といった回答がほとんどだと思う。


だが、ホストにおいては意外とその回答は見られない。


もちろん金は欲しい。


むしろ好きな奴はホストでは多い。


しかし、月に300万円も必要な人間などそうはいない。


売れてるホストのほとんどは名誉や見栄、それか承認欲求を満たすために仕事をしている。


ただの女好きもいるが。


俺にとっての新人王はまさにそれだった。


金がどうとか売上がどうとかもはやどうでもよくなっていた。


「新人王になりたい。」


その一心だった。


カナデにだいぶ吹き込まれ、マミも覚悟はしていたようだった。


新人王の初日に店に来た。


「今月新人王だね。ゲンキ頑張ろう」


「おう!」


2万円の安いシャンパンではあるが、シャンパンをおろしてくれた。


俺はシャンパンコールのマイクで言った。


「俺が新人王なります!」


俺の声が店中に響いた。


俺の店舗に新人王該当者は俺含め5人いた。


同期や、入ったばっかりのやつもいる。


俺のライバルはそこではなかった。


系列店も合わせたら新人は30人ほどいる。


その全員がライバルだった。


マイクで言ったのはそいつらを煽るためじゃない。


自分に言い聞かせるためだった。


自分を鼓舞させるためだった。


ホストはよく女を騙す仕事なんて言うやつがいる。


間違っているとは思えない。


ホストが1番最初に騙すのは女じゃない。


上司でも内勤でもない。


自分自身だった。


自分をうまく騙せないとホストなんかやっていけない。


もちろん、マミが主軸ではあるがマミ一本に頼ってる場合でもない。


初回の席をめちゃくちゃ頑張った。


まったく指名をもらえなかった。


やはり自分で呼ばないと選ばれない。


俺は簡単に指名をもらえる程、優秀なホストではなかった。


しかし、1ヶ月しかない。


落ち込んでる暇はなかった。


出会い系のアプリをやりまくった。


マミのようにすぐに結果は出なかった。


キャッチも毎日出た。


前までは同期の誰かとキャッチをしていたが、今は1人で出ていた。


同期に負けてる場合じゃない。


ホストを始めてから女の勘には毎度驚かされる。


サボっててもわかるし、頑張ってるのもお見通し。


日ごとにマミの出勤日数も増えていった。


シャンパンの本数も増え、単価も上がっていった。













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