売れないホスト物語

切り替え

ミユが店に来なくなった。

働く意欲がだいぶなくなっていた。

キャッチするのもめんどくさくなった。

周りからは切り替えろ、とは言われるしその方が良いのはわかってる。

ミユはまだ客として機能出来た。

にも関わらず、しょうもない1つのミスで失ってしまった。

ホストが急に楽しくなくなってた。

もう辞めよかなとも思った。

売上が上がるわけでもなく、なんとなく過ごす日々が過ぎた。

そんなある日、カナデに呼ばれた。

カナデのことだ、やる気ない俺のことを見ぬいたのだろう。

怒られると思い、覚悟してカナデのもとに向かった。

だが、カナデの発言は違った。

「ゲンキ、コール覚えようか。」

人間切り替えるには新しいことを始めるのがいい。

シャンパンコールを覚えて切り替えろってことなんだろう。

俺の店ではシャンパンコールを自分らで作り、自分らで練習する。

ノルマやボーナスみたいなのは一切ないが、出来た方がいい。

大阪の系列店が集まるシャンパンコールの発表会が近かった。

それに出て優勝すれば賞金もある。

次の日、マキオからも呼び出された。

「スカウトもしてみたら？」

新たにホストを1人入店させると、5万円貰える。

それ以外に毎月、スカウト王というのがある。

ポイント制になっていて、大阪のエリアで一番スカウトした人間はポイントに応じて賞金が貰える。

スカウトでもらえる金はカナデからしたら大した金額ではない。

しかし、まったく売上のない俺からしたら喉から手が出る程欲しかった。

次の休みの日に店で集まった。

月に1回、休みの日に集まってシャンパンコール練習、スカウトなどをする日がある。

シャンパンコールを出来る人はわざわざ練習しなくてもいいのでスカウトをする。

または、新しいシャンパンコールを作る。

俺のようにシャンパンコールが出来ない奴は、集まって皆で練習する。

発表会に出てシャンパンコールをやりたいと名乗り出た。

新しいシャンパンコールを作ることになった。

なにかが変わるかもしれない。

いや、なにかを変えたかった。

シャンパンコールの作成を始めた。

シャンパンコールは簡単に言うと

①入り

②シャンパン開栓

③回し飲み

④締め

の４つの構成から成り立ってる。

基本的には数曲使い、それを繋ぎ合わせ編曲し、1つの曲にする。

とりあえず使えそうな曲をYouTubeで探し始めた。

音楽に詳しくない俺は、周りのホストに意見を求めつつ、曲を厳選していった。

他のホストは集中が続かず、グダグダしていた。

何かを変えたかった俺は、必死にやった。

周りは飽きていたが、俺は一人で勝手に作った。

ある程度完成させ、後で他の人にも聞いて細かいとこを詰めた。

そして無事、完成させることが出来た。