附――アルイハ、◾️ノ戯言――

注釈:参

 驚いた。


 本当に驚いた。


 まさか、支配者を浄化するものが現れようなどとは。


 過去にもたしかに、支配者と対峙して次へと進んだ者もいる。彼らはさらなる暴力を、さらなる力を。現実で口で罵るように、拳を振り上げるようにして圧倒していた。


 だが、あのようにして。自分の、自分自身の羈絆を絆す人間がいようとは。


 それは強さなのだ。


 逆を言えば、あまりにも脆弱だからこそそうなるとも言える。


 次は、その強さが仇となる世界となる。


 小生は願いたい。彼女が読み解き、小生を開放してくれることを。




・羈絆の世界

 羈絆とはすなわち、「行動する人の足手まといになるもの」や「束縛になるもの」を言う。この世界では、人生においての羈絆である支配者が徘徊する逃げること敵わぬ迷宮と化す。

 涼子の場合は、彼女の言う商店街が地続きの輪となって現れたのだろう。

 小生は正直に言うと肝が冷えた。これではもう逃げることも敵わぬではないかと。他の、片手で数えるほどの主人公が作り出した羈絆の世界は迷宮だった。そこをミノタウロスの伝説のように支配者が徘徊し、執拗に追い回されるというものだった。

 壁があったり、今の時代で言うならばギミックがあるのであれば力を伴う制圧はできたのかもしれない。時にはそれは塹壕であり、朽ち果てた高射砲を向けた主人公もいた。

 故に、どうすればいいか解らなかった。小生らしくなく我を忘れて泣き言をあげてしまった。そのくらいに、小生は焦っていた。

 だが、その時――まさか、涼子に励まされるとは。

 フフ。ますます気に入ったぞ涼子。フフフ。



・支配者

 一口に支配者と言っても様々な形態を取っているが、この羈絆の世界は間違いなく支配者に起因する世界として構築されている。

 涼子の場合は母親だったのだろう。醜くただれた、しかし周りを睨みつけるようにして彷徨う化物。だがそれは涼子の認識そのものだったのだ。

 連中は間違いなく、主人公を捕食する行動を取る。それが慈愛から来るものなのか。もしくは支配欲から来るものなのかは定かではない。

 その時の、飲まれた主人公たちの苦悶の声は忘れることはできない。涼子が飲まれてしまったならば、小生は今度こそ狂ってしまったかもしれない。そうなればこの冒険の書はさらに歪み、救いの手を求めるはずだ。

 救いを求める。

 言葉ではおとなしく見えるかもしれないが。その実は、多分周囲の全てを飲み込むという意味だ。そうすれば、あちらの世界に多大な被害が出ることは間違いない。

 涼子よ、生き延びてくれてありがとう。





 物語は佳境を迎える。


 涼子の人生で言えば、次が最終章となるのだろう。


 ここからは、子供が大人になるための――言わば、審判の世界となるだろう。


 極彩色の思い出と。


 ヘドロのように暗い思い出と。


 彼女の強さが跳ね返って、矢のように降り注ぐ。


 自分の強さが、まさに弱さだと知った時。


 人は、まともでいられるのだろうか?

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