虐殺チェーンソー・ダイアリー

木曜日27 つぶやきとわるぐち

　兎にも角にも他人の悪口とは楽しいもので、今日は一日、会ったことも話したこともないテレビで見ただけの大っ嫌いな手品師の悪口をツイッターでいっぱい呟いた。自分に全然関わりのない人の悪口ってめちゃくちゃ楽しい。心が高まってくる。副腎からアドレナリンがドバドバ出てきて脳みそに流れて溢れて満たされて、全身から針が飛び出すような感じで、とっても気持ちよくて、わーい、みんな死んじゃえアッハッハ。みたいな気分になる。そんな感じで今日は四六時中スマホのツイッターアプリと睨めっこしていた。

　クソみたいな1日だ。

　わたしはいったい何をしてるんだろう。

　年明けの始めに客先で手品の新ネタをやるから、必死に練習しなくちゃいけないのに、全然練習が捗らない。もういいや。めんどくさい。いつもやってるやつでいいや。ちくしょう。この新ネタの手品道具、メルカリで15万円もしたのに。と、思いながら。それもこれも全部ツイッターのせいだ。こんなものがなければ手品の練習も捗ってめちゃくちゃ上手くなって、テレビかなんかで引く手数多の超有名マジシャンになれていたかもしれないのに！

　本当はスマホやパソコンも捨ててガラケーだけにして完全にネット断ちしたいのにどうしてもできない。ツイッターやゲームアプリも一度アンインストールするのだけれど、10分後には再ダウンロードしてしまうのだ。自分の脳みそがスマホとかネットに支配されているような気がしてイライラする。

　それにしても他人の悪口ってどうしてこんなに楽しいんだろう。今、わたしはどんな顔をしながらツイッターに文字を打ち込んでいるのだろう。心臓が脈打っている。ドキドキしている。楽しい。ワクワクする。他人を蔑むのが楽しい。

　自分が他人に悪口を言われたり蔑まれたら、顔を覆い隠して消えてしまいたくなるほど圧縮されて死にそうになるのに、他人の悪口をいう時の自分は、なんだかとっても偉くなったような感じがして、自信に満ち溢れた巨人みたいな万能感に満たされて、相手を踏み躙ることになんの罪悪も感じないのだ。

　どうしてだ！ このやろう！ おまえはいつもそれで失敗しているはずなのに！ おまえはそれで痛い目を見るのに！ いつだってそうだったじゃないか！ 高校2年のあの頃の過ちも！ みんなそれが原因だったじゃないか！

　なーんてね。と、そうやって反省したフリをすると、自分を許した気になれて、清く正しい人間に生まれ変われた感じになれて、とても気持ちがいいのだ。

　今日はとっても素敵な一日だった。